デザインファームNASUを率いる前田高志氏が、25年にわたる自身のデザイナー経験から、デザイナーの成長に必要な「視点」とフィードバックの価値について語ります。
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「ちゃんとやっているのに、上手くなっている気がしない」
この感覚は、デザイナーを長くやっていても消えません。デザイナー歴25年の僕だってそうだから。
案件はこなしている。
数も作っている。
忙しくもしている。
それでも、どこか引っかかる。
「これで良かったのかな」
「前より良くなっているのか分からない」
上手くいったはずのデザインも、しばらくすると恥ずかしくなる。 自分の体から出てきたものに、自信が持てない。
だから伸び悩みの相談を受けたとき、僕はまず「努力が足りない」とは思いません。問題は、量ではないことが多いから。
今、「本気のフィードバック」が減っている
「デザインは数を作れば上手くなる」。
これは半分正しくて、半分危ない。
正しいフィードバックがなければ、数はただの反復になります。悪い癖を繰り返しているだけかもしれない。やっているのに伸びている実感がないのは、量が足りないからではなく、見直され方が足りていないからかもしれません。
ここで、もう1つ難しい現実があります。
フィードバックしてくれる人がいない。あるいは、してくれているけれど、踏み込んだところまでは触れられない。最近、そういう声をよく聞きます。今はコンプライアンスやハラスメントへの意識が高い時代です。それ自体は健全ですし、必要なことです。
でもその結果として、
・強く言わない
・深く踏み込まない
・本質に触れない
という安全なフィードバックが増えている。
僕自身の経験を重ねると、フィードバックとして言いたいことはきちんと伝えています。でも、スタッフを雇い始めた頃と今とでは、やっぱり言い方には気をつけるようになっています。それゆえ、本当に伝えたかったことまで届けられているかは確信がないのも正直なところです。さらに時間がないときは、フィードバックして直してもらうより、自分で手を入れて仕上げてしまった方が早い場面もあります。
でもそれを続けていると、本来はデザイナーが考え、手を動かして試行錯誤するはずだった機会が減ってしまう。結果として、デザインする経験そのものが、以前より少なくなってしまうこともあるのです。
フィードバックする側からしたら踏み込みにくい。受ける側からしたら当たり障りはない。でも、揺さぶられもしない。伸び悩んでいる側からすると、「何が足りないのか分からない」状態が続きますよね。
「答えを教えるフィードバック」は成長を止める
もう1つ増えているのが、答えをそのまま教えてくれるフィードバックです。
「ここはこうして」
「このレイアウトにして」
「文字はこれくらいのサイズで」
一見、親切です。でもそれは問いではなく、誘導です。
答えを出すのはデザイナー。
問いを置くのがディレクター。
僕はデザイナーとディレクターの関係性をこう定義します。
どちらかが上とか下ではなくて、役割の違いです。そして、デザイナーとディレクターは一緒に作る仲間です。そもそもフィードバックという言葉も「ダメ出し」ではありません。良くするためのコミュニケーションラリーなのです。いいところを見つけることもフィードバックなのですから。
データを深い領域で一番触って、一番いろいろな可能性を試すのがデザイナーなら、方向性を示したり、その方向からずれているとしたら正しい方向へ導くのがディレクターです。
だから、ディレクターがデータやデザインの細かなことまで口を出し始めるとデザイナーの役割を奪ってしまうことにつながる。その環境では、成長のラリーが起きないしデザイナーは成長できません。
ただ誤解しないで欲しいのは、役割でパツンと境界を持たないで欲しいということです。ディレクターがデザインを考えることもあり、デザイナーが問いを作ることもあります。そのプロジェクトの最善のためにいっしょに歩いて行きます。責任の所在を確かにするためにディレクター/デザイナーという肩書きがあります。