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コラム

CSR視点で広報を考える

領土問題は喫緊の課題 回避よりも積極的解決を

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適切な情報開示で、平和的解決と強い政権をアピール

先週から今週前半にかけて中国・香港を訪問した。反日への高まりも一時沈静化したかに見えたが、再び東京都の尖閣諸島の調査で火がついた。中国側も暴徒化する反日デモ参加者には手を焼いているのか、大量の警察組織をデモ現場に配置して抑止に躍起となっている。日本の国旗、「日本」「Japan」の文字にも反応するデモ参加者は、同胞の経営する料理店のガラスを割り、日本車を転がして破壊するなど報道に絶えないシーンも数多くあった。

現在は、この種の一部の暴徒化する反日デモはなくなりつつある反面、連日マスコミの報道や新聞、タブロイド紙の過激な記事が掲載され、国民全体に反日モードが加熱し始めている。空港、鉄道、フェリー乗り場などの公共施設にはあちこちに警察官が配置され、中には防弾チョッキを身につけた公安警察も多数目についた。あるタブロイド紙では一面に日本の海上保安庁が公開した「尖閣諸島に香港活動家が上陸した際の映像」を逆手にとり、拿捕した活動家の乗る船を挟み撃ちにした海上保安庁の巡視船の写真を載せて、同じことを勇気ある中国人が日本の中国大使の車に対して行ったとする犯人擁護の記事を掲載した。

これまではどちらかと言えばネットを中心に若い世代が中国大使襲撃犯人を擁護してきたが、徐々にヒートアップ、マスコミの中にもその傾向が広がり、国民全体に反日の感情が潜在的に根付きつつある。東京都の尖閣諸島調査は、即日中国にも広がり、中国外務省が厳しい反応を見せたが、中国国民にも日本人に対する嫌悪感が徐々に広がっていることはまちがいない。

中国本土でも香港でもタクシーは移動のための交通機関として重要だが、日本人と見ると乗車後に乗車拒否をする運転手が多くなった。ホテルの従業員もタクシーを呼ばず、止めてくれない。料理店では「日本人お断り」の張り紙が貼られている場所も増えてきている。中国まで行って、日本酒やバドワイザーは飲ますが紹興酒や老酒は飲ませないという料理店まで出てくる始末。一方で行政施設に勤める役人達の中には、過剰な中国人の反応に辟易し、日本人観光客の顔を見ると、「I love Japan.」と叫ぶ者もおり、中国国内でも混乱した状況が現在も継続していることがうかがえる。

11月には東京都が尖閣諸島への上陸を予定していることを踏まえて、反日感情は長期化しながら高まる可能性が強まった。双方の国民の領土問題に対する関心が深まるほど、尖閣諸島問題は沈静化が難しくなり、両政府ともに今後の舵取りが難しくなっている。

尖閣諸島については竹島問題と異なり、日本側が実効支配している優位な状況にあることから、中国からの挑発的対応に関して一貫して領有を主張し、要求を無視する選択肢もあるが、韓国との竹島問題で、逆の立場で国際司法裁判所(ICJ)への単独提訴を行う選択肢を取ろうとしている状況を考慮すると、尖閣諸島問題についても日本側から何らかの積極的な歩み寄りや国際司法裁判所への共同提訴などの提案を行うことも国際社会の一員として重要であると考える。

この問題のセンシティブな点は、すでに関係当事国の国民が非常に関心を持っているため、あらゆる話し合いや解決への道筋がオープンであることが不可欠であり、密約などによって国民への情報共有が疎かになることは当事国の政権にとって致命傷に陥る可能性がある。

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白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー

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