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コラム

楽天大学学長が語る「EC温故知新」

スーパーより2倍高いタマゴがネットで超絶な売れ方をする理由

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いきなりですが、クイズです。

【問】ネットショップを15年ほどやっているタマゴ屋さんがあります。農場で採れた卵を取り扱っていますが、このお店でいま売れ筋の卵パックは「何個入り」でしょうか?

ヤマカン歓迎です!


(考えタイム)


ちっ


ちっ


ちっ


ぼーん!


正解は「卵160個入り」です!

1998年から楽天市場に出店している「筑前飯塚宿 たまご処 卵の庄(らんのしょう)」というお店のことです。

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ページを見ると、「普段使い卵20個、40個、80個、160個」というラインナップが並んでいます。

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20個入り840円なので、1個40円の卵です。スーパーにいけば高めに見積もって10個パック200円としても、2倍の値段です。ちなみに、160個入りだと4725円なので、1個あたり30円くらいになりますが、それでも1.5倍。決して「安いから」という理由ではないことがわかります。業者さんが注文しているからでもないそうです。

では、なぜ160個入りの卵が売れるのでしょうか。

ページをよく見ると、卵のとなりに「小分け用モールドパック8パック262円」なるものが売られています。そう、「おすそ分け」用です。業者さんでもない一般のお客さんが卵を160個買っても消費しきれないので、おすそ分けするのです。

とはいっても、いきなり160個入りが売れ筋になったわけではありません。オープン当初は、20個、40個、80個入りでスタートしました。実店舗では160個入りを取り扱っていましたが、ネットにはアップしませんでした。店長の畠中五恵子(はたなか さえこ)さんは、お客さん像として「都心の一家4人の核家族」をイメージしていたからです。実際、売れ筋は20個と40個で、80個入りもほとんど売れませんでした。

あるとき(1999年)、楽天市場の担当者から「オークション機能ができたので、使ってみませんか」という連絡がきます。畠中さんは「定番商品として扱っている卵をオークションに出すと、それより安く落札される(値崩れする)のでイヤだ」と直感的に思いましたが、「まぁ、せっかくだし、乗ってあげよう」と考え直します。そして、「お祭りのノリで、80個パックとか出品しちゃおう。ふだん40個を買ってくれてるお客さんが、いつもの値段くらいで80個買えちゃった、みたいな感じで盛り上がってもらえたらそれでいい」と考えて、実際に「卵80個入りオークション」を開催しました。

すると、意外にも「80個なりの値段」で落札してくれるお客さんが何人もいました。80個を落札した人は、自然と「おすそ分け」をし始めます。畠中さんのところへ「小分け用のパックはありませんか?」という問い合わせも届くようになりました。そのうち、まったく売れていなかった80個入りの定番商品が、2つ、3つと売れるようになっていきます。

畠中さんの卵は、素人が食べても「これはおいしい」と違いがわかるくらいの品質なので、おそらく、おすそ分けした人が「またほしいので買ってもらえないか」と頼まれるようになるのでしょう。いつしか、その人が「みんなの注文を取りまとめて代表で買う人」という位置づけになっていき……というような展開で、80個入りを買っても配り切れる「卵おすそ分けコミュニティ」ができあがっていくわけです。
その結果、「次のオークションまで待てないから」と80個入りの定番商品が売れるようになるわけです。その80個コミュニティがさらに広がりをみせていき、ついには「160個クラスのおすそ分け力(!?)を持つコミュニティ」が全国のいろんなところにできていった、というのが「卵160個が売れ筋になる理由」だと考えられそうです。
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