コラム

Webプロダクション進化論

日本のWebクリエイティブは世界で通用するのか?

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このコラムを書き始めたのは夏が訪れる少し前でしたが、徐々に秋の気配を感じるようになってきましたね。といっても昼はまだまだ暑いのですが。

約2週間前、シンガポールで開催されたSpikes Asiaに参加してきました。シンガポールは赤道に近い国。9月なので、とても暑いだろうと覚悟していたら、東京より少し涼しいぐらい。一体、日本の気候はどうなっているのか??

Spikes Asia

まあ、それはさておき、Spikes Asiaでは、アジアの広告界の熱い風を存分に感じることが出来ました。F1シンガポールグランプリの開催を週末に控え、その準備が周辺で着々と進む中、コンベンションセンターSuntec Singaporeにて9/16~18の3日間で開催されました。Spikes Asiaはアジア版カンヌとも呼ばれ、カンヌライオンの運営団体によって開催される、アジア太平洋地域を対象とした広告祭です。多くのセッションと展示、賞の発表とパーティーで構成され、セッションでは同時通訳のレシーバーも無料で使用できます。

近年、急激に存在感を強めている同賞。今年は過去最多の4860点の応募があり、その注目の高さを表しています。受賞作品については、多くの記事がありますので、そちらをご覧いただくとして、今回はその各部門ごとの日本の受賞数と全体に占める割合を元に、アジアを中心にした世界のデジタル広告の考察をしてみたいと思います。

Spikes Asia 2012の部門ごとの受賞数と日本の割合

部門名 日本の受賞数/総受賞数 占める割合
Branded Content & Entertainment 6/17 35%
Creative Effectiveness 0/4 0%
Design 15/28 54%
Digital 15/29 52%
Direct 3/28 11%
Film 11/43 26%
Film Craft 1/23 4%
Integrated 1/8 13%
Media 1/41 2%
Mobile 5/13 38%
Outdoor 2/97 2%
PR 3/17 18%
Print 0/61 0%
Print & Poster Craft 0/34 0%
Promo & Activation 6/38 16%
Radio 0/27 0%

となっています。日本がデザイン(54%)およびデジタル(52%)領域でいかに強いかがよく分かります。さらに、今年はPARTYさんがIndependent Agency of the yearを受賞され、強さを見せつける形となりました。逆に、プリントやアウトドア(屋外広告)では苦戦しています。

また、Spikes AsiaのDigitalでの過去の日本の受賞状況を振り返ると、

2009年 18/36 50%
2010年 16/39 41%
2011年 15/31 48%
2012年 15/29 52%

と歴代において、ほぼ半数を占めていることがわかります。
Spikes Asiaと並ぶADFEST(アジア太平洋広告祭)ではどうでしょうか?CYBER LOTUSの今年の日本の受賞数は、27/34と、なんと80%を日本が占めています!スピーカーの顔ぶれ等の印象として、Spikes Asiaは欧米の広告代理店ネットワーク寄り、ADFESTは日本の広告代理店の影響が強い印象がありますが、それでも双方にいて過半数以上というのは大いに誇って良いと思います。

ではさらに、カンヌライオンズの今年のサイバー部門での日本の順位を見てみましょう。

Cannes Lions 2012のサイバー部門の国別受賞数リスト(降順)

アメリカ 16
日本 11
イギリス 11
スウェーデン 8
ドイツ 7
オランダ 6
カナダ 4
ベルギー 4
デンマーク 3
ブラジル 3
フランス 3
スペイン 2
オーストラリア 1
シンガポール 1
ノルウェー 1
イタリア 1
ロシア 1
アラブ 1

なんと、アメリカに次いで2位!そう、デジタル領域において日本は世界トップレベルなのです。

海外広告賞での日本の存在感

カンヌのサイバー部門で日本(アジア)の名が初めて登場するのは、2002年の博報堂さんによるWWFシリーズでした。ゴールドを3つ受賞しました。

そして、翌々年、2004年に中村勇吾さんが、NEC ecotonoha(エコトノハ)でグランプリを受賞しました。

その後、Projectorの田中耕一郎さんの手掛けたUNIQLOCKが2008年、世界三大広告祭(カンヌ、クリオ、OneShow)でグランプリを制覇する快挙を成し遂げ、バスキュールさんのAXE WAKE UP SERVICE、電通ネットワークの佐々木康晴さん、電通テックの小川晋作さんと共に弊社およびザ・ストリッパーズさんが制作に参加したUNIQLO LUCKY LINEなど、日本人クリエイターは様々な輝かしい結果を残してきました。

なぜ、日本はデジタルがこんなにも強いのか? 色々理由はあると思いますが、その根幹は技術力が優れているからだと考えています。ものづくり遺伝子を色濃く持つ、日本人。その血脈がこういった結果に現れているのではないでしょうか? アイデアはもちろんのこと、テクノロジーのみならず、境界を越えてそれを表現へと昇華させる感性は、我々の強みなのかもしれません。

シンガポールの熱い夜

Spikes Asiaでは、毎夜、各所でパーティーが開催されます。参加は無料。初日は、Facebookシンガポールのオフィスで、Spikes Asia Networking Receptionが開催されました。会場に着くと、白いバッヂを受け取り、マジックペンで名前を記入、それを胸につけて中へ。オフィスはとても広々としていて、2フロアあり、フロア中央にある階段がそれを結んでいました。中には休憩スペースや社員食堂があり、とても開放的な空間でした。下階奥では、Facebook社員の方々が、記念写真ブースを設置、いいね! の手のボードやオリジナル扇子を持って撮影してもらいました。(写真はFacebook Singaporeのページに掲載)

フィンガーフードやドリンクを頂きながら、同行した社員のマイケルの通訳を挟み、AKQA上海の方など、多くの方とお話しすることができ、上海で仲良くなった方(読広の重松俊範さんなど)も多く来ていて、とても楽しい時間を過ごすことができました。

パーティー招待状

パーティー招待状

2日目は、JWT、Lowe Asia Pacific、McCann Worldgroup(Singapore)、Ogilvy & Mather(Singapore)、TBWAによるNetworking After Darkがそれぞれ開催されました。私は、JWTのパーティーへ参加しました。

今月中旬より弊社の石坂がJWT ShanghaiJWT Shanghaiに出向するため、アジアの上層部の何名かの方とは面識があり、JWT Singaporeのオフィスを見学させて頂いた後、屋上の会場へ。サムソナイト「HEAVEN AND HELL」で昨年の国際賞でグランプリを数多く受賞したJWT Shanghai。Heaven or Hell? と名付けられたこのパーティーでは、その名の通り、天国と地獄をテーマに、天使や悪魔の格好をした人や、なぜかマッチョマンにファイヤーダンス、リングを使ったエアリアルダンスなどがありました。レーザーで隣のビルの壁面にJWTと映し、スモークが立ち込める中、パーティーは始まりました。

少々音がうるさいぞと思いつつも(徐々に爆音に)、ビルやワインを片手に大声でJWTの皆さんやニューヨークからセッションのスピーカーとして参加されていた佐々木さん、その他、日本人の多くの方とも名刺交換&会話をしました。様々な広告業界の方とお話できたことは本当に良い経験になり、こういった交流が海外賞の醍醐味だと感じました。

パーティー写真

しかし、きちんとした会話となるとマイケルを介すため、英語をもっと話せるようになりたい。と強く思ったのも事実です。日本人は多くが英語を話せませんが、アジアの多くの国では英語を話せる人が多く、パーティー会場でも、多くの方が英語で積極的に話をしていました。正直なところ、そういう場での日本人は不利で、言葉の壁は大きいです。アジアの人々が国籍を超えて活躍している様を見ると、グローバル社会が日本以外で着実に加速度を増してその姿を現していると感じます。そう強く印象付けられた夜でした。

アジアの広告のゆくえ

さて、日本はデジタル領域で今後も活躍を続けられるのでしょうか? 私の思う限り、しばらくはアドバンテージを持ち続けるでしょう。デジタル広告費も世界第2位と好調で、且つ、芸術大学や専門学校など、教育地盤も非常に磐石なため、クリエイターのレベルはアジア一だと認識しています。

しかし、ニールセンの2011年の統計では、アジア・パシフィックの広告費は、前年比12.4%の伸びを示し、中国の広告費は昨年、日本を抜いて世界2位に。さらに今後も増え続け、2015年には665億ドル(約5兆3200億円)に達すると見られています。そう、市場としては、日本の停滞を尻目にアジアが今後も急拡大をしていくのは明白の理です。

ワン・トゥー・テン・デザインでは、アジアへの拠点開設の準備を進めており、アジア地域においてWPPグループであるJWTとの連携を強めるべく、現在関係性を強化しています。誤解の無いように言いますが、日本は非常に強い国内市場を抱えており、国内でも十分活躍できることは出来ます。しかし、少し視野を広げると、我々のスキルを切望される世界があるのも事実です。

日本人の皆さん、さあ、新しい世界に飛び出しましょう。ほんの少し勇気を出して。

次回タイトルは、「日本総輸出計画を発動せよ!」。今回のお話をさらに深く掘り下げ、アジア各国での会社設立や賃料、人材事情など、出張時に聞いた情報や、ホールディングスの管理本部がまとめた調査資料を基に、私なりの考えを綴ってみたいと思います。

澤邊 芳明「Webプロダクション進化論」バックナンバー

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