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コラム

Webプロダクション進化論

コーポレートサイトの未来

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今回、お話しするのは企業サイトのことについてです。

あれ?ワン・トゥー・テン・デザインってコーポレートサイトのことわかるの?プロモーションが得意なんじゃないの?そんなイメージをお持ちの方も多いと思いますが、ホールディングス内のエクスペリエンスはコーポレートサイトの提案が専門ですので、今回はそこからの視点で書いてみたいと思います。

以前は、パンフレットサイトだった

1995年から2000年ぐらいまでは、コーポレートサイトというのは「とりあえずあればいい」という存在でした(アジア諸国ではまだそういう状況がよく聞かれます)。まさに会社案内などの印刷物をそのままWebに置き換えただけのもので、まさにパンフサイトでした。広告でも広報でもないそれは、非常に素っ気のないもので、画一的な思考のもとにいわゆる企業ホームページというものが量産されていきました。まるで金太郎飴のように。

2002年あたりからプロモーションやブランディングのためのWebサイトはFlashによって、飛躍的にその表現力を増していきますが、コーポレートサイトはテキストベースの情報が主なコンテンツなため、HTMLを基本にして構築され、見た目上はあまり変化しませんでした。同時期にテーブルタグを使用しレイアウトを組むコーディングからCSSコーディングへと移行はしたものの、デザインにおける設計思想の変化はあまり見られませんでした。800ピクセル、後に1024ピクセルの横幅、ヘッダー、フッター、メインビジュアル、ニュース、グローバルメニュー、ローカルメニュー、そのセットが基本として存在し続けました。しかし、その中で情報設計やユーザビリティなどは、徐々に学術的アプローチで体系化が進んでいきます。

表現や機能に変化が現れだすのは、Ajaxが登場した2006年あたりからになります。いわゆる静的なページでは、ページ遷移を伴うリンクもしくはボタンのアクションによってのみ、サーバと通信できるのですが(一部例外を除く)、Ajaxによって動的に通信できるようになり、Webアプリケーションとして、サイトが機能できるようになりました。

HTML5

そして、今では、HTML5の登場によって、様々なデバイスに対応した動的なHTMLサイトを構築できるようになりました。アニメーションツールとしては未だにFlashに軍配が上がると思いますが、テキストを扱う言語としてはHTMLが優れているため、HTMLで動的なコーポレートサイトを構築できるというのは喜ばしいことです。ツリー構造とページで構成されたWebサイトは、いずれ過去のものとなるでしょう。

技術がコーポレートサイトに大変革をもたらす。

技術の進化と共に、ネットユーザも増加を続け、米調査会社comScoreの2010年1月のレポートによると、2009年12月に全世界で行われた検索数は1310億回を超え、1年前に比べて46%増加、アメリカだけで227億回、日本は91億回となっています。2012年6月では、アメリカでは171億回と下降(一方、ビデオ検索が増加しています)していますが、アジアを中心に検索数は増加をしています。
出典:
http://www.comscore.com/Press_Events/Press_Releases/2010/1/Global_Search_Market_Grows_46_Percent_in_2009
http://www.comscore.com/Press_Events/Press_Releases/2012/6/comScore_Releases_June_2012_U.S._Search_Engine_Rankings

WebGL対応ブラウザ(Chromeなど)でしか見られませんが、全世界の検索数を可視化したGoogle Search Globeというサイトもあります。

検索ワードも、より的確に目的のページをヒットさせるためにシングルワードからダブルワード、トリプルワードと変化してきています。ドメイン・ウェブサイトも8億を超え、高度な検索ロジックをベースに日常的に検索が行われています。

コーポレートサイトとテクノロジー、そして検索という視点で面白いと思える例を挙げさせていただきます。最近は、多くのECサイトでも使われていますが、検索ワードに応じたランディングページを動的に生成したり、ユーザーの行動に応じてリコメンドするサーバサイドのASPシステムがあります。この技術をBtoBサイトで応用していくことで、今よりももっとユーザー文脈に応じたROIに貢献するコーポレートサイトを生み出すことができます。

また、ユーザーの行動シナリオから自動的に仮説を立て、最適な情報へと導いたり、サイト自体が構造を変化させて、まるでコンシェルジュのように知的にユーザーを案内する。そんなことも可能になろうとしています。SNSとの連携やアクセスログ分析をベースに開発された技術、最近ではインバウンドマーケティングを軸にした技術など、現在、アメリカを中心にこういった情報・マーケティング工学が大きな進歩を遂げています。

自国を越えてグローバルを見据える企業は積極的に自社のサイトに技術を取り入れ(サムソンやインテルなど)、サイトを開発・発展させ続けています。もはやコーポレートサイトは、パンフレットサイトではなく、マーケティングツールとして、機能を備えたものに変化を始めました。

 インテル – 検索を軸にマルチエントランスを実現
 ジョンソンエンドジョンソン – 構造、ビジュアル、SNS連携等を高度に実現

こういった進化に触れ、私はホールディングスの中に企業サイトに特化したエクスペリエンスという会社を配置し、企業戦略に応じた次世代のWeb提案を行おうと考えました。それは俗にいうコーポレートサイト制作だけにとどまらず、自社メディアとして、キャンペーンサイト、ブランディングサイト、ECサイト、SNSサイトなど、全てを包括的に扱うものでないといけないと考えています。CRMを含む企業コミュニケーションにどう貢献できるかが、これからのWebプロダクションに求められていることと感じます。

ここから、エクスペリエンス代表の奥野に語らせてみようと思います。最近どういうことを感じるか聞いてみました。

「様々な企業とお付き合いさせていただく中で感じる問題は、本当の意味での統括したWeb戦略・Web分析を行える部署がない企業がほとんどだということです。海外にはあるようなのですが日本ではあまり見かけたことがありません。

そして現在のサイトから得られる情報を生かしきれていない企業もたくさんあります。企業内の縦割り構造が邪魔をしているようです。だから、横串を刺して物事を考えることのできるWeb専門の部署をもった企業が今後生き残ることができると僕は思いますし、逆に僕たちがその横串を刺していくお手伝いをしないことには企業に貢献できないのだろうと感じています。

BtoB企業、BtoC企業、さまざまな企業体系がありますが、最終的にはコンシューマーとのつながりをどう管理していくのか、ビジネスとのつながりをどう管理していくのかが大事だと考えています。そのつながりを管理(維持・育成)するという意味で、特にコーポレートサイトは大事なプラットフォームであり、その進化がやっとこの時期に始まったのだと感じています。

つまるところ、私は企業が配信するサイトは全てその企業の自社製品(プロダクト)だと考えています。だからこそ責任をもって管理しなければいけないですし、様々な機能を持った製品として進化し続けることで、その企業に貢献するものになるのでは無いかと考えています」

もしかすると、これまで多くのWebプロダクションは、コーポレートサイトを静的で量産が必要な、あまり面白味のないものと捉えていたかもしれません(私がそうでした)。しかし、今、この分野が熱いです!

では、次回、今年我が社に入った新入社員2人が、会社のこと業界のことを語ります。タイトルは、「ゴーストライター百市&綿野」。コラムを他人に書かせるという型破りなことを致しますが、この業界の若い方の参考になれば幸いです。

澤邊 芳明「Webプロダクション進化論」バックナンバー