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書体で印象付ける企業のブランド LINEオリジナルのフォントを共同開発ーーフォントワークス「LINE Seed JP」

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定額制フォントサービス「LETS」などでも知られるフォントワークスは2023年、創業30周年を迎える。
継続的に新書体を発表してきたほか、2022年にはLINE のコーポレートフォントの日本語版を新たに共同開発し発表するなど、コーポレートフォントの制作も増えている。

(左から)フォントワークス 書体デザインディレクター 藤田重信さん、書体デザイナー 森田隼矢さん。

グローバルな取り組みの一環で制作

フォントワークスとLINE、韓国のフォントメーカー Fontrix は2022年、LINE の日本語コーポレートフォント「LINE Seed JP」を共同開発した。LINE は2020年に欧文のコーポレートフォント「LINE Seed Sans」を公開しているが、今回は平仮名・カタカナ・漢字を新たにデザインし、欧文を含め9354字を収録。ウエイト(太さ)はThin・Regular・Bold・Extra
Boldの4段階を用意した。制作は、LINE社内のクリエイティブ組織「LINE CREATIVE CENTER」から依頼を受け、2021年2月にスタート。2022年10月の発表まで、1年半の期間で全ての文字が制作されている。

「LINE Seed JP」の制作風景。

「LINE Seed JP」の制作風景。

フォントワークスでは書体デザインディレクターの藤田重信さんと書体デザイナーの森田隼矢さんを中心に、14人のチームを編成。藤田さんは写植の時代から50年近く書体デザインに携わってきたが、今回のようにコーポレートフォントとして平仮名・カタカナ・漢字をゼロからデザインするのは珍しいとのこと。従来は仮名書体のみを制作し、漢字は既存の書体を組み合わせるというケースが多かったためだ。

「グローバル企業の一貫したブランディングとして、各国同じトーンでメッセージを伝えるためにオリジナル書体が必要でした」と説明するのは、LINE CREATIVE CENTER
BXデザイン室の柳沼航太さん。既存の欧文フォントとの最適なバランスについて両社で検討していった。

「単に欧文フォントと新しい日本語フォントを並べるだけでは、美しい組み合わせになりません。サイズ比や濃度といった各項目で適したバランスを検討し、膨大なサンプルを制作し調整しました」と藤田さん。
LINEの横田周平さんも「何度も議論を交わし、最終的にLINEらしさを判断基準にデザインの方針を決めていきました」と説明する。

文字のデザインにあたり、フォントワークスのチームでは「ゼロからデザインする人」「デザインをチェックし調整をかける人」と役割を分け、一文字ずつ仕上げていった。LINE側も「6人のメンバーで、文字ディレクションから一文字一文字の確認に至るまで担当しました」と語るのは、LINEの黄聖媛(ファン・ソンウォン)さん。

(左から)LINE CREATIVE CENTER BXデザイン室 黄聖媛(ファン・ソンウォン)さん、柳沼航太さん、横田周平さん。

独自の書体でブランド価値向上へ

特にこだわったのは、「角の丸み」「『ふところ』の調整とモダンさ」「文字同士の整合性」の3点。LINEの欧文書体の最大の特徴である角の丸み(カドマル)は、角ゴシック体よりもカジュアルで柔らかく、親しみやすさが伝わるようにした。

「ふところ」とは、画と画が構成している内側の空間のこと。たとえば「田」の内側にある4つの空間が「ふところ」にあたる。今回は「ふところ」を広くとったデザインに仕上げた。「明るいモダン系のゴシック体で、仮名は曲線を多く取り入れて丸めに。子どもっぽくならないように、穏やかで落ち着いた表現を目指しました」(フォントワークス 森田さん)。

LINE Seed JP

「LINE Seed JP」。Thin / Regular / Bold / Extra Boldの4段階のウエイト(太さ)を開発。コーナーの丸みは、基となるLINE Seed Sans(欧文)と共通だ。仮名は可読性を損なわない範囲で、できる限りシンプルな形に。ミニマルでありながら穏やかな表情が出るバランスを探った。

 

一方、既存の欧文書体の統一されたルールを文字のバリエーションが多い日本語書体で適用するハードルの高さもあった。日本語は漢字と仮名など、密度が大きく異なる文字を同時に扱うためだ。今回は読むときの心地よさや日本語書体ならではの不揃いな美しさと、形の整合性を繰り返し検証した。

従来の書体デザインはウエイトの違いによってパーツを離す・付けるといった変化をさせるのが一般的だが、LINE側から「全ての文字でできるだけ統一したい」という要望があった。「書体のプロからすれば無茶なお願いだったかもしれませんが、柔軟に対応をいただきました」と、LINEの柳沼さん。

2022年10月の発表後は、LINE社内の制作物などで活用するほか、フォントファイルを無料で一般に公開。ライセンスポリシーに基づいた上で、誰でも使用可能とした。店舗や施設で掲出できるポスター(PDF)も無料配布するほか、LINE本社オフィスの装飾やオリジナルのノベルティを制作するなど、活用の場を広げている。

「日本語書体全てをデザインするという経験は大きく、技術のあるチームだからこそ可能なことだったと思います。独自の書体は、企業のブランドにとって非常に価値があるもの。将来的には導入する企業が増えるはずなので、ぜひ相談していただきたいですね。コーポレートフォントはもちろん、常に時代に適した鮮度と驚きのある新書体を送り出すフォントメーカーでありたいです」(藤田さん)。

フォントワークスのその他の制作例。テレビ朝日のオリジナルフォント「テレ朝UD」。クックパッドのオリジナルフォント「Cookpad Sans」。

藤田さんが手がけた「筑紫AMゴシック」、今夏リリース予定のフォントワークス初欧文書体「RanseiIchi」(仮)。


フォントワークス株式会社


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