公正取引委員会と中小企業庁は6月29日、広告業における「取適法」違反被疑事件の集中調査の結果を公表した。発注側の広告業者と受注側の広告制作業者との中小受託取引を調査し、広告業者に対して71件の指導を行った。指導を受けた広告業者の社名は公表していない。
取適法は、正式には「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」。従来の下請法が改正され、今年1月1日から施行された。発注側と受注側の対等な関係を前提に、中小受託事業者への支払遅延や不当な減額、買いたたきなどを防ぎ、取引の適正化を図る狙いがある。
今回の調査対象は、新聞、雑誌、テレビ、インターネット、交通、屋外広告などの制作に加え、広告に付随するイベントの企画運営に関する取引も含む。公取委と中小企業庁は、口頭発注、支払遅延、無償修正、知的財産権の無償譲渡・許諾などをめぐり、取適法に違反する、または違反するおそれのある行為が複数確認されたとしている。
口頭発注が商慣習に
問題視された行為の一つが、発注内容の不明示や明示不備だ。広告業界では、口頭発注が商慣習となっていることを理由に、発注時に発注内容を書面または電磁的方法で明示していなかった事例が複数あった。
成果物の受領時などに事後的に発注内容を示していた事例もあり、中には、発注時に明示していたように見せるため、発注日をさかのぼって記載していた事例もあった。
広告制作では、修正や校正を重ねながら内容を具体化することが多い。公取委は、広告主の意向などで内容が変わり、修正や校正を求める前提で発注する場合、給付内容を変更する条件などを発注時に明示する必要があるとしている。知的財産権を譲渡・許諾させる場合も、発注時にその旨を明示する必要がある。
請求書の遅れを理由に支払わず
支払いをめぐる問題もあった。「毎月末日納品締切、翌々月末日支払」など、広告制作業者の給付を受領した日から起算して60日を超える可能性がある支払制度を採用していた事例が複数確認された。
広告制作業者からの請求書提出が遅れたことを理由に、支払期日までに代金を支払っていなかった事例もあった。公取委は、請求書提出の有無にかかわらず、給付を受領した日から60日以内で支払期日を定め、期日までに全額を支払う必要があるとしている。
手形で代金を支払っていた広告業者には、取適法に違反しない支払手段に改めるよう指導した。振込手数料についても、広告制作業者との合意の有無にかかわらず、広告業者が負担するよう求めた。
