日産自動車は新シーズン開幕に合わせ、横浜F・マリノスをテーマにした懸垂幕を日産スタジアムに掲出した。新型EV「日産リーフ」のフルモデルチェンジとクラブの再出発を重ねたコピーは「継承する、進化する。」。現役選手とレジェンドOBを重ね合わせたビジュアルはSNS上で大きな反響を呼び、日産のスポーツスポンサー活動を象徴する施策となった。この企画が生まれた背景には、企業とクラブ双方に吹いた逆風があった。
業績低迷とチーム不振、スポンサーとして揺れた1年
2025年、横浜F・マリノスを巡る環境は大きく揺れていた。日産の業績低迷に加え、クラブはJ1残留争いに巻き込まれた。さらに日産がマリノス株式の売却を検討しているという報道もあり、ファンやサポーターの間には不安や不満の声が広がっていた。
日産自動車 日本マーケティング本部 ブランド&コミュニケーション戦略部の星野景子氏は、当時の状況を振り返る。
「会社の業績についての報道だけでなく、F・マリノスについても憶測報道があり、ファン・サポーターの方や選手の皆さんにはご心配をおかけしたと思います。そこは本当に申し訳ない思いでした」
スポンサー活動の目的はブランド価値向上だけではない。星野氏は「クラブとスポンサーがWin-Winの関係で、地域や業界を盛り上げていくことが重要だ」と話す。一方で、企業の経営状況が厳しい中でスポンサー活動をどのような形で継続していくかは社内でも長く議論した。
「F・マリノスは日産にとって大切な資産です。日産スタジアムの名称も横浜市民の皆さまに長く親しまれています。皆さんの期待にお応えするにはどうするのがベストなのか。その議論が長く続いていました」(星野氏)
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転機となったトークショー
ファン・サポーターとのコミュニケーションを本格的に再開するきっかけとなったのが、2025年12月に日産本社で開催されたイベントだった。横浜F・マリノスと横浜DeNAベイスターズの選手が登場する合同トークショーで、タイトルは「横浜の力、応援の力」。
「I☆(ラブ)YOKOHAMA スペシャルトークショー powered by NISSAN 〜 横浜のチカラ、応援のチカラ 〜」の様子
しかしこの企画も当初は実施が危ぶまれていた。チームは残留争いの最中で、企業としてもスポンサー継続の判断が注目されていたからだ。
TBWA HAKUHODOの日産担当チームで長らく横浜F・マリノスの施策を企画し、自身も生粋のマリノスサポーターの赤星貴紀氏(ストラテジックプランナー)は、当時の難しさをこう語る。
「F・マリノスの状況も日産の状況も刻一刻と変わる中で、スポンサーとしてどんな発信をするべきかずっと議論していました」
最終的に11月上旬の段階でJ1残留が決まったことで、ファン・サポーターが安心して楽しめる場としてイベント開催を判断し、急ピッチで準備することとなった。結果的にこのイベントが、クラブとスポンサー、そしてファン・サポーターを再びつなぐ象徴的な場となった。

