メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×

ヨーグルトからウインナーまで…栃木の「レモン牛乳」ブランドで派生商品~地域から全国へ広がる企業のマーケティング<後編>

share

4月15日号「宣伝会議」の巻頭特集は、「今、“地元消費”を捉える」。地元で愛され、地元に住む人々の消費を喚起しているショッピングモール、地域で人気を集め全国に進出した商品・企業を多数紹介しています。

後編では、前編で紹介した名古屋の「コメダ珈琲」、高知の「ほにや」に続き、「かんてんぱぱ」で知られる寒天メーカーの伊那食品工業(長野)、「レモン牛乳」を製造する栃木乳業(栃木)の取り組みをダイジェストでお伝えします。

前編記事:名古屋発「コメダ珈琲店」はなぜ、全国で愛されるのか?~地域から全国へ広がる企業のマーケティング<前編>はこちら

「かんてんぱぱガーデン」に年間35万人が訪れる理由

「社員の幸せこそ第一」「利益は手段であり目的ではない」「会社を安定させ、永続させることこそが価値」――長野県伊那市に本社を置く伊那食品工業は、“自然体”の経営で48年間、増収増益を続けてきた寒天メーカーだ。

スープ用糸寒天100g パオパオ杏仁
家庭用製品「かんてんぱぱ」ブランドは1980年に生まれた

代表取締役会長の塚越寛氏は講演や出版活動により自身が考える中小企業のあるべき姿を発信し続け、トヨタ自動車など大手企業の経営陣向けの講演に招かれることもある。2011年には「旭日小綬章」を授与されたほか、50万部のベストセラーとなった書籍『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)でも取り上げられ話題となった。

歩道橋
3万坪の敷地を誇る「かんてんぱぱガーデン」は観光客や
地域の人々に開放されている

地元への貢献にも力を入れており、本社周辺の3万坪もの敷地を「かんてんぱぱガーデン」として地域の人々や観光客に開放している。1988年に環境整備を始めたもので、自然に囲まれた美術館やレストランを併設。今では年間35 万人が訪れる。ちなみに「かんてんぱぱ」とは、同社が1980年から扱っている家庭向けかんてん商品のブランド名だ。

塚越会長は「地域密着という戦略は中小企業にとって非常に重要」としながらも、「地域戦略やマーケティングは、企業の正しい理念なしには成立しない。社員を大事に、地域を大事に、正しいことを続けていればファンが増え、自然と愛される会社になる」と強調する。

このような考えのもと、社員は毎朝始業前に30分かけて施設内を掃除する。周辺道路の美化や交通安全対策にも取り組み、同社が独自に設置した歩道橋もある。全国7カ所にある支店や営業所でも、その姿勢は変わらない。例えば東京支店の向かいにある公園の花壇やトイレの美化のほか、福岡営業所では自社敷地内にバス停の待合所を設置した。

「いい会社をつくる」という揺ぎない同社の経営理念があるからこそ、地域で愛され、全国区で愛される企業へと成長しているのだろう。

戦後から愛されてきたロングセラー「レモン牛乳」

関東・栃木レモン500ml
2004年、関東牛乳から栃木乳業がブランドを
継承した

「レモン牛乳」といえば栃木県民なら知らない人はいないほど、県内ではよく知られた甘いレモン色の乳飲料である。レモンの絵が描かれたパッケージがおなじみで、宇都宮市内を中心に、学校の売店や行事の際に販売されていた。「子どものころ、運動会で買ってもらうのが楽しみだった」と幼少時の記憶を懐かしむファンも多い。

現在は栃木市に本社を置く栃木乳業が製造・販売しているが、実は最初に売り出したのは宇都宮市の関東牛乳という別のメーカー。戦後間もないころ、甘いものが貴重な時代に「関東レモン牛乳」として発売したのが始まりである。

ところが2004年に関東乳業が後継者不足などで廃業となり、レモン牛乳がなくなるのを惜しむ県民からの声も多かったことから、同年10月に栃木乳業が製法を継承し現在に至る。「栃木では60年以上親しまれてきた商品。大人には子どものころの楽しい思い出とともに、子どもには新鮮な味として老若男女問わず長く飲み継がれている」と話すのは栃木乳業の浅野恵一氏だ。

レモン牛乳がテレビや新聞、雑誌などでも度々紹介され、その名が全国に知れ渡ったのは3~4年前のことだ。背景には、B級グルメや栃木出身の芸人の人気拡大といった「ご当地ネタ」の盛り上がりがある。「B級グルメブームとともに、栃木県内のみで販売されている商品として県外からの問い合わせが多数来るようになった。2年ほど前には、栃木出身のお笑いコンビ“U字工事”さんがテレビのネタに使ったことから一気に知名度が上がった」。

同時に販路も拡大し、従来販売していた県内のスーパー、コンビニエンスストア、高速道路のサービスエリア、道の駅などでも扱われるように。さらに売上は一時、3~4倍に増加したが、現在は少し落ち着いている。また以前は賞味期限が短いことから県外には送付していなかったが、注文依頼が殺到したため、2009年にはインターネットや電話、FAXでの注文による県外流通もスタート。さらに首都圏や大手スーパーでは東北・東海・関西方面の一部でも販売されるようになった。

関東・栃木レモンヨーグルト90g
牛乳よりも賞味期限が長いヨーグルトで、県
外の消費者にアピール

現在ではレモン牛乳ブランドを活かした、派生商品も生まれている。その一つが「レモン牛乳ヨーグルト」だ。牛乳よりも賞味期限が長いため、県外の消費者にも広くレモン牛乳を知ってもらおうと製造を開始した。

また県下の企業とのコラボレーション商品も多数登場している。ストラップなどのグッズのほか、シュークリーム(セブン-イレブン限定)、アイスクリーム(フタバ食品)、おまんじゅう(すずらん本舗)といったお菓子だけでなく「レモン牛乳ウインナー」「レモン牛乳クリームソースハンバーグ」(滝沢ハム)といった変わり種まで生まれたほどだ。

栃木乳業では経営理念とともに、「文化・環境・教育といった面においても、広く地域社会の活性化に取り組み、地域社会に必要とされる会社になる」といった方針を掲げている。地元で愛され、製法もブランドも継承した背景にもこのような思いが込められているのだろう。

前編記事はこちら