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コラム

Webプロダクション進化論

ホールディングスにして良かったの? に対する本音の回答

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このコラムは全12話という事で、ついに折り返し地点に来ました! やった! 嬉しい!

元来、筆まめじゃなく、ブログも一年間放ったらかしな状況でして、本当に執筆は大変。書きたい事、お読み頂きたい事は多くあるのですが、文章化するときに、色々と悩むので時間がかかるんですよね。でも、あと6話、頑張って続けていきますよ!

おそらく、コラム終了後は当面断筆となりますので(笑)、お付き合いいだいている皆様、どうか最後まで引き続きお付き合いいただけますと幸いです。

ワン・トゥー・テン・ホールディングス

ワン・トゥー・テン・ホールディングスは、ワン・トゥー・テン・デザイン、カラーズ、エクスペリエンスなど5社の事業会社を傘下に置く

今年4月にワン・トゥー・テン・デザインは、4社と合流し、ワン・トゥー・テン・ホールディングスという持ち株会社を軸としたグループ会社になりました。

クリエイティブエージェンシーを目指し、一社単体では実現できないことに挑戦するために、各社の強みを生かす形で、現在多くの取り組みを行っています。どういった未来を拓くことが出来るのか冒険を楽しんでいる状況です。

4月より、約4カ月半、ホールディングス化に対するご質問を多方面からいただくようになりましたので、この場を借りて本音で語ってみたいと思います。気軽にお付き合いください。

合流のきっかけは?

合流の始まりは、カラーズの社長を務める高場秀樹(ホールディングス副社長)からの誘いでした。高場とは、AID-DCC富永幸宏社長の紹介で、4年程前に初めて会い、それから親交が続いていました。

Webプロダクションは、ワンマン経営(創業者がCEOを務める)の独立系プロダクションが多く、創業時期も成長の経緯もどこも大体同じような感じで、悩みも似かよっているため、ライバル会社でありながらも経営者同士の親交はとても深い状況です。そういった集まりの中で、今後の経営について、後継者問題や組織化について話すこともあり、アライアンスやグループ化による体制強化についても話をしていました。

高場は、私よりもビジネスに長けており、良い意味でのドライな判断も出来る優れた経営者です。私に欠けている所、彼に欠けている所を上手く双方で補完し、長所を生かせると判断しての誘いでした。何度も協議を重ねた結果、彼が立ち上げていたホールディングスに合流する形で、ワン・トゥー・テン・ホールディングスは誕生しました。高場の誘いから約1年半後のことです。

何で合併ではなく、ホールディングスなのか?

ワン・トゥー・テン・デザインを軸に各社を吸収合併する方法や、事業持ち株会社として、各社を子会社化する方法など、いわゆるホールディングス化以外にも合流の方法はあります。ホールディングスと呼ばれるものは、一般的に事業会社ではない、純粋持株会社が親会社として、子会社の株式を50%以上所有することで連結子会社とします。財閥の復興を阻止するために、戦後は認められておらず、日本はそういった点で世界でも珍しい国だったのですが、グローバル化の中で1997年に独占禁止法の改正を経て解禁されました。

広告業界で見ると、ご存知のようにOmnicom、WPP、Interpublic、Publicisといった広告代理店の4大グループがあり、国内でも電通および電通デジタルホールディングスや博報堂DYホールディングスといったホールディングスグループ企業体があります。ホールディングスによる連結は、子会社のブランドの独立性やアカウントの棲み分けを行うことができ、且つ、リソースを新規事業に集中投資したり、不採算事業を切り捨てるといったことも単体の組織よりも柔軟に素早く実行しやすいというメリットがあります。また、各社の社内制度や文化の違いもあり、合併を選択した場合、多くの課題が発生するため、それが容易ではないというのも事実です。

ホールディングス会社は何をしているのか?

ワン・トゥー・テン・ホールディングスには現在8人の社員がいますが、労務や経理、経営企画、広報などの事務方で制作者は一人もいません。収益につながる事業は行っていないため、ホールディングス傘下の各社より管理費用を徴収し、ホールディングス全体の管理や、調査、分析などの経営サポートを行っています。

ホールディングスによるグループ化のメリットは?

大きくは、スケールメリットによる効率的な組織運営の実現と、事業ドメインの多様性の獲得です。

実は合流の時点では、組織の安定性を高めるが故に、身の丈を超えた高コスト体制となっていたため、現在、絶賛コストカット中です。各社の資産や管理部門を統合し、効率化を図ることが可能なのはホールディングスの利点です。

元々、ワン・トゥー・テン・デザインはプロモーション領域のクリエイティブが専門のため、アクセスログの解析やIA、PDCAサイクルによるサイト改善等は得意ではありませんでした。そういった別の知見を持つ会社と容易に連携できることは非常にメリットがあります。また、社内にそれぞれのミッションを持つ小規模なチームを多く設けることで、多面的な発展が出来るよう取り組んでいます。

ホールディングスの社長としての重要な仕事は? 事業会社の社長との違いは?

青山支社のオフィス

青山支社のオフィス

株式会社ワン・トゥー・テン・ホールディングスの社長としては、会社単位での仕事はそれほどないのですが、ホールディングス全体を統括する立場としては、多くの業務があります。重要な仕事としては、役員会や各社リーダー層との意思の統一など、レイヤーごとのコミュニケーション、グループ全体での最適な人員配置と人材確保、資金計画、投資事業の選定などがあります。現在、来期に向け、事業計画の解像度を上げる作業を進めています。

事業会社単体と比べると、各社と連携しながらもブランドの明確化を図る必要性や、売り上げの波が各社違うためにその特性を理解したり、負荷や利益の調整といったことが増えています。一体でありながら個の会社の集合体であるということは、これまでと大きく違います。当然、数字を見る機会が多くなったのも事実です。

今後傘下の会社を増やしていく考えは?

現時点では具体的な予定はありません。しかし、他社と提携する形で、海外も含め、新会社を積極的に立ち上げたいとは考えています。上海、シンガポール、ベトナム、ニューヨークへの拠点開設実現へ向け、調査や準備を進めています。会社の数は意識していませんが、特化したチームを増やすことは、スタッフの自主性を促すことにもなりますし、意識して取り組んでいきたいと考えています。例えば、100人のヒエラルキーを持った組織ではなく、5人×20のチームというシステムの方が夢があって楽しいと考えています。

社員が増えると管理が大変になる?

これについては、10人よりは大変ですが、50人も100人もさほど変わりません。労務関係の整備は必須ですが、何よりも小組織を束ねるリーダーの役割がとても重要となります。目の前の部下に甘い顔をしたり、権利を振りかざすのでは無く、信念を持って組織を厳しくかつ優しく統率できるリーダーというのは非常に少ないものです。ある種、日本人の特性かもしれません。和をもって尊しとなす。ですからね。リーダー育成のプログラムは重要だと考えています。

ホールディングスにして良かったのか?

今の答えは、良い:悪い=6:4ですね。誤解の無いように言うと、ワン・トゥー・テン・デザインが主語ではありません。全体を俯瞰しての答えです。正直なところ、各社の強みがマージし始めているところなので、機能し始めるのは、これからといったところです。

でも、これだけは言えます。合流後、私はとても楽しいです。正直なところ、ワンマン経営の危うさを感じ、経営において別の視点を入れることを必要としていました。また、積み上げられた知見以外の知識も必要としていたため、合流後、高場をはじめ、多くの頭脳と経験が混ざり、化学反応を起こしているのは、本当にエキサイティングです。社長って孤独なんでね・・・ボソ。

では、次回、Webサイトの今についてお話をさせていただきます。タイトルは、「コーポレートサイトの未来」

経営の話からは少し離れて、Webサイトのお話をしてみようと思います。

澤邊 芳明「Webプロダクション進化論」バックナンバー