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世界でもっとも倫理的(エシカル)な会社とは(3)

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【連載】

エシスフィア・インスティチュート/「誠実な企業」賞

企業の倫理を顕彰する日本で行われている賞としては「誠実な企業」賞-Integrity Awardがある。3月22日、東証ホールで受賞式が行われ、次の3社が受賞した。

最優秀賞 オムロン
優秀賞  三井物産
優秀賞  ベネッセ

※最優秀賞を受賞したオムロンのプレスリリースはこちら

評価のポイントはトップの取組みとマネジメントシステム

このアワードを開催するインテグレックスによると、その目的は、「企業経営の誠実さの重要性を示していくとともに、企業の社会的責任を重視した誠実な経営が中長期的に見て市場で高い競争力を持つことを評価しつつ、こうした意識の高い企業を社会的に応援すること」。インテグレックスが2011年下期に全上場企業3600社を対象に行う「企業の誠実さ・透明性(倫理性・社会性)調査」の結果を基に推薦された企業を、審議会で審議する。長友英資(ENアソシエイツ代表取締役)を委員長とし、高橋弘幸(日本監査役協会顧問)など、会計や法律の専門家9人の審議会メンバーが審議を行い、受賞企業を決定する。

選出のポイントは、次の5つ。

  • トップマネジメントのコミットメントが高い。
  • 企業理念の浸透と推進に熱心に取組んでいる。
  • トップ自らが発信をし、社内の意識の共有と向上に努めている。
  • 企業のインテグリティを支えるマネジメントシステムが構築されている。
  • 事業活動の中で、企業の社会的責任を果たしている。

企業会計に関する業績も表彰

本アワードでは同時に特別賞として(1)会計人奨励賞、(2)経営者会計大賞、(3)会計人特別賞を表彰している。その受賞者と賞の内容はそれぞれ次の通り。

会計人奨励賞:小賀坂敦(企業会計基準委員会(ASBJ)主席研究員)、磯山友幸(ジャーナリスト)
[内容]幅広く会計業務に邁進し、わが国会計社会の発展に貢献した者、会計監査関連業務やそれらの役割についての広報活動に貢献した者に授与される。
経営者会計大賞: 内藤晴夫(エーザイCEO)
[内容]会計の役割を正しく認識し、自身の業務を通じてわが国会計社会の発展に向けて貢献している者に授与される。
会計人特別賞:西川郁生(企業会計基準委員会(ASBJ)委員長
[内容]わが国会計基準の開発に多大な貢献があった者に授与される。

「誠実な企業」賞、2002年からの11年の歩みと曲折

本アワードは、2002年に創設されており、2007年に創設されたWMEと比べると歴史が古い。しかし、世界でもっとも倫理的な会社(WME)はアメリカを中心にしているが、“世界”と銘打っており、少数とはいえ外資も表彰しているのと比べると、「誠実な企業」賞は内容の説明から「わが国」が並び“ドメスティック”感が目立ち、グローバル競争時代に乗り遅れている感が否めない。

もっとも最優秀賞を受賞したオムロンの作田久男会長は、講演で「会長の私と副会長がグローバル拠点を順次訪問し、現地幹部社員と少人数単位でオムロンが大切にする企業理念の価値観について中身の濃いディスカッションを行い、お互いの認識を確認しています。今年の夏までに、企業理念に関するディスカッションの回数は海外中心に約40回を予定しています」とグローバルを強調している。

もうひとつ、「誠実な企業」賞の歩みには、褒められない紆余曲折もあることを指摘しておきたい。第1回大賞を受賞した三菱地所が、受賞後に宅地建物取引業法違反(重要事実の不告知)の容疑で書類送検されたことだ(2005年)。不正の内容は「大阪アメニティパークの分譲マンション販売に際して、土壌汚染の事実を顧客に告げずに販売していたこと」で、三菱マテリアル、大林組などの共同事業者との“共犯”だった。「ばれなければいい」という思惑が浮かび上がる不誠実なものであったため、賞そのものへの批判も起きた。

こうした批判を受けて、 2008年から2011年の4年間は「日本内部統制大賞―Integrity Award」として表彰が行われてきたが、2012年には「誠実な企業」賞に戻ったのである。

「誠実な企業」賞をみてみると、グローバル競争における日本企業の立ち遅れ、そして、透明性の低さとコンプライアンスの弱さが浮き彫りになる。過去に起きた、あるひとつの事例が、取組みそのものの価値を否定したり、ほかの受賞企業の名を汚したりするものではない。ただ、いまのままでは、企業のコンプライアンスの推進やグローバルな競争力の強化には物足りない。

では、WMEに倣えばいいかといえば、こちらもソーシャルメディア上では「イーベイ(eBay)が受賞するなんて、このアワードはまったく常軌を逸している(以下略)」といった、手厳しい批判も寄せられている。

ソーシャルメディア時代、栄えあるアワードを受賞する一方で、企業への批判はあらゆるところから噴出する。では、いったいどうすれば、企業は競争力のある「誠実な企業」になれるのだろうか。

そのヒントを受賞企業に聞いてみたい。

人間会議2012年夏号(6月5日発売)「経営トップが語る CSRから持続可能なビジネスモデルへ」に掲載予定です。

【連載】

【バックナンバーはこちら】
『環境会議2011年秋号』 大八木成男(帝人CEO) 河合正矩(日本通運会長)
『人間会議2011年冬号』 市川 晃(住友林業社長)  谷口裕昭(NTTスマイルエナジー社長)
『環境会議2012年春号』 藤井康照(パナホーム社長) 安斎富太郎(SAPジャパン社長)

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