過去のニュースとヒット曲が聞ける「AIラジオ機器」介護施設での導入検証がスタート

過去の西暦にダイヤルを合わせると、その年のニュースとヒット曲がラジオ番組のように流れてくるAIラジオ機器「RADIO TIME MACHINE」。TBWA\HAKUHODOが開発したこのプロダクトが、介護施設での導入検証を開始した。開発を手がけた同社の鈴木賢史郎さんに制作の裏側を聞いた。

「回想法」から生まれたデバイス

「RADIO TIME MACHINE」は、TBWA\HAKUHODOが独自に開発したAIラジオ機器だ。1950年代~60年代ごろのラジオをモチーフにした筐体のダイヤルを回すと、周波数が変わる代わりに、1950年から2025年まで1年刻みで西暦を設定できる。するとその年の「今日」のニュースが、ヒット曲とともにラジオ番組風に自動生成され再生される。

「RADIO TIME MACHINE」デバイス本体。

今回、このデバイスを開発したのは、同社内の組織「Innovation Hub」。鈴木賢史郎さんは企画の経緯について次のように語る。「社会が今何を求めているかを自由に見定めて、アイデアで解決していこうという風土が部署内にあります。定例会議でそれぞれ関心ごとを持ち寄り、アイデアを出し合う中で、この企画が生まれました」。

超高齢社会の到来や認知症の増加という課題に対し、介護を専門としない広告会社として、エンターテインメントコンテンツへの強みを活かせないかと考えた。そこで過去の出来事や音楽に触れることで記憶を刺激する心理療法「回想法」に着目。この手法をエンタメコンテンツとして昇華させ、組織内に在籍するテクニカルディレクターとともにAIの実装を含む開発を行った。

“人の心”が支えるコンテンツ設計

コンテンツ制作では主にニュース原稿の作成と原稿の読み上げの機能においてAIが活用されている。ただしその過程にも人間の判断や価値観が入っている。

ニュース原稿の作成では、Wikipediaから特定の年月日の出来事をAIが収集し、高齢者に届けるトピックスを人間の視点で選定する。「暗いニュースが流れると、気持ちを豊かにするという目的とずれてしまう。そこは人間の目が必要です」と鈴木さんは説明する。開発前に介護施設へ通い、高齢者との対話から選定基準を見出した。皇室の動向、相撲、プロ野球、宝塚、ヒットした映画――当時の日常に根差したトピックスやカルチャーを軸に選んでいった。

楽曲も、単に売上ランキング順に並べるのではなく、施設で日常的に口ずさむ人が多い曲や、『NHK紅白歌合戦』の記憶と結び付いたヒット曲など、利用者の実体験に基づいた選曲を徹底している。

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