Adobeは4月20日から22日(現地時間)にかけ、米国・ラスベガスで「Adobe Summit 2026」を開催している。年に一度のデジタルエクスペリエンスのカンファレンスで、今年で24回目を迎えた。本カンファレンスで発表された内容について、現地からレポートしていく。
「Adobe Summit 2026」の様子。会場はラスベガスの「The Venetian Convention and Expo Center」。一部のセミナーは、オンラインでも視聴可能だ。
アドビの会長兼CEOが語る、「AIの民主化」の先にあるもの
初日の20日には基調講演が開催され、同社は企業向けエージェント型AIシステム「Adobe CX Enterprise」を発表。
これまで同社は、「Photoshop」から「Experience Cloud」に至るまで、自社製品群を密に連携させることで「アドビ・ソリューションで完結する世界」を構築してきた。しかし今回提示したのは、その「壁」を自ら取り払い、サードパーティのAIが入り混じる「マルチエージェント環境」のハブ(中心地)となる道だ。
オープニングキーノートで登壇した、アドビ 会長兼CEOのシャンタヌ・ナラヤン(Shantanu Narayen)氏は、「我々は今、AIが単なるツールの枠を超え、自律的なパートナーとして組織の知性を拡張する、エージェンティックAI時代の入り口に立っている」と説明。
基調講演に登壇した、アドビ 会長 兼 CEOのシャンタヌ氏。
シャンタヌ氏によれば、これまでの数年間はAIによる「生成」の時代だった。しかし、これからはその生成物をいかに「オーケストレーション(統合管理)」し、ビジネスの成果に直結させるかが企業の死活問題になるという。
「これまでのデジタルマーケティングは、データのサイロ化との戦いだった。エージェント型AI時代においては、もはや一社のツールに閉じることは不可能。アドビは、あらゆるAIプラットフォームを横断してオーケストレーション(統合管理)ができる『プラットフォーム・オブ・チョイス(最適な選択肢)』になる。『Adobe CX Enterprise』は、企業がAIの実験段階を卒業し、ビジネスの核心部分にAIを組み込むための、アドビ史上最も野心的な答えだ」(シャンタヌ氏)。
今年も注目すべき “自律性”
昨年のサミットでは、「Adobe Experience Platform(AEP)」に蓄積された顧客データからAIが回答を導き出す「自律性」が注目された。しかし、今年の「Adobe CX Enterprise」は、そのデータ基盤の上に、さらに高度な「脳」を二層構造で定義している。
参考記事
ひとつは、「Adobe Brand Intelligence」だ。これは静的に企業のブランドガイドラインを単に参照するだけのAIではない。動的なインサイト層として機能し、AI エージェントがアクセス可能な仕組みになっており、生成されるコンテンツのすべてが、ブランドに沿っていることを確保することが主な役割。
日々の承認プロセスやフィードバック、過去の成功したアセットから「何が自社ブランドらしいか」を継続的に学習し続ける、いわば「ブランドの矜持」を理解する推論エンジンへと進化する。
アドビ クリエイティビティ&プロダクティビティ事業部門代表のデイビッド ワドワーニ(David Wadhwani)氏。
昨年発表されたチャットボットが「指示に答えるAI」だったのに対し、こちらは「ブランドの番人」として、数百万通りのバリエーションに対しても、“自律的”にブランドの整合性を監視・校正する。
もうひとつが、「Adobe Engagement Intelligence」である。顧客体験を単なるパーソナライズから一歩進め、LTVを最大化するために「次にどのアクションを取るべきか」をAIがリアルタイムで意思決定する。
顧客エンゲージメントを最適化し、より効果的でパーソナライズされた顧客体験を提供するための意思決定エンジンだ。
アドビ デジタルエクスペリエンス事業部門 プレジデントのアニール チャクラヴァーシー(Anil Chakravarthy)氏は次のように補足した。
「マーケターはもはや、どのセグメントに何を出すかという『設計図』を書く必要はない。AIが導き出す『最適解』を評価し、戦略の舵取りをする。それがエージェント時代の新しいマーケティングの姿だ」。
「Adobe CX Enterprise」のデモ画面。





