空を見上げる楽しみを「備え」の力に—雲研究家・荒木健太郎さんの「私の広告観」出張所

月刊『宣伝会議』では、社会に大きな影響を与える有識者が、いまの広告やメディア、コミュニケーションについて、どのように捉えているのかをインタビューする企画「私の広告観」を連載中。ここでは「私の広告観 出張所」として、インタビューの一部をお届けします。
今回登場するのは、SNSや書籍などを通じて気象情報から防災の重要性を「楽しさ」を掛け合わせて発信している、雲研究者の荒木健太郎さん。能動的な防災には広告の「反応設計」の視点が効果的だと話す荒木さんに、未来の防災を支える情報リテラシーのあり方や、広告の切り口から見た情報の伝え方について話を聞いた。
※本記事の全文は、月刊『宣伝会議』2026年4月号に掲載されています。

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荒木健太郎さん

雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・博士(学術)。1984年生まれ、茨城県出身。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。主な著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズ、『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』などがある。X・Instagram・YouTube:@arakencloud

Q.荒木さんは雲の研究家として、SNSでも日々情報を積極的に発信されています。発信するようになったきっかけを教えてください。

情報は人々に使われなければ意味はないと思っています。そう思うようになったきっかけは、2015年の「平成27年9月関東・東北豪雨」です。

その前の2014年、茨城県常総市での講演で「ハザードマップの確認」を呼びかけていたのですが、実際に鬼怒川の氾濫によって被災した方々から返ってきたのは「まさか自分が」という言葉で。

一時的な啓発で防災意識を維持させる難しさを痛感しました。この経験から「能動的な防災」には「楽しさ」を付け足す必要があるのではないかと考えるようになりました。

そこで、日常にゲームのような遊びになりそうな気象情報・知識をSNSなどで発信していくことで、自然と気象情報に慣れ親しんでもらえるようになれば、いざという時の冷静な判断へとつながっていくのではないかと。そんな思いで情報発信活動に取り組んでいます。

Q.情報発信をしていくなかで、何か気を付けていることはありますか。

私がSNSで発信する最大の目的は「防災」です。命に直結する情報を扱うからこそ、その表現には細心の注意を払っています。

発信で何より大事なのは「誰も傷つけない」こと。ネット上には拡散を狙って災害を茶化すような発信も見られますが、それは絶対にあってはならないと考えています。

気象発信には、独自の構文を使います。冒頭で端的に概要を伝え、詳細を説明し、最後に行動を促す。また、普段から表現の“レベルづけ”を徹底しています。いつも冷静な私が、本当に危ない時だけ「お願い」という言葉を使うなど。フォロワーに、そのニュアンスの差を届けるためです。

他にも、文章にイラストや図解を添えることで理解度が向上するという研究結果に基づき、ほとんどの投稿に画像や図表などの視覚的な工夫を施したり、生活動線に合わせた時間帯に発信を重ねたりするなど、試行錯誤を繰り返してきました。

X等のSNSでは、荒木さん独自の構文を使い、危険度にあわせて発信内容を工夫している。例えば【予報】の場合、「①端的に起こることを説明、②やや詳しく概要を説明、③数値で説明、④行動変容を促す」をテキストで示し、その地域の数値が分かる天気予報を掲載するなどだ。

Q.広告について、何か考えることがあれば教えてください。

誰に何を訴えかけ、どういう反応を引き起こすのか。そのゴールから逆算して練り上げられた広告の戦略性は素晴らしいと感じます。

気象情報は対象が広すぎるため、なかなかそこまで絞り込んだ戦略が取れていないのが現状ですが、人の心を動かし行動へつなげる広告の仕組みは、防災情報のあり方を考える上でも、非常に勉強になります。

その一方で、誇大表現は論外ですが、ギリギリを攻める表現であっても、誰かを傷つけるものになっていないか、発信する側は常に気を配るべきです。不快感を与えてまで稼ぐのではなく、人の心を動かし、ポジティブなライフチェンジにつながるような広告が増えてほしいと思います。

そんな広告の“伝える力”を手本に、あらゆる角度から気象や防災の重要性を伝えていくこと。それが、これからの私の挑戦です。

…荒木さんのインタビュー記事全文は、月刊『宣伝会議』2026年4月号に掲載しています。

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