欧州を記録的な熱波が襲い、パリでも40℃を超える暑さとなった。エアコン普及率が20%程度にとどまる欧州では需要が急増し、日本メーカーの製品も販売を伸ばしている。フランスなど欧州は、省エネや脱炭素の議論を主導してきた地域でもある一方、これまでは冷房を必要とする場面が少なかったことから、SNSでは「他国に文句言う前にエアコン付けろ」といった投稿も見られる。一方で、日本には「エアコンが普及しているにもかかわらず、熱中症被害が多い」という現実がある。
ワークマン製品開発センターで実施している「ペルチェ半導体冷房服」の体験会。画像は、45℃超の環境で冷房服を着用した際のサーモ画像
内閣府の消費動向調査によると、2025年3月末時点の2人以上世帯におけるルームエアコン普及率は91.7%。100世帯あたりの保有数量は284.3台で、平均すれば1世帯に複数台のエアコンがある計算だ。
それでも、日本では熱中症による被害が続いている。総務省消防庁によると、2025年5月から9月までの熱中症による救急搬送人員は10万510人。2008年の調査開始以降で最多となった。年齢別では65歳以上の高齢者が5万7433人で57.1%を占め、発生場所別では住居が3万8292人、38.1%で最多だった。
東京都23区の死亡例でも、屋内でのリスクが目立つ。2024年夏期に屋内で熱中症により亡くなった291人のうち、エアコンを使用していた人は31人にとどまり、使用していなかった人は185人だった。東京都監察医務院は、屋内で亡くなった人の大半について、設置がない場合や故障の場合も含めて、エアコンが使われていなかったとしている。
欧州では「エアコンがない」ことが課題になった。一方、日本では、エアコンがあっても使われない、暑さを感じにくい、過去の慣習で無理をしてしまうといった課題がある。熱中症対策は、真夏の屋外で水を飲む、冷房をつけるという呼びかけだけでは届きにくい。企業各社は、時期や場面ごとのリスクを具体的に示す発信を進めている。
「梅雨型熱中症」の盲点
意外と見落とされがちなのが、梅雨時期の熱中症だ。湿度が高いと汗が蒸発しにくく、体内に熱がこもりやすいため、気温がそれほど高くなくても熱中症リスクがある。

