なぜ今、ブランドは音声を選ぶのか。大正製薬の実践に学ぶ新しい広告体験

radiko(ラジコ)が主催する「radiko Biz Conference」が2月17日に開催され、大正製薬のマーケティング本部長の宍戸正臣氏と、radiko代表取締役社長の池田卓生氏による特別対談が行われた。大正製薬がロングセラーブランド「リポビタンD」で実践したradikoの広告施策を題材に、音声メディアの新たな可能性と、データドリブンな広告体験の未来が語られた。
写真 人物 左からradikoの池田社長と大正製薬のマーケティング本部長の宍戸氏

左からradikoの池田社長と大正製薬のマーケティング本部長の宍戸氏

ロングセラーブランドの課題と、マーケティングファネルの「逆転」

創業110年以上の歴史を持つ大正製薬は、「リポビタンD」や「パブロン」「新ビオフェルミンS」といった数々のロングセラーブランドを擁する。宍戸氏は、特に60年以上の歴史を持つ「リポビタンD」が抱える課題について、多くのロングセラーブランドに共通するものだと指摘する。

その課題とは、LTV(顧客生涯価値)の観点から「若年層をいかに取り込むか」、そして購買行動に結びつけるための「飲用シーンや利用を想起させるシチュエーションをいかに創出させるか」の2点である。これらの課題を解決するため、同社はここ5年でマーケティング戦略を大きく転換したという。

従来は、地上波のテレビCMで広く認知を獲得し、そこから興味関心、購買へとつなげるファネルを想定していた。しかし、現在はそのファネルを逆転させるアプローチを推進している。宍戸氏は「購入した顧客の解像度を上げて、それを基にターゲティング活動を行うことによって、購買まで結びつく本質的なターゲティングマーケティングに取り組んでいます」と、その意図を説明した。

写真 「radiko Biz Conference」の様子

音声メディアとは「地上波テレビとデジタルのいいとこ取り」

様々なメディアを活用する中で、大正製薬は音声メディアをどのように位置づけているのか。宍戸氏は「地上波テレビと、デジタルマーケティングのいいとこ取りができるメディアだと感じています」と話す。

その理由の一つが、広告が「ノイズ」にならない点だ。通勤や家事といった「隙間時間」「ながら時間」に聴取されるラジオは、生活に溶け込んでいるため、広告がユーザー体験を阻害しにくい。宍戸氏は「ノイズと見なされた瞬間、ブランドダメージは起きる。それをさせないメディア」として、音声メディアの価値を強調した。

もう一つの理由は、番組とリスナーのエンゲージメントの深さにある。番組とリスナーの関係性の中にブランドが自然に入り込むことで、「この番組を応援してくれるリポビタンDを買おう」という好意的な態度が生まれやすい。これは、一方的な情報発信になりがちな他のメディアにはない大きな特徴である。

データが示す音声広告の受容性

宍戸氏の見解を裏付けるように、池田氏はradikoが実施したアンケート調査のデータを提示した。データによれば、「仕事・勉強中」「移動中」「家事中」といったディスプレイを見ることができないシーンにおいて、ラジオ・radikoの聴取シェアが高く、生活に密着したメディアであることが示されている。

さらに、広告に対するストレスに関しても、ラジオ・radikoの音声広告はSNSや動画配信メディアの広告と比較してストレス値が最も低く、非ストレスの値が最も高いという結果が出ている。特に、週に1回以上ラジオに接しているユーザーは非ストレスの値がさらに高くなる傾向があり、番組とCMが一体化した聴取体験が広告への受容性を高めていることがうかがえる。

写真 「radiko Biz Conference」の様子

このデータを受け、宍戸氏は「生活の中に入っているメディアであることが、ストレスをぐっと押し下げることにつながる」と同意し、さらに「番組とリスナーの距離が近い、エンゲージメントが強い中で入り込めるのは、広告主にとっては本当に価値がある」と、ラジオならではの視聴態度の良さを評価した。

精緻な位置情報ターゲティングで134%が利用意向UP

今回、大正製薬とradikoは、ドライバーをターゲットとした広告施策を共同で実施した。この取り組みでは、radikoが持つ正確な位置情報データを活用し、「高速道路のサービスエリアに行動履歴があるユーザー」をセグメント。運転シーンを想定して制作された「リポビタンD」の音声広告を配信した。

写真 「radiko Biz Conference」の様子

池田氏によると、特定の行動履歴を持つユーザーに、その状況に合わせたクリエイティブを配信することで、広告の「自分ごと化」を促進することを狙った。施策後のブランドリフト調査では、広告接触者は非接触者と比較して、商品への興味関心が132.5%、利用意向が134.6%と、それぞれ大幅に上回った。

この結果について宍戸氏は、radikoの位置情報を活用したジオグラフィックターゲティングの有効性を高く評価。デモグラフィック属性、サイコグラフィック属性と掛け合わせてクラスタリングした今回のプロモーションについて、「ターゲットに合うクリエイティブをきちんと届けることができれば、このように結果が出るというのは大きな成果」と述べた。

20代以下で433%も購買率UPの衝撃の結果に

さらに今回の施策では、広告接触データと購買データ(全国1億超のPonta会員データ)を連携させ、購買行動への影響を分析した。その結果、広告接触者の購買率は非接触者と比較して140%と大きく上回り、音声広告が実際の購買につながったことが示された。

特に注目すべきは、年代別の広告接触による購買効果の影響である。他の年代でも購入率の向上が見られたが、20代以下の向上率は433%と突出して高い数値を記録した。この結果は、大正製薬が長年の課題としてきた「若年層の取り込み」に対して、音声広告が極めて有効なアプローチであることを示唆している。

写真 「radiko Biz Conference」の様子

宍戸氏は、「リポビタンDの課題に挙げていた、若年層を取り込んでLTVを伸ばしていくことと、飲むべきシーン・想起シチュエーションを促し実際に購買行動につなげること。この二つをまとめて解決できますよね」と語り、今回の施策がブランド課題の核心に迫るものであったと総括した。

購買データから顧客解像度を上げる「好循環」への展望

今回の成功を受け、両社は次なる展開を見据えている。それは、実際に商品を購入したユーザーが「どのような人物なのか」というペルソナの解像度をさらに高め、その知見を次の広告配信に活かしていくという「好循環」の創出である。

宍戸氏は、メーカーにとって最も欲しいのは「パーチェス(購買)データ」、つまり「どんな人が我々の商品を実際にどんな気持ちで手に取ってもらったのか」という情報だと語る。そのデータを基に見込み客の解像度を上げるアプローチこそが、これからのマーケティングの前提条件になると強調した。

写真 「radiko Biz Conference」の様子

セッションの最後に宍戸氏は、大正製薬がAIを積極的に活用し広告配信を行っている現状にも触れ、「AIは広告の一つの手段である」としながらも、「AI時代だからこそ必ず見直される、価値のある媒体だ」とラジオの未来に期待を寄せ、「温かみのある日本のマーケティングを作りたい」と締めくくった。池田氏もまた、「ラジオが聞かれているからこそ、radikoがこういった機能が使える」と述べ、ラジオ局や広告主と共に新たな成功事例を創出していく意欲を示した。

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