一度躓いたAI利活用。社内浸透は現場リーダーから
MIXIでAI活用が全社に広がった転機は、ツールの配布ではなく、全部署のリーダー層を巻き込んだ議論の場だった。同社でAI推進委員会の委員長を務める取締役上級執行役員の村瀬龍馬氏は、2023年に有料版ChatGPTの利用補助を出しても社内には浸透しなかったと振り返る。その後、2024年12月にAI推進委員会を立ち上げ、翌25年3月に各部署のリーダーに「自部署はAIで変わる」と認識を浸透させる合宿を実施。以降、約3カ月で利用率は99%まで高まったという。
MIXIのAI活用率や社内の導入件数・費用対効果など(3月27日に開催されたMIXI MeetUP!_AI DAY2026の村瀬氏の基調講演資料より)
村瀬氏が重視したのは、「一部の詳しい人だけが使うAI」ではなく、全社員が文房具のように使う「AIの民主化」である。AI導入の場面では、外部コンサルタントやAIに詳しい人材を中心に据える議論になりがちだが、同氏はそうした進め方では広がらないと見た。実際、2023年にChatGPTの有料版利用を会社が補助しても、社内で「これがいい」と共有する文化は生まれず、活用はスケールしなかったという。
そこでMIXIが切り替えたのは、「使ったほうがいい」と呼びかけるだけの推進ではない。全部署のリーダー層を集め、「自分の部署はAIで変わる」と自ら語らせる方式へと転じた。村瀬氏によれば、合宿ではAIの研修自体は2時間ほどにとどめ、残りの時間は木村弘毅社長やCFOの島村恒平氏などボードメンバーも交えた対面のディスカッションに充てた。各部署がどう変わるかを言語化し、最後に宣言して持ち帰る。このプロセスが、単なる理解促進ではなく当事者意識の醸成につながったという。
AI推進委員会への報告をもって評価する仕組み化
同氏は「使え」「使ったほうがいい」というメッセージは通用しないとも語る。そこでAI推進委員会では、報告されていない取り組みは実績として認めないルールを先に置いた。重要なのは、成果そのものだけでなく、横展開のために共有されていることだという考え方だ。AI活用を個人の工夫で終わらせず、組織の知見として蓄積する仕組みを先に作った点が特徴である。
