異質なものが交わる「汽水域」を守る 弁護士ドットコム 成長を支える人と組織

弁護士や税理士などのプロフェッショナル領域とテクノロジーを掛け合わせ、事業を拡大してきた弁護士ドットコム。組織が拡大を続ける中で、異なる専門性や価値観が交わる環境をいかに維持するのか。執行役員 CHO/人事本部長の鬼頭伸彰氏に、事業成長を支える組織のあり方と、人事が果たす役割について聞いた。

異質なものが交わる「汽水域」

━━現在の事業環境や今後の成長を踏まえ、弁護士ドットコムにはどのような人材・組織が必要だと考えますか。

当社の特徴として、私はよく「汽水域」をイメージします。海水と淡水が交わる場所です。生態学では、こうした境界領域はどちらの内部よりも生物の多様性が高いことが知られています。

「弁護士」という専門性の高い領域と、スピードや変化を伴う「テクノロジー」の領域は、文脈が大きく異なります。専門領域向けのプロダクトをつくるには、その専門性を深く理解する必要があります。一方、専門家自身がプロダクトをつくるわけではなく、エンジニアにとっても専門領域を理解することは容易ではありません。当社は、そうした異なる世界の間に新しいビジネス領域をつくってきた会社だと言えます。

組織についても同じです。弁護士とエンジニアでは、見ている世界も、良いと考えるものも違う。その違いをなくして、ひとつに混ぜればよいわけではありません。それぞれの専門性や価値観を保ち、ある種の緊張関係がある中で新しい価値を生み出す。それが当社らしい組織のあり方だと思います。

組織拡大で薄れる異質性

━━一方、事業や組織の規模が拡大することで、その「汽水域」を維持する難しさも生じるのでしょうか。

組織が小さいときは、全員が汽水域にいるような状態だったと思います。弁護士、エンジニア、営業がいる。それぞれ価値観が違う人たちが、直接ぶつかりながら仕事をしていました。

ところが、従業員が800人近くなり、事業ごとに組織やオペレーションが整ってくると、自分が汽水域にいること自体を意識しにくくなります。たとえば、ある事業の営業であれば、その事業のKPIを追うことで仕事が完結するようになる。組織として効率化するほど、それぞれの事業の論理だけで動けるようになります。

もちろん、会社が大きくなれば、分業し、オペレーションを整え、効率を高めることは必要です。ただ、私は「綺麗な組織」の中から新しいものは生まれにくいと思っています。整理されていない部分や、偶発的な出会い、異なる考え方との衝突があるから、新しい発想が生まれることもあります。

そのため、事業をまたいだコミュニティや対話の場、研修など、異なる部門の人が接する機会は意識してつくっています。効率だけを考えれば、そうした場はなくてもよいという見方もあるかもしれません。しかし、縦の組織だけが強くなると、会社の中に汽水域がなくなってしまう。立場や価値観の異なる者同士が接し、ときには緊張関係が生まれる環境を残しておくことが重要だと考えています。

次のページ
1 2 3
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事