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明日からすぐ実践したい集客アイデア(2)

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全国の優良店舗が実践する「集客・販促」のアイデアを72集めた『販促会議』2013年1月号。レストラン、ラーメン、アパレル、ビューティースポット、ホテルなど、「また行きたくなる店の工夫」を紹介しています。

ここでは『販促会議』2013年1月号の記事の一部を掲載します。

「こだわりの個人店」を演出してブロガーやメディアを振り向かせる

ラーメン評論家が販促手法を分析
<文>石神秀幸(ラーメン評論家)

ラーメン業界で数々のブームを巻き起こし、ラーメン店やカップ麵のプロデュースも行う石神秀幸氏が、「販売促進」の視点でラーメン店を分析。費用をかけずともテレビや雑誌が頻繁に紹介してくれる特殊なジャンルだけに、取材の声がかかりやすいような仕掛けや、チェーン店に見えないコンセプトづくりが、販売戦略の鍵となるという。

外食産業の中でも特殊なラーメンという存在

ラーメン店という業態は、外食産業の中でも特異な立ち位置にある。鮨やカレーと並ぶ国民食だが、人気店であっても、鮨のように一般市民の利用が難しい高級店はないし、外食利用が多い点で、ルウが発達し家で食べる機会の多いカレーとは状況が異なる。

数ある外食産業の中でもラーメンは老若男女問わず利用頻度が高く、誰しも一軒くらいはお気に入りの店がある。一家言持つ人も多く、大げさに言えば「一億総ラーメン評論家」といった様相だ。従ってテレビなどマスメディアもラーメンを取り扱う事が多く、インターネット上でも、ラーメンをテーマにしたブログや検索サイトの数は、ほかの料理と歴然とした差がある。つまり、わざわざ費用をかけなくても無料で宣伝してくれる媒体が多数あり、外食産業の中で最も販促が研究されていない業態と言えるかもしれない。

またメニュー自体の数が少ない店舗が大半なので、居酒屋のようにメニューブックやPOPの作成に力を入れる店は少なく、せいぜい券売機のボタン配置に気をつかう程度だ。もちろん大手チェーンはこの限りでなく、居酒屋と同様の戦略を図る企業が多いが、そもそもラーメン業界は個人店がシェアの大半を占めている。

業界の寡占率で見ると、牛丼やハンバーガーは大手チェーンが90%を超えるのに対し、ラーメンでは20%程度。安定した味やサービス、手頃な価格や入店のしやすさより、各店ごとの個性が求められる嗜好性の高さが要因の一つだが、それゆえにラーメン業界ならではのユニークな多店舗展開戦略がある。

チェーン店と見えないように演出する

ラーメン店はチェーンの強みであるはずの均一感が顧客獲得の武器とならず、むしろ手作り感やこだわりと縁遠く思われ、「ラーメンフリーク」と呼ばれるヘビーユーザーには敬遠される傾向が強い。昨今では支店展開をする場合、店ごとに店名や味を全く変えてチェーンと見えないよう演出するケースが増えている。

中には本店にいたスタッフが独立したように見せかけ、本店のネームバリューを生かしつつ、個人店を装ってフリークを獲得する、手の込んだ仕掛けが張り巡らされている場合もある。そこまで配慮するのも前述の通り、ラーメンは大手メディアが取り上げることが多く、そのメディアはブログなどラーメンフリークの情報を参考にしているから。“こだわっている個人店”を演出するのは、まずはブロガーのサーチにかかり、それを契機にメディアに発信してもらう有効な戦略なのだ。この演出が必要ない純然たる個人店であれば、味作りやコンセプトの独創性などをより磨く方向に向けられる。

もう一つ、ラーメン業界の特徴的な販売促進法は“行列の演出”だ。ラーメン店において行列は最も効果のある看板であり、わざとゆっくり調理して行列を作るのだ。回転が遅ければ売り上げも悪くなると考えるのが普通だが、ある程度“虚偽の行列”を作ってしまえば「行列=おいしい店」というイメージが先行して自然と行列ができる。あとは行列の長さを見ながら調理スピードをコントロールするわけだ。決して誉められた行為ではないが、そうした店も存在する。ラーメン業界ならではの販売促進法は費用をかけないことなのだ。ここまで業界傾向を記したが、次ページではその中でも話題づくりに優れた店の工夫を紹介する。
次ページヘ続く