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コラム

PRの現実と理想の狭間でー業界歴23年、PRパーソンの試行錯誤ー

パブリック・リレーションズ発想の時代が到来した!――狭くて、間違ったPRはもったいない!?

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みなさん、はじめまして。

悩めるPRパーソン、赤坂幸正です。現在、インテグレートというIMC(統合型マーケティング)を専門とするマーケティング会社でPRセクションのマネージャーをしています。

僕は1992年にPR会社に入社し、マーケティングPR一筋にキャリアを積んできました。かれこれ、PRパーソン歴も23年を迎えます。この間、世相やメディア環境が大きく変化し、それに伴ってPRというコミュニケーション手法も大きな変化を遂げてきました。

長らくマーケティング・コミュニケーションに携わって仕事をしてきましたが、そのほとんどの日々が苦悩と苦闘の連続でした。日々変わりゆく情報環境の中で、試行錯誤を積み重ねた23年間と言えるでしょう。

その一方で、もしかしたら、この20年間以上にわたり、試行錯誤した自分の経験、知見が、マーケティング業界やコミュニケーション業界の方々に多少なりともお役に立てるのかもしれないと思い、このコラムを始めさせていただくことになりました。

僕はPR人生において「どうしたら売りにつながるか」をずっと考えてきました。モノを売る、人を集める集客装置として、PRをマーケティングに活用できないものなのか、本当にマニアックなほどに考え続けながら、実践を繰り返してきたとも言えるでしょう。

実は、会社に入った最初の5年間くらいは、とにかくメディアに大きく取り上げられることばかり考えていたのですが、それが実現したにも関わらず売上げに直結しないことも多く経験しました。そんな現実を目の当たりにするたびに、PRでは売りにつなげることは出来ないのだろうかと悩むようになったのです。

戦略PRに脚光で、変わり始めた仕事

しかし2000年頃から、食品の健康機能系PRに携わる機会が増え始めて、この考えは変わっていきました。当時は、テレビの健康情報番組を中心に、情報番組や報道番組でも健康コーナーがあり、女性誌などの雑誌や一般の新聞でも、健康情報が見出しに躍り、花盛りの状況でした。

僕は、当時自分なりに食品を「健康」や「美容」といった機能軸で売るための方法を考え、実践していました。

公共性を重んじるメディアがなかなか取り上げづらい特定の商品自体のPRではなく、商品の上位レイヤーである、食品や成分などのカテゴリーを主役にして「ストーリー」を設計するというアプローチです。

ここで言うストーリーとは、テレビや新聞、雑誌などメディアの企画特集になりうる起承転結をもった物語という意味で捉えていただければ結構です。ストーリー設計で重要なのが「課題」と「解決」をセットにしたシンプルで明確な構造で、起承転結のある物語を構成することです。

製品カテゴリーや成分を主役にした「解決」策の前に、メディアが取り上げる必然性があり、そしてその先にいる消費者が自分事として捉える「課題」の設定が重要になります。

こうした構造のなかで、メディアに提供できるコンテンツを、①課題を提示するパート=食品や成分が必要な背景に関するコンテンツ ②課題解決の根拠を提示するパート=成分の機能効能エビデンス ③具体的な解決策を提示するパート=食品や成分の摂り方(使い方)の3つのストーリー要素で構築し、メディアが実際に取材できるようなスポークスマンや場所、モノなどのコンテンツをあらかじめ準備しておく。

製品自体の直接のPRでは無く、課題設定とカテゴリーによる解決策のストーリーをPRによって波及させ、最終的に商品そのものも売れたという成功を幾度となく体験をすることができました。

このカテゴリーPRという方法論は、いくつかの先進的なPR会社でも同時期に取入れられ2009年には書籍なども出版され、「戦略PR」という手法がマーケティング・コミュニケーション業界で一躍注目の的になりました。

僕の会社にも食品や健康だけでなく、自動車や携帯電話、住宅開発、生活雑貨など、さまざまなジャンルの相談や依頼が来るようになりました。

この頃から広告がさらに効きにくくなったと言われはじめ、広告に関心を持ってもらう、広告が効くためのきっかけづくりとして、PRで話題づくりを行いたいという意向が強くなってきたように思います。

広告とPRで役割分担を行い、それぞれの得意な話法を上手く掛け合わせて、その商品やブランドが売れる情報環境をつくっていきました。マスCMとPRをうまく連携してキャンペーンを展開したいというフレームのプロジェクトにも数多くお声かけをいただき、成功事例になるような経験も少なからずさせていただきました。

次ページ 「カテゴリーPRは、もう効かない!?」に続く