メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×
コラム

PRの現実と理想の狭間でー業界歴23年、PRパーソンの試行錯誤ー

パブリック・リレーションズ発想の時代が到来した!――狭くて、間違ったPRはもったいない!?

share

カテゴリーPRは、もう効かない!?

そんな中、「また潮目が変わってきたかな?」と思う時期が何年か後に訪れました。

それは、ある機能性タオルのマーケティングを担当した時です。有名タレントを使って製品広告や店頭ツールなどでアピールしていたのですが、広告だけでは、そのタオルをわざわざ買う動機づけが出来ず、苦戦をしていました。

そこで、PRの手法を使い、「今年は猛暑なので、カラダを絶えず冷すことが夏バテや熱中症予防のためには必要だ」というメッセージをメディアに取り上げてもらうことで、消費者に課題意識を持ってもらおうと考えました。

しかし、結果として10を超えるテレビ番組に取り上げられ、訴求したメッセージは話題になったものの、当初の思惑だった爆発的なヒットにはつながらなかったのです。

確かに「課題・解決」というシンプルな構造でメッセージは訴求できたものの、消費者を動かすまでには至らなかった、その理由を探ることがとても重要だと思い始めました。

同じくらいの時期から、カテゴリーは話題になったが、なかなか商品やブランドの売りにつながらなかったという話を、色々なところから聞くようになりました。

もしかしたら、読者の方のなかにもこのような経験をしたことで、この頃やっぱりPRはダメだと思ってしまった人もいるかもしれません。メディア環境が変化したことによって、PRが機能しなくなったから、売りにつながらなくなったのでしょうか?そもそも広告とPRの役割分担がうまくいかなくなったのでしょうか?

僕はPRが機能しなくなったとは思いません。ただ、PRを売りにつなげるための使い方が大きく変わってきたのだと考えています。

「PRで気づかせて、広告で刈り取る」というフレームで以前ほど効果が出なくなった背景には、ソーシャルネットワークやスマートフォンが普及し、消費者を取り巻く情報環境がさらに大きく変化していることがあげられます。

世の中に流通する情報量の増加は留まるところを知らず、可処分時間の多くがソーシャルメディアやキュレーションメディアなどのアーンドメディアに使われているという現状では、消費者の頭の中で、PRで訴求した課題やメッセージと広告による商品訴求が、伝わりにくく、ブリッジがかからなくなっているのだと思います。

そこで必要とされるのが、ブランド/商品の持つメッセージと密接につながった形のアーンドメディアでのコンテンツです。

相手の立場になって情報を伝播させていく

昔から日本では、「PRという手法は第三者性が大切で、特定の企業ブランド/商品情報を露出することは難しい」と言われてきました。

しかし、読者や視聴者が「面白い」「興味がある」と思うものや、すでに流行しているものなど、読者や視聴者にとって有益だと判断した情報に関して、メディアは具体的な商品名も含めて日々数多く取り上げているということも事実です。

「消費者の興味関心をひくもの」と「ブランドメッセージ」の両側面を持ったコンテンツをつくっていくことがこれからのマーケティングPRにおいて非常に重要なことだと思いますし、PRパーソンこそがそれを実現できると信じています。

PRの正式名称は、「パブリック・リレーションズ」です。「パブリック・リレーションズ」とは、単なる情報露出の手法に留まらず、団体だろうと商品だろうと、様々なステークホルダーと長期的に関係性を結んでいき、相手の立場に立ちながら情報を伝播させていく思想であり、これこそが本来のPRの役割だと思っています。

「課題・解決」のストーリーが本当に消費者のニーズに対応しているのか、消費者インサイトにささっているのかを検証し、商品やブランドがお客様や営業先や取り組み先などとwin・winの関係性をつくっていくためのシナリオとそれを共有するコンテンツを作り上げていく。今まさに、パブリック・リレーションズ発想でマーケティングやコミュニケーションを組み立てることが求められているのです。

実際に、これまでもこのような発想でBtoB事業を展開している企業含め様々なタイプのプロジェクトをお手伝いさせていただいてきました。

また、最近では広告業界の第一線で活躍する著名な方々からも、これからはPR発想、パブリック・リレーションズ発想が重要になってきていると言われる事も増えてきていて、まさに、僕もそんな時代がいよいよ来たのだなぁとワクワクしながらも、現実的には相変わらず日々苦闘し続けています。

この連載を通じて、PRがどのようにこれからのマーケティングに寄与していくのかを考えていきたいと思います。

それでは、次回以降、よろしくお願いします