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コラム

伊藤洋介の「こうすればよかったんだぁ」

CMコンテの調査って必要?

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犬

東京プリンマネージャーが可愛がっている犬…。

記念すべき連載第二回目のはじまり、はじまり……。
って、ちっとも記念じゃないけど、二回目があったことに心からの感謝(笑)。

先日、以前交流のあった某食品メーカーの宣伝部長Y氏と久しぶりに飲みました。氏は10年以上にわたってCM制作に携わっていて、その昔は1クールに一度くらいの割合で情報交換をしていたものです。

で、驚いたのは氏の会社でも、コンテを選ぶ際に調査をするようになったって話。以前は代理店からプレゼンされたアイデアのうち、氏の独断で決められていたのです。

「物が売れない時代になると、何をするにしても会社は明確な理屈を求めてくる。そうすると、調査するしかないんだよな」と肩を落としながら、大して飲めない酒を呷る氏。

「そんなんで、いいもの作れるわけないじゃん」と反論すると、「昔とは時代が違うの。もう伊藤さんはサラリーマンじゃないから、感覚がずれてるんだよ」と逆切れされてしまいました。

コンテに調査……。昔から実施している企業はあるようですが、バカバカしいにも程があります。なんでそんな当たり前のことを、真面目にモノを売ろうとしている人達がわからないんでしょう。町行く人に突然、企画コンテを見せて、その良し悪しなんて判断できるわけがない。

CM制作に携わったことのある人なら誰でもご承知の通り、企画コンテから演出家の力量によって、仕上がる映像は劇的に変化します。

実際、僕も宣伝部に在籍した当初は、その変わりっぷりに何度も驚かされました。もちろん、良いように変わる時も、「うそん!」と思うくらいイメージしていたモノとかけ離れた映像に着地するときもあるんですが……。

そもそもクリエイティブは相対的な比較で生まれるものじゃありません。「調査の結果、A案の支持が70%以上を占めたんで、今回はA案でいきます」なんて、愚かな打ち合わせがなされていることを想像すると、寒気のする思いです。

歌だってそう。映画だって、ドラマだって、写真だってみんなそう。クリエイティブは才能ある人たちの強烈な個性が存分に発揮されてはじめて、それに触れた人に感動を与えるのです。その際、予め一般の声に耳を傾けるなんて、愚かなことはしない。最初から見る人に迎合した作品なんて、視聴者の心を動かすことは絶対にないと思います。当然購買意欲を喚起するはずもありません。

クライアントのトップは自身が選んだ宣伝部員の目とクリエイターのことをもっと信じるべきです。
もちろん、信じた結果外れることだってあるでしょう。
そんな時は、宣伝部員を異動させればいいし、クリエイターにも変わってもらえばいい。

第一、調査には莫大な金がかかります。そんな無駄なお金があるなら、制作費や媒体費に回せばいいのに。そうすれば、もっと良い映像が出来上がって、もっと一杯オンエアできます。

というわけで、書き進めるうちに大人気なく興奮してきたので、今回はこの辺で。

伊藤 洋介『伊藤洋介の「こうすればよかったんだぁ」』バックナンバー