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YouTubeの新機能「カード」がもたらすマーケティングコミュニケーションの変化とは?

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3月17日、YouTubeは「カード」という新しい機能を追加した。これは、再生中の動画の上に情報をカード形式で表示する機能で、承認された外部サイトのURLをリンク先として使用できることから、クラウドファンディングなどによる資金調達としても活用できるようになった。最近では、ソニーが社名を隠して新製品のプロジェクトを登場させるなど、大手企業のマーケティングとしてもクラウドファンディングに注目が集まっている。今回の「カード」機能はクラウドファンディングにどのような変化をもたらすのか。また、クラウドファンディングは企業のマーケティングコミュニケーションにどのような影響を与えるのだろうか?

YouTubeからプロジェクト紹介サイトへの誘導が可能に

「今回のカード機能によって、クラウドファンディングのプロジェクトオーナーは、より直接的に生活者に参加を呼びかけることができるようになりました」と話すのは、クラウドファンディング型ECサイトの「kibidango(きびだんご)」を運営する、きびだんご 代表取締役の松崎良太氏。同社のkibidangoは、今回のカード機能で、投稿動画からのリンク可能先としてYouTubeが承認するクラウドファンディングサービスとして、国内で初めて登録されている。

きびだんご 代表取締役 松崎良太氏
慶應義塾大学経済学部卒業。コーネル大学経営学修士(MBA)。日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)を経て、2000年に楽天に入社。社長室長、経営企画室長などを歴任後、ボストンに拠点を移し、Rakuten USAで2009年まで勤務。その後 執行役員ネットマーケティング事業長 兼 事業企画・調査部長を経て2011年に独立。13年2月にきびだんご株式会社を設立。14年3月より「kibidango(きびだんご)」をスタート。

これまでも、YouTubeの動画内にリンクを貼れる「アノテーション」という機能はあった。しかしこの機能では、YouTubeにアップした動画から誘導できるのは、あくまで事前に登録したドメインの自社のサイトのみ。
したがって、クラウドファンディング中の自社プロジェクトを応援してもらおうとYouTubeにビデオをアップしても、プロジェクトの支援を募るページは自社ドメインのサイトではなくクラウドファンディングサービスを行う外部サイトなので、直接リンクすることができなかった。つまり、一度自社のページにリンクさせて、そこからさらに、プロジェクトのページに飛ばす必要があったのだ。

そうすると、プロジェクト参加までに動画→自社サイト→プロジェクト応援ページと、プロジェクト応援までのステップが増えて、その間で離脱してしまう可能性が高くなるという課題があった。
しかし、今回のカード機能の場合、自社のサイトではなくても、選定されたクラウドファンディング事業者でプロジェクトを公開している場合は、プロジェクト支援のページに直接リンクさせることができるようになった。それに加えて、アノテーションはPC上でしか表示されなかったが、カードの場合は、モバイルアプリからのアクセスでも表示される。
松崎氏は「これによって、興味関心が高まった場面を逃さずにプロジェクト支援のページに行ってもらえるようになり、離脱を防ぐことができます。また、スマートフォンからのアクセス比率がますます高まることが予想されるだけに、プロジェクトの支援をより得やすくなると思います」と、今回のカード機能がクラウドファンディングに与える影響について話す。

カード機能を取り入れたkibidangoに上がっているプロジェクトのPR動画。動画の再生中に、投稿者が予め設定したタイミングで通知が表示される(左)通知をクリックすると、詳細情報が表示され。このリンクをクリックすると、プロジェクトのページへと遷移する(右)。

また、カード機能によって、プロジェクトオーナーだけでなく、それを応援する人もより支援しやすくなるという。これまでは、プロジェクトページのリンクをSNSなどで拡散するといった支援が多かったが、それにとどまらない支援が可能となる。例えば、「私はこのプロジェクトを応援しています」という動画を支援者自身が作成し、そこにカード機能を使って、プロジェクト支援のページに直接誘導することができるようになるのだ。

実際、上記に近いことが、kibidango上にある「猫もぐらたたきBOX」プロジェクトで行われている。

「猫もぐらたたきBOX」のプロジェクトページ。原型を応募した100人に配布。猫が遊んでいる動画を送ってもらい、プロジェクトオーナーがその動画にカードを挿入してYouTubeにアップ。支援を促すさまざまな動画がアップされる仕組み。

これは、小さな穴が複数開いている段ボールの箱に手を入れて、その穴から指を出すと、猫がもぐらたたきのようなしぐさをするという、猫と遊ぶツールの商品化プロジェクト。プロジェクトオーナーは、プロジェクト紹介の動画にある「商品の原型」を100個作成し、希望者100人にまず配布した。配布の条件は猫を飼っていることと、この原型で猫が遊んでいる動画を撮影してプロジェクトオーナーに送ること。そうして送られてきた動画にプロジェクトオーナーが「カード」を挿入して、YouTubeにアップ。kibidangoのプロジェクト紹介ページにも動画へのリンクを貼っている。
こうすることで、商品が出来上がったら猫がどんな反応がするのか分かるとともに、プロジェクト支援のサイトにリンクしている動画がYouTube上にたくさんアップされている状態を作り出したのだ。

「今回の場合は、プロジェクトオーナーが動画を預かって、そこにカードを入れていますが、今後カードが普及して使いこなす人が増えてくると、プロジェクトの支援者が自ら撮影した動画にカードを入れてプロジェクトへの支援を呼びかけることが考えられます」(松崎氏)。

現在、まだスタートしたばかりなのでカードが支援につながったかどうかの効果は不明とのことだが、今後詳しく検証していきたいという。

次ページ 「「お客さま」ではなくプロジェクトの「パートナー」」へ続く