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ソーシャルマーケティングに活かす「大学リレー熟議」(1)

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私立大学初!「熟議2012 in 明治大学」
熟議でわかった「みんなの意見」は案外正しい*1

大学リレー熟議

地域活性化をテーマにした私立大学初の「大学リレー熟議」に、地域や立場を超えてさまざまな人々が集まった。

私立大学で初めての熟議が、去る3月31日、「地域の活性化について考える~地域との協働~』をテーマに明治大学で開催された。地域活性化は、ここ数年明治大学が社会連携事業として力を入れてきた活動で、大学は社会人の学びなおしや生涯学習のプログラムを提供、自治体は都心の大学に学びと研究・実践の場を提供することで連携を強化していく。今後は、地域の実態とニーズに合ったまちづくりに落とし込んでいくことが課題となる。地域との交流を踏まえた「熟議」は、これからの地域デザインのヒントとなりそうだ。

*1 『「みんなの意見」は案外正しい』(角川書店、2006年刊)

活気ある議論に欠かせないアイスブレーク

「みなさん、立ちあがって上着を脱いで、隣の人と握手しながら自己紹介をしてください。グループの全員との自己紹介が終わったら座ってください」

明治大学の平山満紀・准教授の呼びかけに、一瞬どぎまぎする参加者たち。しかし、最初の数人が立ちあがって握手を始めると、あっと言う間に60人の参加者が握手を交わしはじめ、会場は一気に活気づいた。初対面の人と話すのが苦手といわれる日本人だが、アイスブレーキングの基本的な手法を取り入れただけで、対話や議論の雰囲気が整う。

私立大学で初めての「熟議」が、明治大学駿河台キャンパスの「アカデミーコモン」の会議室で行われた。文部科学省と大学との共催により2011年度にスタートした「大学リレー熟議」は、正式名を「地域と共生する大学づくりのための全国縦断熟議」という。

これまで国立大学で行われてきたが、今年からいよいよ私立大学にも広がる*2。年度末の3月31日、最後の土曜日の開催とあって、参加者の顔ぶれも読みにくいなか、どんな議論が展開されるのか、期待と不安のなかでの幕開けだったが、ふたを開けてみると、さまざまな地域から自治体職員や経営者、学生など、さまざまな立場の人たちが参加していた。新潟県や山形県など遠方からやってきた人も多く、地域の現状や活性化の方法について、意見交換の場を求めていたことがうかがえる。

*2 今年度の大学リレー熟議は6/23(土)青森中央学院大学、6/30(土)広島修道大学、7/1(日)兵庫大学、7/7(土)富山大学での開催が予定されている。

地域活性化に大学の知財を活かす

開会のあいさつでは、文科省・生涯学習政策局から大学リレー熟議の狙いやこれまでの歩みについての紹介があり、続いて明治大学からは、社会連携機構についての紹介が行われた。明治大学では、2010年10月に社会連携機構を創設し、年間400講座を開講してきた。毎年2万人を超える市民が学ぶ生涯学習拠点「リバティアカデミー」や、全国各地の自治体と連携した地域再生事業も展開している。

福宮賢一副学長・社会連携機構長(現学長)

大学が地域の課題解決に取組む意義について話す福宮賢一副学長・社会連携機構長(現学長)。

社会連携機構長を務めてきた福宮賢一副学長(現学長)は、「地域の少子高齢化対策の一環として、自治体や地場産業などと連携しながら、地域の生涯学習機能を補完することは、大学が社会において担うべき重要な役割と位置付けて取組んできました。少子高齢化というと高齢者を社会が支える話になりがちですが、知的な高齢者が増えている今日においては、高齢者の知恵を社会に活かしていくことが重要であることがわかってきました」と述べた。明治大学は、「大学の知財を社会に還元していくことが重要と考え、率先して取り組んできた」という。

熟議は集団が自律的に発展する仕組み

今回の熟議は、地域活性化を大きな枠組みとして被災地の復興、地域のブランド・デザインなど、個別のテーマが設定され、参加者が日頃取組んでいる内容に基づいて8つのグループで議論が行われた。

最初に、ファシリテーターから熟議の解説や進め方についての説明が行われた。「熟議」は、「だんだんものごとを柔らかくしていくこと」「ほどよく食べごろになる」までみんなで考えて意見を交わすこととのことだ。

約4時間の議論の前半は自己紹介と、課題の洗い出し、休憩をはさんで後半は論点に関する意見交換と整理・まとめ、最後にA4×2枚にまとめた内容を1グループ5分の持ち時間で発表する。

議論を盛り上げていくうえで参加者が意識を共有することは重要だ。また、広い会場の前方の演台と後方のプロジェクター、両方を活用したことで、動きが生まれたことも全体を活気づけるうえでプラスに機能した。意識の共有、アイスブレーク、身体を動かすなど、基本的な要素を押さえることで場の雰囲気がよくなり、自律的に議論の質が高まっていく。今後の熟議の発展には精緻な場の分析や議論を成果に結び付ける技術的な試行錯誤も必要といえそうだ。

※続きは『人間会議』2012年夏号(6月5日発売)連載「Real Jukugi Report」特集でお読みいただけます。ご購入はこちらから。

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