コラム

CSR視点で広報を考える

中国の圧力に対して国家的広報戦略が求められている

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尖閣諸島問題は単なる始まり!中国との対峙方法を真剣に考えるとき

9月28日付の米紙ワシントン・ポストを始め、主要各紙に「釣魚島(沖縄県・尖閣諸島の中国名)は、中国に帰属している」との広告を掲載し、見開きページの大部分に尖閣諸島のカラー写真を使って「古来からの中国固有の領土で、争う余地のない主権を持っている」と主張、日本が「横取りした」と非難した。国が他国の主要各紙にこのような広告掲載を載せることは極めて異例であり、見たことがない。この異常な広告掲載は中国の国際広報戦略の一貫であり、その戦略は国連総会で口火が切られた。

9月26日の国連総会の一般討論演説において、野田首相は、4分の1の時間を費やして「領土問題」や「国際紛争」に言及し、「自分の主義・主張を、一方的な力や威嚇を用いて実現しようとする試みは、決して受け入れられるものではありません」と述べ、中国と韓国を強く牽制したが、決して国名については名指しで非難しなかった。

これに対して中国の外相は「日本が釣魚島を盗み取った」と7回に渡って日本を「盗人」呼ばわりするなど、過激な言葉で非難を続け、日本側も激しく応酬する場面もあった。

「領土問題」は当事国同士の問題であり、他国が介入できないことを中国は知った上で、国内世論と武力的脅威により実効支配を行った後、海外の主要各国からも十分な納得性を得られるよう本気で国際広報戦略を講じてきている。

日本と中国との本件に関する考え方の違いは、optimist(楽観主義者)とpessimist(悲観主義者)との違いである。この種の政策で失敗が許されない中国政府は、背水の陣を敷いて、そのプロセス・ステップを確実にしつつある。

主義・主張を唱え、世論を不動のものにするには、「世論統制術」が駆使される。「Logical」(既にそれが「正しい」と広く認識されている法律・ルール・理論などの所在を伝えて確認させ、「正しい」ことを再認識させること)では、中国は「尖閣諸島は日本が清から略奪したもの」と一貫して独自の歴史観で主張している。「Reasonable」(理論で証明できない場合は徹底的な広報戦術により広い世代でその「正当性」の認知を深めること)では、米主要各紙の広告や政府広報など各メディア戦略を駆使して認知を広めた。

さらに「Simple」(「仮想敵国日本」を明確にし、ターゲットに対して国民にわかりやすいメッセージを発信することにより、これから行う結果を受け入れやすい状態にすること)では、国連総会発言における「盗人」や、その略奪行為を「マネーロンダリング(違法な資金洗浄)」や「植民地主義的」と過激に非難した。

こうした行為を繰り返すことで、事実でないことも事実として洗脳する世論統制術に長けている中国の国際広報戦略は徐々に日本政府を追いつめる可能性がある。9月にやっと国際広報戦略の重要性に気がついた日本政府はやっと対策を講じる準備を始めている。しかし、国民の多くがこの問題を認識する一方、日本としての立場や今後の政府の対応・戦略の意図がどこへ向かっているのかについてしっかり認識している者は少ない。

このコラムを読まれている方々の中で、9月に外務省のホームページにおいて、この問題について「尖閣諸島の領有権についての基本見解」や「尖閣諸島に関するQ&A」が掲載されていたことを知っていた人が何人いることだろうか?

そのくらい日本政府の政府広報や国際広報戦略が甘いと言わざるを得ない。中国は武力的圧力と広報戦術でこの問題に突破口を見いだそうとしている今、日本においても防衛ラインの維持と政府広報及び国際広報戦略による対抗手段を徹底する必要が求められている。

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