AI前提の業務設計で「90%効率化」
ディー・エヌ・エー(DeNA)は3月6日、AI活用の取り組みを紹介するイベント「DeNA × AI Day 2026」を開催した。クロージングセッションに登壇した代表取締役会長の南場智子氏は、同社が2025年に掲げた「AIオールイン」戦略の進捗を説明。AIを前提とした業務設計によって、生産性の大幅な向上が進んでいると明らかにした。
同社ではAI導入によってエンジニアの業務内容が大きく変化したという。南場氏は「エンジニアは人生が一変したのでは。コードを書く仕事は激減したと聞きます」と話し、プロジェクトによっては「人が5%、AIが95%」という状態になり、生産性が20倍に向上したケースもあると説明した。
また、既存業務にAIを追加するのではなく、AIを前提に業務フローそのものを組み替える取り組みも進めている。配信審査など一部の業務では60%削減、業務によっては90%の効率改善が実現したとする。
こうした改善はトップダウンだけでなく、現場主導の取り組みも多い。社内では「AI活用100本ノック」と呼ぶ実践を進め、社員がAIによる業務改善事例を共有する形で、全社的なAIネイティブ化が進んでいるという。
「ツールからスタッフへ」、AIのオンボーディングが必要
南場氏はAIの進化として、AIエージェントの普及を強調した。「AIがサポートツールからスタッフになった」と述べ、南場氏自身も、DeNAのIT本部が社員として登録しトレーニングしているというAIエージェント「lemonくん」とSlack上でコミュニケーションを取りながら、日々の仕事を進めているという。
このAIはグループチャットを読み取り、自らタスクを引き受けることもあるという。ToDo管理やリマインド、情報収集などを任せていると説明した。
AIエージェントの普及によって、AI活用のポイントも変化している。これまで注目されてきた「プロンプトエンジニアリング」や「コンテキストエンジニアリング」に加え、今後はAIがどこまで情報を取得し、どの行動を許すのかを設計する「エンバイラメントエンジニアリング(環境設計)」が重要になると指摘した。
DeNAのIT部門がAIエージェント(OpenClaw)を「社員として登録」し、権限や閲覧範囲を設計していることも明らかにした。社内Wikiやカレンダーなどの情報は閲覧できる一方、重要な操作は人間の確認が必要になるなど、人間の社員と同様の権限管理を行っている。AIを組織の一員として迎え入れ、オンボーディングしていくという考え方だ。安全性と利便性を両立させる環境を整えた組織こそが、AIのメリットを最大限享受できると南場氏は強調した。
「乱暴なリーダーシップ」で生まれた余力・人は新規事業へ
AIによる効率化で空いた時間については、新規事業へ振り向ける方針だ。同社は約3000人の現業人員を対象にAI活用を進め、半分の人数で既存事業を運営できる体制を目指している。そのうえで生まれた人材を新規事業にシフトさせる計画だ。
ただし実際には、効率化によって空いた時間を社員が別業務に充てるケースが多く、人材シフトは想定ほど進んでいないという。
南場氏は「人が浮きましたと言ってくる人はいない。みんなやりたかったけどできてなかった仕事を詰め込む」と話し、解決策として「ある程度乱暴なリーダーシップが重要なんだと思います」と語った。トップの強いリーダーシップで人材を移す必要があると指摘した。
また人材シフトには数年単位の時間が必要との見通しを示した。2026年度から段階的に人数を決めて移動させる計画だという。

