コラム

最新米国小売業からプロモーションをハカる。

だれがShowrooming(ショールーミング)を行うのか?

share

Showrooming(ショールーミング)は、日本ではまだ余り聞きなれない言葉です。意味は、商品の購入を検討する際に、リアル店舗で商品を確かめ、その店舗では買わずにオンライン・ショップで購入する様子のこと。名前は聞き慣れなくても、日本での購買行動においても商品によっては既に多くのケースが見られます。買い物客の視点で捉えると「同じ商品であれば、より安く」の声が当然あがりますが、このショールーミングは、店舗を持つリテールやそこで取引を行うメーカーにとって大きな問題です。今回は、これをテーマにします。

米国におけるスマートフォンの普及率

米国の調査会社(コムスコア)が、次の様な結果を発表しました。米国の携帯電話に占めるスマートフォンの普及率は45.6%(2012年3月)人口にすると約1億670万人。日本の総人口の約8割に近い数です。また、リアル店舗で商品を確かめてから別のオンラインストアで買い物(ショールーミング)をすることについては、35%の人が行っているとのこと。また、年代別で最も多く行っているのは25~34歳、またもうひとつ注目するデータは、「はじめはリアル店舗で買い物をするつもりでいたが、約6割の人がショールーミングによりオンライン(ネット)による買い物に変えた」という点です。同じ商品であれば、送料やサービス面を比べながら、価格で選ぶのは自然な行動と言えます。でも、その流れに沿えばリテールやメーカーは今後も大きな障害を持ち、これを何とかGet Overする(障害を乗り越える)必要があります。

ショールミング

ショールーミングの構造のひとつには、オンラインによる買い物があります。米国の経済は、生活のレベルが極端な二極化を示しています。買い物にオンラインを活用する人と、週末のサンデー・ニュース・クーポン(新聞に折り 込まれるチラシ)を積極的に活用をする人とはっきりと分かれています。ショール―ミングの様な新しい買い物行動と合わせて、こうした社会の背景や買い物の傾向について知る必要があります。

リテールとメーカーの視点で何を考えるか

長い期間、リテールの競合はリアル店舗の競合店、メーカーはライバルメーカー。これは、これからも同じですが、ここにオンライン(価格の比較と、ネットによる買い物)と言う「最強のライバル」が加わりました。情報や買い物する商品の価格は、誰もが自由に選べるものですが、リテールやメーカーと言った企業の立ち位置であれば、具体的な対策や工夫が急務です。

第6回コラム「リアル店舗は、オンライン・ショッピングにおけるショールーム?」でも、その傾向について触れましたが、今回リテールとメーカーは、このショールーミングに対してどんな取り組みが出来るか考えたいと思います。

ショールーミング化されない4つの方法
リアル店舗でしか売られていない商品を作る

所謂PBやオリジナル商品。オリジナルや限定ならば良いというわけではありません。ナショナルブランドと比較されるPB商品は、ブランド力をはじめいくつかの課題があがります。米国のホールフーズやトレーダー・ジョーズでは店舗で扱う商品の実に7~8割がPB商品です。そこにある商品(生鮮品も加工品)は「Local」と言う単語に象徴される様に、地元の素材や地元の生産者や地元の買い物客にフォーカスした徹底した取り組みがあります。

リアル店舗で買うとお得、リアル店舗に行くとお得

freebie

これは特典の提供(インセンティブ)による取り組みで、リテール、メーカー共に利益面(売上・粗利への影響)に注意する必要があります。リアルな店舗で買い物をすることでの「買い物ポイントの提供」「プライスやノベルティなど特別なサービス」により、来店促進を含めた仕組みになります。ウォルマートの展開では、同社のネット(オンライン)による買物で、商品を店舗に受け取りに来るサービス「Web Pick up」があります。買い物客には送料無料といった特典があります。

また、同企業では、スマートフォンとSNSを使ったサンプル品(P&Gほか)を提供する自販機を店頭に設置し、リアルとネットを連動させるテストを行っています。写真は、ウォルマートに置かれた紙幣やコインの投入口のない自販機。準備中のために写真ではサンプル商品は見えませんが。サンプリングと来店の誘引を繋ぐひとつの方法です。

ネットで購入することの不自由を解消

「ネットによる買い物が不自由?」PCを立ち上げて、商品を選んで、カードによる支払い決済の為にマウスをクリックする。ネットの利用が日常化している人たちには普段の行動も、シニア層にはまだまだ作業の負担が多いことも現実です。このシニア層に向けたリアル店舗の利用をあらためて認識してもらうためのサービスや商品づくり。これは今後のマーケットを見る中で必要なことです。

最後に、これが最も肝心なことと思います。リアルな店舗に本当に行きたい“キモチ”をつくること。電通S.P.A.T.チームが出版された『買いたい空気のつくり方』このタイトルに興味を持ちました。買い物客は、普段「今日の夕飯は何にしよう」「今月はお金を使い過ぎた」というリアルな思いを持ちながら生活・暮らしています。「買い物にお得感を求める」。これはどの世代・時代の中でも最も高いニーズでしょう。でも、同時に五感という言葉に代表される様な目に見えにくかったり、形に言い表し難いものに興味をそそられたり、好きになったりすることがあります。この興味や好きの対象は、リアル店舗においてはサービスだったり、店づくりだったり、店員さんやスタッフ・クルーの対応だったりします。つまり「行きたいキモチ」を作れれば、前述のPBの推奨もお得感のあるプロモーションもバランスの取れた運営・展開の中、行うことが出来ます。

日本でも「行きたいお店や楽しいお店は?」という話題の際によく取り上げられる店舗に「ハローデイ」(北九州・福岡・熊本他 店舗数39店)があります。店内の天井や壁面や陳列ケースの上に、ディスプレイや様々な演出・サプライズが施されて、子供連れの家族などに喜ばれ週末・平日と賑わい感があります。また「代官山蔦屋T-SITE」(東京代官山)には、レンタルショップを超えた文化や品揃えには個性やセンスが感じられます。お店でお客さんを迎えてくれるのは「居心地の良い空気感」「生活の楽しさを見直すキモチ」の様なものです。

リアル店舗において演出物やデジタル・ツール(サイネージや高機能端末)の導入は、プロモーションの投下と同様にコスト負担が大きい内容ですが、「本当に行きたいキモチ」これをどう作るかについて、デジタル化や様々なシステム化が進む中で、もう一度考え直す時期と感じています。自分が行きたくなるキモチ(何がスイッチを入れるのか)、誰かを誘って行きたくなるキモチ(どんな想いがそのスイッチを入れるのか)、まずはこの辺りから考えたいと思います。

次回のテーマは、 「O2O(オンライン・ツー・オフライン)を生活者・買物客の視点でハカる

次回は21日(火)に掲載します。

※タイトルの一部に誤字があったため、修正しております。

倉林武也 「最新米国小売業からプロモーションをハカる」バックナンバー

Follow Us