コラム

伊藤洋介の「こうすればよかったんだぁ」

CMを作るという覚悟

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あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

本題に入る前に、前回1500超もの「いいね!」をいただきまして、誠にありがとうございました。
ご批判も頂戴いたしましたが、共感していただける方が想像以上に多く、勇気をもらった次第です。

で、いきなりですがエステーです。
僕的にはどのCMも面白すぎて、嫉妬するほどです。ミゲル君の一連のシリーズをはじめ、グラサンかけた女性たちが踊る「脱臭炭」もHKT48出演の「ムシューダ」もとにかく全部おもしろい。
僕が主婦でないゆえに、ターゲットである彼女たちの購買意欲がどれくらいそそられているのかは不明ですが、少なくとも商品名だけは頭にきっちりと刻みこまれています。
これらが宣伝部長K氏(本名を出そうかとも思いましたが、ご本人に何の許可もいただいていないので、一応イニシャルで)の仕業であるのは、広告業界、もしくはその周辺で働いていらっしゃる方ならご存知のことでしょう。
氏の経歴はウィキペディアによれば、雪印から2003年にエステーに転職。その後宣伝部長に就任し、CM制作のすべてに采配を振るわれているようです。
僕がまだリーマンだった頃、エステーのCMを見て「やられた!」と衝撃を受け、すぐにスタッフリストを入手しました。
で、何が驚いたかって、そこにはクリエイティブディレクターとして、氏の名前がちゃんと記載されていたのです。これね、あしかけ20年、リーマンやった経験からして、本当にありえません。
どうしてかって?
人の目に触れて目立つからですよ。
リーマンは目立っちゃだめなんです。社長以外は。
おそらくスタッフリストに宣伝部員の名前が堂々と載っているのは、エステー以外にほんの数社だと思います。

ここからはあくまでも想像です。
最近でこそ、様々な賞も獲って、「エステーの広告はおもしろい」と評判になってますけど、最初は社内で色々と言う人がいたと思うんです。
「もっと、商品の特徴を言え」
「パッケージが全然目立ってない」
「オケージョンを説明すべきだ」
「商品の特性とCMのトンマナが合ってない」
などなど……。
いずれもある意味、的を射た意見だけに、普通のリーマンだったら、これらの圧力にきっとめげるだろうと思います。しかもK氏は転職組です。僕にも経験があるんで痛いほどわかりますが、多くの日本企業において転職組は所詮は外様。ヤッカミも含めて、色々と陰口を叩かれるんです
でもK氏はへこたれなかった(想像ですよ)。
合わせてそこには、会社トップのK氏への揺るぎない信頼があったことも想像できます。
当然、上述した批判は、トップにも伝わっていたはずですから。
なのに彼らは、一蹴した(想像ですよ)。
カッコイイー!
この連載でも何度か触れていますが、いいCMを作ることの第一歩は、何より人を信じることだと思います。
クライアントのトップは宣伝部員を。宣伝部員は代理店の営業を。営業はプランナーを。プランナーはプロデューサーと監督を。
そして皆がある種の覚悟を持って、それぞれの持場でその商品がどうやって売れるかを真剣に考えた挙句に仕上がった映像こそが、視聴者の心を揺さぶるのです。

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誰か一人でも、自身の保身やエゴのための手を加えた途端に、そのCMは視聴者に素通りされる憂き目に合います。
エステーみたいな会社が、もっと増えればいいなあ。
そうすればもっと広告でモノが売れるようになって、広告で飯を食ってる人が、もっと脚光を浴びるようになると思うんだけど。広告業界は、埋もれてしまっている人材の宝庫ですから。

ちなみにジャスフィフ(アラサー、アラフォーに対抗して僕が作った造語)間近にもかかわらず、未だ独身の我が家の冷蔵庫には「脱臭炭」が、洋服ダンスには「ムシューダ」がちゃんと入っています。
無論、広告を見てスーパーで買いました。

追伸 文中にも記しましたが本原稿作成にあたって、エステー様には何の許可も得ていません。したがって、事実とは違う可能性があります。あしからず……。

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