「宣伝会議のこの本、どんな本」では、当社が刊行した書籍の内容と性格を感じていただけるよう、「はじめに」や識者による本の解説を掲載しています。今回は、10月31日に発売した『オフライン広告革命 GAFAのいない世界から広告を変えていく』 (土井健著)の「序章」の一部をご紹介します。
「モビリティ広告」が都心の風景を変えた
印象を「強く残す」ことに力を発揮する媒体
渋谷スクランブル交差点の周辺では、1回の信号で1000人以上の人が信号待ちをしています。その人びとの目の前を通り過ぎる大型トラックを使った広告は「アドトラック」と呼ばれる広告媒体です。都市部では、以前から見かけるもので、車体の側面全体を用いた巨大ポスターと何度も繰り返されるフレーズによって、信号待ちのわずかな時間でも強く印象に残ります。その認知効果は老若男女を問わず絶大で、子どもがすぐに覚えて口ずさむほどです。これまでは「ナイトワーク系求人」などのイメージがつきまとい、注目のITベンチャー、誰もが知る大手企業、世界的に有名なIPなどに広告出稿先として選ばれることはほとんどありませんでした。
この「アドトラック」に、2024年を境にした大きな変化が起きています。「アドトラック」には、広告媒体として運用面にグレーな部分がありました。東京都屋外広告物条例による広告表示への規制は、以前から「アドトラック」も対象にされていましたが、都外ナンバーの車両は対象外だったのです。都心で見かける「アドトラック」の多くは規制を受けない都外ナンバーのものが運用されてきました。東京都は、規制を免れていたために「派手な色遣いや過度な発光を伴う車両が多数走行し、都市景観の悪化や交通環境への影響を及ぼしている」(東京都都市整備局)とし、2024年6月から都外ナンバーのトラックにも同条例の規制を適用しました。これにより、今までの広告内容では運用が難しくなる車両が増えたのです。