気負わずに、面白がる。人口600人の村での関わり方〜面白法人カヤックの「手の内をのぞく」其の4〜

毎年好評を博している面白法人カヤックの「おもしろ突破塾」。本講座は多様なコンテンツを生み出すカヤックの7名のクリエイターから、広告企画やデザイン、新規事業、地方創生など7つの領域を通して、企画を世の中に広げるために必要な発想・共創・選択・届け方のすべてを体験できます。

講座を担当する講師が、カヤックのユニークなコンテンツが生まれる「手の内」について、お届けします。

教員を目指しながらも、社会に出ずに教員になることへの違和感をもつ

面白法人カヤックで「地域活性化起業人」をしています、天坂晋です。元々は静岡の教育学部に通い、ずっと教員を目指していました。ですが、社会に出ないまま教員になることにどうしても違和感があって、大学在学中に自分で事業を開始しました。伝統工芸品の仲介やジェラート屋さんなど「これをやりたい」というよりは、コロナ禍でオンライン授業が暇すぎて時間を持て余していたときに「この間に職人さんに会いに行こう」と動いた結果です。

そこで「色々やるのは面白い」「教育以外にも興味があるかもしれない」と気付いたことで、カヤックに入社する方向に。入社の決め手となったのは、自分の「わがまま」を全部受け入れてくれそうな会社だったからです。実はカヤックをあと1年くらいで辞めようかなと考えていたタイミングで、柴田(カヤック執行役員)から「北海道に音威子府村(おといねっぷむら)っていう場所があるけど、どう?」と誘われました。「今しかできない」と思って、音威子府行きを決め、辞めずに4年目を迎えました。

この時、周りの人は僕が北海道に行くことを止めるのではなく「それが本当に僕にとって良いことか」を一緒に考えてくれました。会社にとっては明らかに他の道の方がメリットがあるはずなのに止めない。このカヤックならではの環境は、他の会社では絶対にできないことだと感じています。

気負いすぎずに「面白がる」。村長との対話から生まれるもの

音威子府村では、教育分野で何ができるかを考えて、50代以上が入学できる「主人髙」という学校を、9月21日に開講しました。

講座にも登場してくれる村長の遠藤さんは、本当に「パッションの塊」です。いつも気さくで、道でおばちゃんが迷っていたら何時間でも案内する。元消防士でもあり、村のためにやるべきことに、本気で情熱をかけている方です。講座では「なぜカヤックと街づくりをしているのか」「何を求めているのか」を、村長と対話形式でリアルに話せたらと思っています。

僕は地域の課題を深刻に捉えて「解決しなきゃ」と気負いすぎるのではなく、「どうやったら良い方向に持っていけるか」というアイディアを考えることを楽しんでいる、そんな感覚に近いです。

例えば、音威子府では住宅不足が深刻な課題です。そこで、電気なども含めたエネルギー領域に挑戦したいと考えており、ガス会社さんに「ゼロインフラハウス(水も電気もトイレも全部完結するトレーラーハウス)を、音威子府で実証してくれませんか」と提案しています。実証できれば北海道全域への展開にもつながるので、先方にもメリットがある。こういう「王道じゃないアイデア」で課題と向き合うことが、僕はすごく楽しいし、カヤックらしさも感じています。

9月21日(月・祝)「敬老の日」に開校した50歳以上を対象とした村立学校「主人髙」のロゴ

「123枚の大喜利ポスター」が生まれるまで

もう1つ、音威子府村との取り組みで話題を呼んだのが「123枚の大喜利ポスター」です。カヤックのコピーライター・合田ピエール陽太郎さんが「コピーを書く機会が欲しい」と話していたことから「じゃあ音威子府でポスターを作ってみよう」とスタートしたもので、最初はイベント出展に向けて5枚ほど作ったものでした。けれど、そこから「どこかに掲示したいですね」という話になり、予算が調整できたことで、一気に企画が広がっていきました。ちょうど村が123周年を迎えるタイミングでもあり「123枚作ろう」という結果が生まれたんです。

ポスター作りで実際にやっていたのは、村長や僕がひたすら村の情報を伝え、それをコピーライターが言葉に落とし込んでいく…という作業です。人口600人ほどの小さな村だからこその「みんなが顔見知り」という状況も、視点や言い方を変えて言い換えると非常に面白いコンテンツになるんです。

村の人にとっては当たり前すぎて気づかない日常の風景が、カヤックという外部の目を通すことで価値に変わる。この転換こそが、ポスタープロジェクトの面白さだったと思います。

新宿駅に掲出した開村123周年記念、全123枚の「大喜利ポスター」

村民運動会への参加。関わりのきっかけをつくること

地域の方々と交流する上で大切にしているのが「行事」です。急に村人の家を訪ねても不審者ですし、役場に行っても話す機会がない中「村民運動会(現・音威子府美術工芸高校の生徒たちの運動会)」に地域活性化起業人チームとして参加。障害物競走でビリになってしまいましたが、応援してもらうことができ「あの人たち、村にいるんだ」という認識に繫がりました。

村の人たちを置き去りにしないためにも、どれだけ「あいつら知り合いだよ」と言ってくれる人を増やせるかは、とても大事だと思います。

「自分ごと」の範囲を、もう少し広げてみる

伝えたいのは「自分ごとの範囲を広げる」ことです。家族を「自分ごと」にするのは、多くの人にとって自然にできることだと思います。それをもう少し広げて「地域」という範囲まで自分ごとにできると、人はもっと豊かに生きられるんじゃないかと思っています。

僕は、人は「没頭」と「貢献」ができると楽しく生きられる、と思っています。それが仕事の中にあればすごくいい。でも、定年退職などでそれがなくなると寂しさが生まれてしまう。だから「地域」という範囲で自分にできることを見つけて没頭し、誰かに貢献する実感を得るんです。それができれば「地方創生」というような大それた言葉を使わなくても、単純にすごく、人生が楽しくなります。

村長も、僕よりずっと大きな課題を背負っている人ですが、本当に毎日楽しそうに、土日も関係なく働いています。重いテーマも軽いテーマも、面白がって課題解決に向き合えるということを、ぜひ村長も交えて、一緒に講座でお伝えできればと思います。


「カヤック おもしろ突破塾」は次回、2027年開講予定です。お問い合わせはこちら

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天坂晋

面白法人カヤック
ディレクター

大学で教育学部に入るもビジネスを知らないまま教員になることが嫌で、在学中に伝統工芸品の仲介・期間限定のジェラート店事業を開業。教育以外にもやりたいことがあると知り、面白法人カヤックに入社。話題になるプロモーションの制作に2年間従事。現在は北海道で一番小さい村の音威子府村で、村長とアイデアやコンテンツによる地域づくりを実施中。

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