肥満が問題になっているインドで、学校の周辺50メートル以内で脂質や糖質の高い飲食料品の販売を制限する規制が拡大している。人口14億人を超える成長市場で世界から注目を浴びるインドに進出する企業も多い中、インド政府が実施する規則や求める基準への対応が求められている。
インドの全国家族健康調査によると、2005~2006年に実施された調査の結果と2019~2021年の結果を比較すると、男性の肥満率(BMI25%以上の割合)は9.3%から22.9%、女性は12.6%から24.0%と、いずれも肥満率が急激に高まっている。2025年8月にはインド政府が健康増進・啓発プログラムの推進を発表するなど、肥満症は喫緊の課題となっている。
今回の規制では、インド国内の学校約150万校の近辺で、甘い清涼飲料水やハンバーガーなどファストフードの販売が制限されることに。政府としては、低年齢のうちから子どもに不健康な食習慣を避けさせ、企業にも商品の成分の見直しや、健康に良い商品展開を求めたりする狙いがあるとみられる。
成長著しいインドでは、都市部を中心に世界的にも高い水準の賃金上昇・昇給率に。経済格差も大きい中で、海外ブランドの商品を購入することをステータスとみる傾向もあり、ファストフード商品でも海外商品の人気が高まっている。こうした海外製品への憧れもあり、幼い頃からファストフードを口にすることがあるようだ。
また、インド政府は2026年9月、添加した糖分、塩分、飽和脂肪の3項目のうち1項目以上で基準値を超えた食品の包装前面に「赤色警告ラベル」を表示する制度を提案。国内外の食品メーカーは、警告ラベルの有効性に疑問を投げかけたり、「警告ラベルが付けられることで、インドの食品の国際的な評価が損なわれる可能性もある」と反発したりしている。
Unsplash/Praswin Prakashan
インドに限らず世界で子どもの肥満が課題になる中、各国、各企業も広告の規制などの対応を迫られている。2026年1月には、英政府が脂肪や塩分、糖分の多いジャンクフードのテレビ広告を夜9時まで禁止し、オンラインでは全面的に規制する措置をとった。2023年にはスペインがチョコレートやアイスクリームなど健康ではない食品や飲料の子ども向けの広告を禁止した。
企業側も自主的に広告を規制するなど対応している。ユニリーバは2020年、子どもを対象にした飲食料品の広告やプロモーションを中止する方針を明示した。既存メディアでは12歳以下、SNSでは13歳以下に向けた食品広告を出稿せず、子どもの関心を集めるようなアニメキャラやインフルエンサーの起用も廃止している。また、商品も改善し、子ども向けに販売するアイスクリームは「糖質12グラム以下、110カロリー以下」のみとするなど、社会問題の解決に積極的な姿勢をみせている。
世界保健機関(WHO)は2023年、子どもの健康に害を与える飲食料品の広告を規制するためのガイドラインを改訂。子どもにアピールする漫画や製品におもちゃを同梱すること、歌を使った広告、タレントやインフルエンサーなど有名人による推薦は「問題となる広告手法」と指摘している。

