デザインファームNOSIGNER(ノザイナー)代表の太刀川英輔氏が、多言語オーディオガイド・観光DXプラットフォーム「WOUDIO(ウーディオ)」を立ち上げた。初の本格導入先は横浜マリンタワー。背景にあるのは、観光地を単に消費するのではなく、自然や文化を守る経済循環をつくるという構想だ。太刀川氏に、WOUDIOのビジネスモデル、AI活用、インバウンド観光と防災の可能性を聞いた。
観光音声ガイドにとどまらない壮大な構想
「キリンから話しかけられて、サバンナに寄付できるようにしたかったんです」
太刀川氏は「WOUDIO」を構想した原点をそう語る。
WOUDIOは、施設や地域の歴史、文化、景観にまつわる物語を、来訪者のスマートフォンに多言語音声で届けるサービスだ。QRコードを読み込むだけで利用でき、アプリのダウンロードは不要。主要5言語(最大18言語)対応のオーディオサービスを体験できる。管理者はCMSに元原稿を入れることで多言語ガイドが自動生成される。人による編集も可能。
オーディオガイドの提供以外に、入場チケット、音声ガイド付きチケットなどをWOUDIO経由で購入できる販売機能も実装される。またOTA(Online Travel Agent)や旅行代理店など他チャネルとの連携も可能。WOUDIO利用施設同士の送客も予定している。
6月から、WOUDIOを利用した横浜マリンタワーが公式音声ガイド「横浜360°」が開始した。1日券(大人・高校生以上1500円)、無期限券(同2500円)など、入場券とオーディオガイドを組み合わせたチケットとして提供されている
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多機能な観光スーパーアプリだが、太刀川氏が目指しているのは、単なる音声ガイドの効率化でも観光アプリの開発でもない。「自然や文化財、地域の歴史など大事なのに経済の中に取り込まれにくいものに、来訪者が関わる接点をつくることだ」と強調する。
動物園でキリンを見た瞬間にサバンナの保全に寄付できる。水族館で熱帯魚を見た瞬間にサンゴ礁の保全に参加できる。観光地で景色を見た瞬間に、その場所の歴史や文化を知り、守る側に回る。太刀川氏は、そうした体験と支援がつながる仕組みを、以前から構想していたという。
数億円になる多機能システムをAIでスピード開発
ただ、従来の開発手法ではコストが重すぎた。音声ガイド、決済、チケット、地図、防災情報、多言語対応をまとめて開発すれば、数億円規模の投資が必要になる可能性がある。そこで転機になったのがAIだった。
太刀川氏は2025年11月ごろから、自らバックエンドとフロントエンドを学び直し、AIコーディングツールを使ってWOUDIOを開発した。開発はほぼ一人で進めたといい、「まったく誇張なく、2万回ぐらいはビルドし直している」と振り返る。
AIは、WOUDIOの中核にも組み込まれている。原稿生成、翻訳、音声生成、画像や映像生成などで複数のAIを活用する。ただし太刀川氏は「自分たちが開発したのはAIそのものではなく、各AIのハブとなるシステムだ」と強調する。世界中のAIエンジンを目的に応じて組み合わせ、人間が監修しながら観光コンテンツへ落とし込む基盤をつくったという。
太刀川氏は「まずAIに原稿を書かせるが、一語一句直すことができ、読みも修正できる」と説明する。人間が方針を与え、内容や発音を確認・修正することで、AIと人間が協働して音声ガイドを制作する仕組みを構築した。


