広告代理店を舞台にしたテレビアニメ「左ききのエレン」のプロモーションビデオ(PV)は、いかにして視聴者の心を掴んだのか。作品の宣伝を手掛けたギャガの宣伝プロデューサー岡本菫氏、PV制作を担ったガル・エンタープライズのディレクター畠山綾氏と高野雄登氏への取材を通じ、そのクリエイティブの裏側を明らかにする。「天才になれなかったすべての人へ」という作品の核心を映像に凝縮するため、PV制作チームがたどった思考のプロセスと、アニメPVならではの制作手法に迫る。
アニメ「左ききのエレン」のキービジュアル(左)とティザービジュアル(右)
エモーショナルな物語を託されたプロ予告編制作チーム
4月7日深夜24時からテレ東系列で放送開始するアニメ「左ききのエレン」のプロモーションとして、ティザーPVが5カ月前に、メインPVが1カ月前に配信された。アニメ作品のプロモーションにおいて、PVは不可欠な要素である。そうした中で、ギャガの宣伝プロデューサーである岡本菫氏は、アニメ「左ききのエレン」のPV制作を、専門の予告編制作会社であるガル・エンタープライズに依頼することを決めた。
その背景には、「エモーショナルで良質な物語だからこそ、プロフェッショナルな予告会社に発注したい」という強い思いがあった。岡本氏が特に注目したのは、同社に所属するディレクターの畠山綾氏であった。岡本氏は、畠山氏へ過去依頼した映画「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」のPVを高く評価しており、「畠山さんはすごいエモが得意というか、感情を揺さぶるような構成が上手」とその印象を語る。「左ききのエレン」がアクションやファンタジーではなく、人間ドラマであるからこそ、その作風が最適だと考えたのだ。
しかし、畠山氏は別の劇場作品のPV制作とスケジュールが重なっていた。そこで彼女が推薦したのが、同社でアシスタント・ディレクターを務める若手の高野雄登氏だった。岡本氏は、畠山氏が信頼を寄せる高野氏にメインディレクターを託すことを決断する。高野氏が原作「左ききのエレン」を読んでいたこと、そして主人公・朝倉光一が一人前になるまでの成長物語と、若手である高野氏自身の姿が重なることで、より深い感情移入に基づいたクリエイティブが生まれるのではないかという期待もあった。奇しくも、それはベテランの先輩と若き後輩という、作中のアートディレクター・神谷雄介とデザイナー・朝倉光一の関係性を彷彿とさせる座組でもあった。
「天才と凡人の青春物語」というコンセプトの確立からラフ制作へ
PV制作は2025年8月から本格的にスタートした。まず岡本氏が提示したPVのコンセプトは、「光一とエレンの十数年に渡る青春物語であることがわかるように」というものだった。本作が持つ広告業界を舞台にした「お仕事もの」といった側面よりも、天才少女と凡人少年の二人の関係性を軸に、エモーショナルな側面に振り切ることをオーダーした。
TVアニメ「左ききのエレン」ティザーPV/場面カット
高野氏はオリエンテーションを受け、まず複数の構成ラフを提案した。その中には、タイトルの通りエレンを主役として見せるAパターンと、光一とエレンの「天才と凡人の物語」として描くBパターンがあった。関係者で検討を重ねた結果、採用されたのは後者のBパターンだった。作品のキャッチコピーである「天才になれなかったすべての人へ」を軸に、二人の対比と関係性を描く方向性が固まった。







