テレビ番組からYouTube、CMまで、メディアを縦横無尽に横断してヒットを飛ばし続ける株式会社チャビーCEO・放送作家の長崎周成さん。
AIが身近になり、コンテンツが溢れる今の時代に、人間が作るべきコンテンツとは?日常の些細な「あるある」を唯一無二の企画へと昇華させる、長崎流・思考の裏側を覗きました。
【1日集中型】
4月25日(土)開講「超コンテンツ時代を生きていく 放送作家企画養成講座 長崎周成クラス」
「面白い」を届けるまでが制作。出口までワンパッケージで考える
━━コンテンツ制作を行う中で、以前と一番変わったなと思う部分はどこですか?
長崎:一番の違いは、「作って、はい終わり」だけじゃ通用しなくなっているところですね。重要なのは、アウトプットからの逆算。つまり「世に出たときにどう広まるか」というマーケティング視点までをクリエイターが考えることがマストになっています。
昔は制作に100%注力すればよかったかもしれないけど、今は宣伝まで含めた「ワンパッケージ」で企画を立てなきゃいけない。かといって、マーケに寄りすぎると「どこかで見たことあるな」っていう既視感のあるものが生まれてしまうので、その塩梅が難しいんですけど……。
━━分業化が進む中で、企画者はどこまで関わるべきなんでしょう。
長崎:僕は、PR担当と「並走」するのが理想だと思っています。だって、企画の面白さを一番わかっているのは企画者自身ですから。チャビーでは、僕とプロデューサーが、企画の頭からお尻(PR)まで全部見届けるようにしています。
基本的には、議論がまとまりやすい3〜4人のチームを組んで、全員が全工程を理解している状態。これが一番強いですね。
━━コンテンツを最後まで見てもらうための「仕掛け」はありますか?
長崎:コンテンツを強引に見せようとする「離脱防止」のテクニックはありますが、そもそもコンテンツを最後まですべて見てもらうなんて、作り手の「傲慢」かなとも思います。むしろ重視しているのは、映像そのものの意味、役割です。例えば、「この映像はラジオ的に言葉だけで楽しめる」とか、「視聴と思考を同時に巡らせる要素がある」などですね。
1秒ごとに意味のある映像を積み重ねるという、企画者としての本分を尽くすこと。強引なテクニックで縛るのではなく、どの瞬間を切り取っても面白がり方がある状態を目指しています。
━━データ分ではどのような指標を見ていますか?
長崎: YouTubeなどの分析では、再生回数よりも「コメント数」を重視しています 。コメントは感情を揺さぶれたかどうかの指標であり、感想を抱いた人はファンになる確率が高いですから。僕は全てのコメントを確認して、自分にはない角度の意見を参考にしています。
「脱線、上等」の会議術。全員がお世話したくなる企画がはねる
━━長崎さんの企画って、いつも切り口が独特ですよね。アイデアの種はどうやってストックしているんですか?
長崎:特別なことはしてなくて、実は日常の「あるある」や体験談から発生することが多いですね。一見、生産性のないような議論を仲間と徹底的にやるんですよ。例えば、「飲み会のベスト人数は4人だけど、散歩のベスト人数は?」とか(笑)。
そうすると、4人だと横一列になれないし、話題が2つに分かれるからなぁ。3人なら前後に分かれても、余った1人が必ず話題に食らいつこうとするから、会話の熱量が維持されてちょうどいいのではないか、という意見が出てくる。一見くだらないんですけど、こういった「共感」はなかなかデジタル上には落ちていないので、そこを大事にしています。
━━日常のあるあるから、実際の企画に繋がることもあるんですか。
長崎:先日、葬儀に参加する機会があったのですが、参列者の1人が手ぶらで来ていたんです。喪服のスーツを着て、ポケットに数珠と文庫本だけ入れて。それがなぜか猛烈にカッコよく見えて(笑)、ふと「手ぶらで海外旅行をする番組がやりたいな」と企画メモに書きました。パスポートとスマホだけで空港に降り立って、必要なものは現地調達。これなら街を深く知るきっかけにもなる。
こういう「手ぶらってカッコいい」というその瞬間の感覚はデジタル上には落ちていないし、AIに「考えて」と言ってもなかなか出てこない視点ですよね。手ぶらがかっこいいという視点自体が、バカみたいな視点だと思うので(笑)。