データとAIが導く組織変革とマーケティングDXの最前線

福岡で3月6日に開催された「KAIGI GROUP フォーラム in Fukuoka」(宣伝会議主催)で、データとテクノロジーをいかに組織に根付かせ、顧客との最適なコミュニケーションに結びつけるのかをテーマにした2つの講演が行われた。

嘉穂無線ホールディングスの岩橋貴樹氏は、アナログ組織からAI活用企業へ変貌した軌跡をもとに、ツール導入よりも現場への「浸透」を最優先する組織変革の仕組みを解説した。一方、NTTドコモ九州支社NTTドコモの浜田淳氏は、1億人超のデータ基盤とAI「予兆ターゲティング」を掛け合わせた、フルファネルでの行動可視化による最先端のマーケティングDXについて語った。

AI導入の壁を越える「浸透」最優先のスモールスタート

北部九州などで展開するホームセンター「グッデイ」の運営などを手がける嘉穂無線ホールディングスの岩橋氏は、多くの企業が直面するAI導入の壁について、その原因がツール不足ではなく、権限や評価、共有といった「組織としての前提」が未設計であるためだと指摘した。AIが「一部の部署で終わる」「PoC止まりになる」といった失敗を防ぐため、同社はトップダウンやいきなりの全社一斉導入を避け、現場の課題感に基づいたボトムアップのアプローチを採用した。AIを特別なDX施策とせず、日常業務の延長線上に置き、新しい業務を増やさないことを徹底している。

これにより、現場が試行錯誤できる余白を残し、正解よりも「試したこと」を評価する環境を整え、現場への「浸透」を最優先する戦略をとった。

「TTP」を促すデータ文化と「改善が循環する仕組み」

この戦略を支えるのが、「改善と挑戦が循環する仕組み」の構築である。

同社ではまずBIツール「Tableau」を用いてデータを可視化し、実践的なデータ分析を学ぶ「GooDay Data Academy」を設立した。さらに、研修を単発で終わらせないため「データ活用推進部」を新設し、各部署に伴走して支援する体制を整備した。また、部署を超えて小さな改善事例を共有し称賛する社内イベント「GooDay Data Festival」を定期開催している。

これにより、個人の工夫が会社の知恵として共有され、他部署の成功事例を「徹底的にパクる(TTP)」ことが肯定されることで、現場の改善スピードが指数関数的に上がる文化が醸成された。

現場が自走するAI活用事例と「考える補助」としての位置づけ

こうしたデータの循環回路にAIを自然に乗せたことで、現場主導の自発的な活用が加速した。同社はAIを「正解を出す存在ではなく、考えるスピードを上げる補助」と定義し、最終判断は必ず人が行うというルールを徹底している。

その結果、店舗スタッフが写真から合鍵の型番をAIで特定するアプリ(社内最優秀賞獲得)や、広大な売り場から商品の在庫場所を検索するシステム(準優勝獲得)を自作し、業務時間を劇的に短縮させた。

さらにマーケティング部門では、70万人を抱える公式LINEのアンケート結果(例:新生活に関して67〜68%が「特に生活は変わらない」と回答したデータ等)をAIで深掘りし、コールセンターでは通話内容の自動録音・文字起こしアプリを開発するなど、情報探索と判断のスピードが大幅に向上している。

「シングルIDマーケティングによる顧客行動全体の見える化」

NTTドコモ九州支社の浜田氏は、1億超のdポイントクラブ会員と、全国約11万のリアル加盟店からなる日本最大級のデータ基盤を活用したマーケティング支援について解説した。同社の最大の強みは、お客様の同意に基づき、ユーザーの属性、アンケート、アプリ利用ログ、決済データ、位置情報など約5万項目に及ぶ多種多様なデータが、「シングルID」で紐づいている点にある。このシングルIDを活用することで、認知から検討、購買、そしてリピートに至るまでの顧客行動をフルファネルで一気通貫して測定・改善する「シングルIDマーケティング」が可能となる。

これにより、「何が売上に効いたのか分からない」という企業のマーケティング課題を解消し、手応えのある「見える化」マーケティングを実現している。

AI「docomo Sense®」と時系列データを掛け合わせた「予兆ターゲティング」

このデータ基盤をさらに高度化させるのが、顧客理解エンジン「docomo Sense®」を用いた「予兆ターゲティング」である。同社のデータは時系列の連続性が保たれており、顧客の行動を点ではなく連続したストーリーとして捉えることができるため、興味・意向の高まりやライフステージの変化といった「行動予兆」を高精度に推定できる。

実際の成果として、家電量販店向けに「引越予兆者」へ広告を配信した結果、クリック率(CTR)が約2倍、購買単価が195%へと大幅に向上した。

また、健康食品メーカーが「健康志向の予兆者」へ広告を配信したケースでは、CTRが媒体平均の3倍(1.2%)、コンバージョン(CVR)が通常セグメントの1.9倍を記録し、適切なタイミングでのアプローチが強力な成果を生むことが実証された。

データに基づく実店舗の課題解決と九州・沖縄エリア向けソリューション

同社のデータ分析は、実店舗における課題解決を “勘と経験” から “予測と実行” へと進化させている。あるホームセンターでは、購買データと天候データを統合分析することで、雨天時に売上が約24%落ち込むことを定量的に把握。得られたインサイトをもとに雨天特化型キャンペーンを実装し、リアル店舗における成果創出を実現した。
また、ドラッグストアではアプリ利用者の来店頻度や単価が高いことを分析により洗い出し、アプリ施策に注力して売上成長につなげた事例もある。

講演の最後には、九州・沖縄エリアの企業に向けた具体的なソリューションを提示した。dポイント・d払いアプリのメッセージBOXを活用し、複数企業でコストを抑えつつ “地域性” を活かしたPRを行う「連合広告企画」、SNSなどから専用のコードを読み取って自販機にかざしてサンプルを受け取る「サンプリング自販機」、そしてパートナー企業と連携した、ユーザー体験の向上からCVRの改善や売上改善まで一気通貫でサポートする「顧客アプリ改善支援」である。

浜田氏は、領域横断のデータ活用により、今後、マーケティング領域にとどまらず、社会課題や行政や地域DXへと領域を広げていく展望を語った。

*「docomo Sense」は、株式会社 NTT ドコモの登録商標です

お問い合わせ

株式会社NTTドコモ

URL:https://www.docomo.ne.jp/

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