コラム

Webプロダクション進化論

日本総輸出計画を発動せよ!

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今年に入ってから、私の周りでWebプロダクションの海外進出の動きが加速しています。シンガポール、中国、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、アメリカなど、アジアを中心に拠点開設の話を多く聞くようなりました。

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ニューヨーク

また、広告代理店もグローバル展開を強化しています。今年、電通は英大手のイージスグループを4000億円で買収し大きな話題となりました。博報堂DYホールディングスは上海に中国の消費者動向を調査する研究機関を開設、またSEGAとコンテンツ制作会社を立ち上げるなど、様々な動きが進んでいます。おそらく、皆さんの周りでも海外出張に行かれる方が増えていると思います。

なぜ、海外進出が急増?

なぜ、今、急激に進出の動きが増えているのでしょうか? 大きくは国内経済の低迷と円高、新興国を中心にしたアジアマーケットの拡大が理由です。アジア新興国の中間層は過去10年で5倍に増加し、約10億人にまで広がっています。これまでは安い労働力を求めての製造業の進出が主でしたが、ここ数年はその巨大な消費力を狙った進出に大きく変わってきています。そういった日本企業の進出に伴い、アジアでの広告の需要が増えているため、当然、広告業界でも進出が急増しています。

また、こ存じのように中国ではフェイスブックやツイッターはアクセスが規制されているため、人人網:レンレンrenren.comや微博:ウェイボ(マイクロブログの意味、複数ある微博の中で、新浪微博weibo.comが有名)など、独自のSNSが発展。シンガポールではスマートフォンの普及率が74%(世界1位、2位は香港)という調査結果もあり、デジタル分野での現地での知見が非常に重要になっています。

実際、インサイトを理解できるようになるには、しっかりと根を降ろし、現地の人材を採用し、数年以上の経験が必要だと考えています。

私が海外に惹かれる理由

2話でお話ししたように、海外旅行代理店を作ることも考えたほどですので、基本的に海外へ行くのが大好きです。陽射しの違いにより、街並みや自然の色が異なり、その違いが生み出す文化に大変興味があります。

一方、京都を本社としており、積み上げられた歴史が伝統として風景に染み付いている京都も素晴らしいと感じています。四季をこうも多彩に楽しむ都市は他に類を見ないでしょう。

しかし、実のところ、(集団としての)日本人は嫌いです。正確には最近の日本人が嫌いです。まあもちろん私も日本人の一員ですので、自戒を込めての発言です。様々な国(約20都市)に行って初めて分かったのですが、例えばエレベーターで平気で順番を飛ばし、さっさと乗るような人がいるのは日本だけです。上海では(おそらく日本人と分かっていたはずです)、何度も傘やタクシーの乗り降りを手伝おうとされた一般の方々にお会いしました。他国でも同じように声をかけて頂きます。

もちろん、日本人でも優しい方はいますが、割合が圧倒的に違います。この違いは何なのか?? 日本人はシャイだからとか教育の問題など理由はあると思いますが、おそらく、海外で触れたのは、単純に人としての素直な優しさだったのではないでしょうか? なんかそう思うと、希望や優しさも失いつつある日本ではなく、エネルギッシュで未来をつくろうとしている国に惹かれてしまう自分がいるのも事実です。一当事者として日本をもっと元気にしたい! 心からそう思います。

日本人の価値

さて、日本人クリエイターは海外で通用するのでしょうか? 私は充分活躍できると信じています。前回お話ししたように、特にデザインとデジタルは世界トップクラスの実力を持っています。芸術大学での教育水準も高く、日本人には生まれ持った独特の芸術性があります。日本は国も含め、芸術にあまり投資をしないため、パトロンがいるアーティストではなく、商業ベースでの活動が主になります。よって、アニメや広告の分野に優秀な人材が多く集まります。アジア各国ではまだまだ人材が不足しているため、日本人クリエイターへの注目は益々高まるでしょう。

アジア各国事情

では、進出を考えた場合、どこの都市がどういった条件を持っているのか、資料を基に見てみましょう。

人口(万人)、法人税率(%)、賃金(万円)、オフィスの賃料(円/1㎡あたり)、住居家賃(円)で比較してみます。

都市 人口(万人) 法人税率(%) 賃金(万円) オフィスの賃料
(円/1㎡あたり)
住居家賃(円)
東京 1,321 40 55 5,000 200,000
シンガポール 518 17 35 6,400 380,000
香港 720 16.5 30 13,000 180,000
クアラルンプール 720 25 17 1,700 96,000
ムンバイ 2,129 42 16 3,600 220,000
上海 2,433 25 15 3,200 216,000
ジャカルタ 959 25 12 1,600 170,000
ホーチミン 712 25 8 2,800 216,000

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シンガポール

人口は市域ではなく都市圏の人口です。賃金は非製造業マネージャー(課長)クラスの平均月給。クアラルンプールはマレーシア、ムンバイはインド、ジャカルタはインドネシア、ホーチミンはベトナムの都市です。
出展元:JETRO

家賃は、2LDK以上の想定のようで単身者の場合は、この半分ほどが相場かと思いますが、香港の賃料の高さとシンガポールの家賃の高さが目に付きます。逆にクアラルンプールは安いですね。会社設立に関しては、シンガポール、マレーシアは比較的容易で、中国は3カ月以上必要な場合が多いようです。人件費を見た場合、インドネシア、ベトナムは魅力ですね。

未来のWebプロダクション像

さて、まるで営業マンのように、海外進出について説いてきましたが、あくまで一つの選択肢の話です。

私は、危機意識も無く、変わらないことが一番の危機であると、このコラムで語ってきました。今が永遠である保障なんてどこにもない。特に私はその危うさを強い実感として持っています。5話にてお話ししたように、変化し続けることが最大の保険なのです。社員を預かるものとして、私の知る経営者は皆さんその危機意識を持ち、挑戦者です。

あなたは今、何に挑戦していますか?

未来のWebプロダクションは、デジタルを武器に様々な領域、地域で活躍することでしょう。そんな未来を信じて頂きたく、Webプロダクション進化論と題し、当コラムを続けてきました。皆様の今後に何かしらお役に立てれば幸いです。

次回はついに最終話となりました。最後は私の未来について書かせて頂こうと思います。タイトルは、「カウントダウン開始、ワン・トゥー・テンの社長を辞めます」。完全な釣りタイトルですが、まあ嘘は言っていないので、お許しを。

澤邊 芳明「Webプロダクション進化論」バックナンバー

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