制空権、制海権はどこまで肥大化するのか!?
10月7日、韓国軍が韓米ミサイル指針の改定に基づき、これまでの射程距離300キロに対して、北朝鮮全域の軍事的戦略拠点を打撃する目的で、射程距離800キロ、弾頭重量500キロのミサイルを2017年をめどに実戦配備することを発表した。あくまで対北朝鮮抑止力の増強を考慮してのことだが、この実戦配備により韓国軍は現実的に日本における北陸、東海地区までの射程距離をカバーすることになる。
短距離ミサイルと違い、長距離ミサイルは一度大気圏に出てから再度侵入する高度な技術が必要で、命中精度を上げるのはそう簡単ではない。とはいえ、ミスが重なっても日本に向かって誤射されることは考えにくいものの、日本の中枢に十分届くミサイルが存在すること自体、あまり気持ちいいものではない。
通常、ミサイル防衛を戦術とする国家は、長距離ミサイルを保持すると同時に、ステルス戦闘機や無人航空機に短距離ミサイルを搭載し、命中精度を確実なものにしている事例が多い。その意味で、航空機の「ステルス化」「スピード化」の技術革新が同時並行で進められている。2016年に調達が開始される日本の航空自衛隊のF35AライトニングⅡ戦闘機はステルス型で最大速度マッハ1.6を出す能力を持つ。現在の米軍のハープーン型ミサイルのマッハ0.8、日本の最新型対艦ミサイル93式空対艦誘導弾のマッハ1.1を優に超える速度を備えている。
制空権の取り合いでは、戦闘機が先かミサイルが先かのスピード競争も熾烈となっている。ロシアの超音速対艦ミサイルヤーホントはマッハ2.5、インドが最近開発したミサイルプラモスはマッハ3の速度を備え、脅威となっている。ちなみに一見平和な日本においてもマッハ5の次世代型対艦ミサイルを開発中であることをご存知だろうか?
制空権争いはまだまだ続く。米空軍が現在躍起になってボーイング社と共同開発しているのが、無人極超音速機X51A で、最高速度は驚異的なマッハ6を予定しているという。
その一方で、制空権のスピード競争の最中に、その価値が再検討されているのが航空母艦だ。島や諸島のように海洋に周囲を取り囲まれたエリアでは、圧倒的な制海権を有する。領土拡大を画策する中国がウクライナから空母ワリャーグを購入し、改修・試験航行を終了し、「遼寧」として9月に正式就役させた目的もそこにある。現在、日本でも9機のヘリコプターを搭載する新型ヘリ空母2隻を建造中で、制海権での争いも熾烈となり始めた。
領土問題では、常に当事国が冷静に対処し、平和的解決を模索する必要が求められるが、一方で武力による実効支配の脅威に対しては防衛ラインの維持に有益な対処が不可欠である。そうした対処に必要な軍事力は、過剰に持つものではなく、適切な均衡を保つレベルで十分であるが、最近では相手国の戦闘能力の飛躍に伴い、自国の軍事力まで肥大化しつつある。
いつのまにか、軍事力の競争に執着し、本来の専守防衛の意図を忘れないよう、我々国民は慎重な監視と警告を発する役割を担っている。
白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー
- 第94回 中国の圧力に対して国家的広報戦略が求められている(10/4)
- 第93回 企業にとって難題!首都直下地震帰宅困難者に対する条例迫る(9/27)
- 第92回 ここだけは外せない不正調査に関するポイント(9/20)
- 第91回 企業の顔は経営者。経営者の考え方で企業風土が決まる(9/13)
- 第90回 領土問題は喫緊の課題 回避よりも積極的解決を(9/6)
- 第89回 富士山噴火の懸念で巨大地震のリスクは新たなステージに(8/30)
- 第88回 領土問題に見る政治の閉塞感 今こそ外交手腕が問われるとき(8/23)
- 第87回 危機管理広報は企業のブランドを救うだけでなく役員の損害賠償リスクも軽減する(8/9)
- 第86回 原発問題を当時のツイッターやブログで再検証する(8/2)
「CSR視点で広報を考える」バックナンバー
- 孤立化する中国、新型肺炎は新たなステージに! 日本企業が注視すべきポイント(2020/2/04)
- 企業の新型肺炎対策、まだまだ不安要素は一杯! 特に致死率より「感染率」に留意!(2020/1/30)
- 親会社経営陣関与の不祥事に信頼回復の一手はあるのか?—『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(10)(2015/9/17)
- 100%子会社で重大犯罪発覚! 親会社の社長はどこまで責任をとるべきか?-『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(9)(2015/9/10)
- 経営者に梯子を外された経理部長の無念!経営者が指示した「不正会計」に対して企業再生は可能なのか?—『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(8)(2015/9/03)
- 監査役の裏切り! ハゲタカファンドによる乗っ取りの危機にさらされ、経営陣は最後の逆転の一手に何を考えたか?-『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(7)(2015/8/27)
- 産業スパイ事件!社運をかけたプロジェクトの崩壊、信頼していた部下に裏切られたら?—『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(6)(2015/8/20)
- 突然の従業員拉致・誘拐事件、あなたは他人の命の値段を交渉できるか?—『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(5)(2015/8/13)
新着CM
-
クリエイティブ (コラム)
名前は知られていても、事業は知られていない。新生パナソニックの「伝え方」(前編)
-
AD
ビデオプロモーション
1社提供TV番組 文化イベントを活用したスポンサードコンテンツ成功の秘訣
-
クリエイティブ (コラム)
関西の生活のにおいがする漫才風CM――本田技研工業「街のおでかけ」篇
-
AD
マーケティング
組織サーベイの次のアクションへ ひと、組織をつなぐ「Yappli UNITE」
-
マーケティング
1500名超のマーケターが参加、3年ぶりのリアル開催「宣伝会議マーケティングサミ...
-
広報
2023年評判を落とした不祥事ランキング、 1位はビッグモーター不正請、2位はジ...
-
販売促進
「午後の紅茶」imaseとコラボ 集まった短歌から“冬のミルクティー”をテーマに...
-
AD
特集
「広告」の役割が変化する時代 クリエイティブビジネスと経営マネジメント
-
クリエイティブ
グランプリは日成ビルド工業のリクルート広告 金沢ADC、各賞決定