NHK大河『べらぼう』 の主人公・蔦屋重三郎が編集長に? AI活用で制作した千代田区の観光ガイドブック

千代田区観光協会では2025年、江戸時代のメディア王・蔦屋重三郎をAIとして現代に蘇らせ、観光ガイドブックの編集長に起用した。単なる効率化ツールではなく、「人格」と「肩書き」を持ったチームメンバーとしてAIを迎え入れたプロジェクトの全貌とは。

現代のカルチャーと共鳴する蔦重

2025年放送のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の主人公である、江戸時代のメディア王、“蔦重”こと蔦屋重三郎。彼をAIによって現代に蘇らせ、編集長として起用したのが、『千代田細見(ちよださいけん)』と題した観光ガイドブックだ。

『千代田細見』キービジュアル。

『千代田細見』キービジュアル。

本プロジェクトは、『べらぼう』を自治体の観光プロモーションへ活用するNHKの公募に千代田区が参加し始まった。企画制作は当時NEWPEACEに所属していたプランナー兼クリエイティブディレクターの田中佳佑さん(現在は独立)が手がけ、技術開発にはKonelが携わり、エンジニアの岡田太一さんが実装を担当した。

千代田区には、世界有数の本の街である神保町や、ポップカルチャーの発信地として知られる秋葉原が存在する。これらの街は、かつて蔦屋重三郎が江戸で育み、流通させた出版・娯楽文化を受け継いでいる。一方で、千代田区は蔦屋重三郎と直接的なゆかりを持たず、聖地巡礼などを促す施策は実現が難しい。そこで、“過去を生きた蔦屋重三郎が現代の千代田区を訪れる”という、逆転の発想でガイドブック制作を企画した。

本プロジェクトではAI蔦屋重三郎を「編集長」に据え、彼が企画の意思決定を行い、記事を作成する『千代田細見』が創刊された。

ガイドブックは全3号で構成され、第1号で「神保町」(2025年5月発行)、第2号で「秋葉原」(同年8月)を特集。最終となる第3号(同年12月)では「未来」をテーマに据えた。

『千代田細見』第1号~3号。表紙は現代的なモチーフを浮世絵風に。

『千代田細見』第1号~3号。表紙は現代的なモチーフを浮世絵風に。

『千代田細見』第1号~3号。表紙は現代的なモチーフを浮世絵風に。

『千代田細見』第1号~3号。表紙は現代的なモチーフを浮世絵風に。

「大河ドラマが終了するとコンテンツの鮮度は落ちてしまう。しかし、過去から現代に来た蔦屋重三郎が、さらに時空を超えて『未来』を見据える構成にすることで、ドラマ終了後も賞味期限が続くような、これからの千代田区に期待を込めたものにしたいと考えました」(田中さん)。

『千代田細見』は各5000部ずつ配布された。

『千代田細見』は各5000部ずつ配布された。

40本のレポートから人格をつくる

AI蔦重の人格形成にあたっては、『べらぼう』の時代考証を担当する歴史作家・山村竜也さんが監修に入った。学習データを用意するにも蔦屋重三郎本人が執筆した文章はあまり残っておらず、彼自身の「言葉」を直接学習させることはできない。そこで採用されたのが、周辺人物との「関係性」やリサーチによる「解釈」を徹底的に読み込ませる手法だ。

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