ユーキャンのYouTubeクリエイター施策で検索リフト1400% 博報堂、Googleのデータ活用で“界隈”施策を進化

博報堂は、Googleのインサイト発見ツール「Insights Finder(インサイトファインダー)」を活用したYouTubeクリエイター広告施策支援をクライアント向けに提供開始した。クリエイターとの共創がマーケティングの有力な選択肢として定着する一方で、企業側には「誰を起用すべきか分からない」「施策がKPIへどの程度寄与したのかが見えない」といった悩みが残されていた。
 
従来は、各クリエイターの視聴者データや発信内容、商品との相性をもとに選定するケースが多く、判断軸もフォロワー数や再生規模といった定量指標に寄りがちだった。しかし近年は多様なクリエイターが台頭し、クライアントの要望も細分化。特定のコミュニティと熱量高くつながる「界隈消費」が広がる中で、商品と界隈の接着点をどう見いだし、生活者の「信頼買い」を促すかが課題になっている。

Insights Finderの特長とソリューションの強み

Insights Finderは、Googleのデータをもとに、特定のトピックに関心を持つオーディエンスの発見や、市場トレンド、関連する興味関心を分析し、可視化するツールだ。博報堂はこのツールを基点に、ターゲットがYouTube上でどのようなチャンネルを視聴しているのかというオーディエンスインサイトを把握し、ブランドと親和性の高いYouTubeクリエイターを発掘する。

単に「なぜそのクリエイターなのか」をデータで裏付けるだけでなく、博報堂DYグループのデジタルマーケティング会社Hakuhodo DY ONE、博報堂とUUUMの合弁会社HUUM(フーム)と連携し、企画、制作、配信、分析まで一気通貫で支援する体制を整えた。

効果計測では、ブランドリフト調査はもちろん、検索リフトレポートでは、動画広告視聴者が、のちにGoogle検索でブランド名や商品名など特定キーワードの検索の増分を可視化することができる。また施策によってはGoogleのデータクリーンルームの“Ads Data Hub”を活用してYouTubeクリエイター動画広告施策が商材理解や購買意向といったKPIにどの程度寄与したのかを可視化していくこともできる点が特徴だ。

Googleのデータをもとに、HUUMとHakuhodo DY ONEが持つ技術やノウハウを結集した

Googleのデータをもとに、HUUMとHakuhodo DY ONEが持つ技術やノウハウを結集した

導入の背景には、クリエイターマーケティングの潮流変化もある。グーグルの町田果奈氏は、YouTubeクリエイターの強みとして、大型クリエイターの持つ影響力は注目していく必要があるものの、商品/ブランドのマーケティングに一番欠かせないのは、特定エリアの共通の趣味や価値観などを持つ生活者のより濃い“界隈”に根ざしたクリエイターコミュニティにあると見る。

グーグル合同会社 コンシューマープロダクト&リテール業界 広告営業部門 インダストリーヘッド 町田果奈氏

グーグル合同会社 コンシューマープロダクト&リテール業界 広告営業部門 インダストリーヘッド 町田果奈氏

YouTubeの持つ“信頼性”が、広告主のマーケティングにおいて、その態度変容を量はもちろん“質”でも促せることがYouTubeクリエイターの強みであり、リーチ補完や単にクリエイターに紹介してもらうという役割だけではなく、界隈内での説得性を生かすことが求められているという。

従来のCM以外の施策に挑戦するユーキャン

このソリューションを採用したのが、生涯学習の通信講座を手がけるユーキャンだ。同社は長年、テレビCMを中心に新規顧客獲得のためのプロモーションを展開してきた。心新たに新年を迎えるタイミングで、著名タレントを起用したCMを打ち、「新たなチャレンジ」を訴求してきた一方で、テレビでは届きにくい層が増えていることが課題だった。

同社はクリエイター広告施策には以前から関心があったものの、どう始めればよいか分からず、費用対効果も見えにくかったため、大々的に踏み出せなかったとしている。

転機になったのが、Insights Finderを軸にしたデータ起点の提案だった。博報堂 ビジネスプロデューサーの野田憲太郎氏は「根拠あるデータで選定している点が信頼につながった」と振り返る。

博報堂  野田憲太郎 氏

博報堂 野田憲太郎 氏

今回プロモーション対象にしたのは「実用ボールペン字講座」。ユーキャンには約140講座があり、国家資格対策の講座のように男性比率が高い講座もある一方、全体としては女性が購入しやすいラインアップが多い。その中でもボールペン字講座は趣味系に近く、過去には著名な女優・タレントを起用した「チャレンジユーキャン」で知られ、女性や子育て層の支持が厚い講座だった。

今回は既存の支持層を大切にしながら、若い女性層へどう広げるかをもう1つの軸に置いた。主婦層や「丁寧に暮らしたい」「自分を見つめ直したい」と考える人は、どのようなクリエイターに関心を持っているのか。ファイナンシャルプランナーのようにターゲットを描きやすい資格講座と違い、ボールペン字講座は「誰に刺さるのか」が曖昧だったが、Googleのデータを使ってキーワードから興味関心をひも解いた結果、2人のクリエイターにたどり着いた。

HUUM ビジネスプランナーの岩渕裕太氏は、視聴者の興味関心から商品と親和性のある界隈選定やクリエイターレコメンドを行う点が、従来の感覚に頼った提案と異なると説明する。

HUUM TVコンテクストブランデッドエンターテイメント局 ビジネスプランナー 岩渕裕太 氏

HUUM TVコンテクストブランデッドエンターテイメント局 ビジネスプランナー 岩渕裕太 氏

YouTubeクリエイターの強みを引き出す

起用したのは、30代女性から等身大のファッションやライフスタイル発信をしている「かんだま劇場」と、日々の小さな幸せや丁寧な暮らしの発信から憧れを喚起する「Otena vlog」。いずれも日常を発信しているというコンテンツは同じだが、視聴者との関係性や投稿の見せ方は大きく異なる。予算などの制約はあったものの、あえて1人には絞らなかった。1人の起用では、そのクリエイターのファン層に閉じてしまうからだ。同じジャンル内でも、見ている人が少し違いそうな2人を選ぶことで、異なる接点をつくり、界隈内での話題化を図った。

クリエイター選定も個人の感覚からデータドリブンに

クリエイター選定も個人の感覚からデータドリブンに

制作面でも、テレビCMとは異なる考え方を取った。企画の骨格は共有しつつ、クリエイティブは基本的にクリエイター側のトーンアンドマナーを尊重した。HUUMは企業が伝えたいポイントを整理し、クリエイターとの認識をすり合わせる役割を担った。

「かんだま劇場」(上)と「Otena vlog」(下)で配信した動画。それぞれクリエイターの色が反映されている

岩渕氏は、「得意先の意図をくみ取りながらクリエイターに指示を出し、必要な修正を加えつつ、双方の間に立ってより良いものをつくることを意識した」と話す。町田氏は、「企業の公式な声であるブランドボイスと、クリエイター主語のクリエイターボイスをどう活用するかが今後の企業のチャレンジになる」と語る。広告主であるユーキャンはその点を踏まえクリエイターの強みを生かすことを重視し、必要最低限の伝達事項だけを押さえて進めたことも奏功したといえそうだ。

広告施策は昨年12月に開始。年明けにはプロモーションが一気に増えるため、その前に少しずつユーキャンの名前を浸透させる役割も担わせた。動画はクリエイターのYouTubeチャンネル上に公開し、それをパートナーシップ広告で増幅する形を採用。通常のYouTube広告が企業のチャンネル上の動画を配信するのに対し、今回はクリエイターのチャンネル上の動画を企業が広告として拡張配信できるため、クリエイター自身の「声」として視聴者への説得力が出やすく、チャンネル上の視聴者反応と広告配信の両輪で効果を高めることができた。

「ボールペン字講座」の検索リフトが1400%超に

実際の反応も分かれた。かんだま劇場の広告配信結果は、視聴者とのコミュニケーションがうまくはまり、「やった」「買った」といった行動を想起させるコメントが目立った。一方のOtena vlogの広告配信結果では、憧れの生活の中で講座を使う見せ方が機能した。年賀状など「最近、字を書く機会が増えた」という生活文脈から導入し、「そういえばそうだ」と気づかせる構成で、単なる憧れだけでなく「自分もやってみようかな」という加入意向に近い反応も生まれた。

クリエイターのチャンネル上では、ユーキャンに対するポジティブなコメントも多く、数字以上の手応えがあったという。

成果としては、検索リフトレポート調査で「ボールペン字講座」の検索リフトが1400%以上を記録。野田氏は「誰に、どのような基準で依頼すれば、どのような声や反響が得られるのかをつかめたことは、今後につながるモデルケースになった」と語る。

また町田氏は、歴史あるブランドや商品、またはサービスに新しい息吹を取り入れる使い方もこのソリューションの有力なユースケースだと語る。名称認知やブランド知名度がもともと高い場合、ブランド側だけでは表現を刷新しにくい局面がある。そうしたとき、ブランドボイスに、クリエイターが主語となって違ったバリューを引き出す役割としてのクリエイターボイスを重ねることで、動画視聴者に新しい解釈をもたらしブランドの自分ごと化という可能性を拡げ新しい顧客開拓への道筋となる、と見ている。

博報堂は今後も、プラットフォーマーとの連携を通じて、データとクリエイティビティを融合したクリエイターマーケティングの価値創出を進め、企業の事業成長に貢献していく考えだ。

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編集協力:株式会社ユーキャン

お問い合わせ

株式会社博報堂

URL:https://www.hakuhodo.co.jp/


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