「双六型」から「ビンゴ型」へのコミュニケーション設計

3月に刊行の『顧客起点のマーケティングDX データでつくるブランドと生活者のユニークな関係』の著者の一人である横山隆治氏はPOE(Paid,Owned,Earned)の概念を初めて日本に紹介したことで知られています。消費者の情報収集行動が変化するなかで、同氏が考える新たなコミュニケーション設計の方法論を提示します。

認知がゼロではないブランドでも「カスタマージャーニー」は有効なのか?

カスタマージャーニーなる概念については、私は少なからず疑問というか現実感に乏しいと以前から思っている。新製品であれば認知から始めて、購買意志決定に至るまでのステップを描いてみるのはアリだと思う。しかし、そのほか多くの既に市場にある商品となると、希薄であっても、店頭やメディアで何らかのブランド情報には接触していることになるし、その受け止め方は個々の消費者ごとに違うはずだ。

そう考えると、「みんなとにかく一度振り出しに戻して再スタートし、全員同じステップを踏むコミュニケーションの設計」というカスタマージャーニーの概念がどうもしっくり来ないのだ。

そこで本稿では、「振り出しから順を追ってコミュニケーションを設計すること」が適切なのかを考えてみたいと思う。

そもそもフローを描いて順を追ったコミュニケーションプランをつくっても、消費者に順番にコミュニケーションすることは無理である。当たり前だが・・・。

しかるに「順列」でもってコミュニケーションを成立させようとするより「組み合わせ」で発想した方がいいのではないだろうか。市場にはブランドに対する認識や印象をどのように持っている人がいるかを分析して、それを何タイプかに分け、それぞれにどんなコミュニケーションが足りていないかを設定していく方法だ。

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