前編では、アメリカでヨックモックが、長年にわたり、高級百貨店の売り場を獲得していること、そして、アメリカでヨックモックを受け取った人が「どんなブランドなのだろう」と検索したとき、その関心を受け止める公式な場所を持っていない現状について書いた。
では、高級百貨店を中心に限定的な販売を続けることで、ヨックモックのブランド価値は守られてきたのだろうか。現在の流通を見ると、必ずしもそうとは言い切れない。
限定流通を望みながら流通を限定できない
ヨックモックは、誰にも彼にも知られ、安価な大衆商品としてどこにでも並ぶことを望んでいないのだと思う。その姿勢は「静」の美意識とも矛盾しない。問題は、広く知られないことと、自らの存在を示す場所を持たないことが、混同されているように見える点である。
ラグジュアリーブランドは、必ずしも最大多数への認知を目指さない。それでも公式サイトを持ち、歴史、商品、正規取扱店、顧客サービスを自ら管理している。限定性とは、姿を消すことではない。誰と、どこで、どのように接するかを自分で選ぶことである。
いま、ヨックモックの商品はアジア食品のオンラインスーパーWeee!にも数多く掲載されている。販売者を見ると、MiauMall、WOO JAPAN、Shinsaibashi Japanなど複数の第三者が並び、日本から発送される商品もある。YOKU MOKU OF AMERICAが直接卸しているかどうかは確認できないが、少なくとも多くの商品が第三者によって販売されているように見える。
そこでシガールは、Egg Roll、Cigarette Chocolates Rollsなど、公式の商品名とは異なる表現で掲載されている。割引表示のある商品もある。Bergdorf Goodmanでは日本の上質なギフトとして置かれ、別の場所では数多くのアジア食品の一つとして、異なる名称と価格で売られている。
大衆向けに安価に販売したくないという意志があるとしたら、この状況は皮肉である。卸売先として高級店は選んでいても、商品がその後どこへ流れ、どのような言葉と価格で売られるかまでは、十分に管理できていないように見える。
もちろん完全に防ぐことは難しいだろう。しかし、公式英語サイトで正規取扱店、公式の商品名、ブランドの背景を明示すれば、消費者が確認できる基準はつくれる。いまは、ヨックモックが残した空白を、それぞれの販売者が埋めているといった状況なのだろう。