広告ブロックアプリ登場による脅威
アップルが最新OS「iOS9」を発表した際に、Webブラウザの「サファリ」で広告ブロックを可能にするアプリが使用可能になったことが話題になりました。というのも、すぐさま広告ブロックのアプリが有料人気アプリランキングのトップに並び、この影響が今後も大きくなることへの懸念やその意義についての議論が巻き起こったからです。
もちろんこの広告ブロックアプリが有効なのは、アップルのモバイルブラウザの「サファリ」のみですので、その影響力はまだ小さいという意見もあります。ただ、グーグルのアドセンス広告を簡単にブロックできるこのアプリは、こうした広告を収入源にするサイトにとっては大きなマイナスです。
このことをアップルの政治的な意図と捉えて、「アップルがWeb広告を殺すことでグーグルに打撃を与えようとしている」という過激な意見も見られます。一方で、この広告ブロックアプリが人気であることを冷静に受け止め、「広告が嫌悪されている事実」について、広告主やデジタル広告配信側にも責任の一端があると考える見方もあるようです。
アップルがこのアプリをなぜ容認したのかという理由はわかりませんが、マーケターにとっての脅威と言えるいくつかの課題をこの問題は含んでいます。
Viewability、Ad Fraudという課題
広告ブロック機能については、このモバイルアプリが初めてではありません。この少し前にアドビによって発表された調査結果を見ると、ソフトウェアによってWebブラウザ上の広告ブロックを使用するユーザーは急速に増加しており、そこで失われた損失は無視できないほど大きいものになっています。同時に、現在デジタルマーケティングのカンファレンスでは、デジタル広告が機能しているかどうか、という議論として、実際に「見られているかどうか」「適切な場所に掲載されているかどうか」といった課題が出ています。
「Viewability」は、文字どおり広告が配信され表示されているだけでなく、スクリーン上で「見られているかどうか」という問題です。一方で、「Ad Fraud」は広告詐欺という意味ですが、これはいわゆるノンヒューマントラフィックのようなボットによる偽クリックなどの問題です。
このような議論は広告ブロックと同様に、デジタルマーケティングの可能性がポジティブな観点から語られてきたこととは逆に、特にマーケターの観点からすると頭の痛い課題です。デジタルテクノロジーにより追跡可能で計測可能なデジタル広告は、同時にテクノロジーによって起こりうる別の問題を解決する必要に迫られるという事態に陥っています。
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