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コラム

100万人のメディアを潰した男、キュレーションを語る。

ウケる広告のつくり方。

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言いたいことに陥りがちな広告

前回のコラムがヤフートピックスに掲載されるという予想外の出来事に、動揺を隠せない中でこの原稿を書いています。ありがとうございます。がんばります。

さて、前回は要点がわかりやすい「まとめ」は、短時間で読めるためにソーシャルメディアとの相性がいい、というお話をしました。ただ、もちろん要点がわかれば拡散されるというものではありません。それはあくまでも「シクミ」の話。いいエンジンを積んだクルマであっても、ドライバーがポンコツではその性能をフルに活かせないのと同様に、シクミに乗っかる「ナカミ」に価値を感じられなければソーシャルの海をうまくドライブできません。
今回は、そのナカミの磨き方について、最も拡散に不利とも言える「広告」を例にとってお話します。

NAVERまとめも他の多くのメディアと同様に、バナーやタイアップなどの広告でなり立っているビジネスです。仮に、友達と長電話する機会の多い女子高生をターゲットに、通話品質にこだわったスマホがあり、そのタイアップ広告を依頼されたとしたら、どういうプロセスで制作するかを考えてみます。

高い開発費をかけたこともあって、クライアントとしてはこだわったポイントを伝えたい。一方で、通話品質に開発リソースを割いたことで、カメラの画素数にまでは手が回らず、高画素数の他のスマホと比べると見劣りするため、その点には言及されたくなかった。
クライアントの立場に立って広告を作るなら、通話品質の素晴らしさを声高に語り、カメラについては基本スペックを語るにとどまるかもしれません。
しかし、今回ターゲットとするユーザーからすれば、電話本体そのものの通話品質の微妙な差なんて気にならない。そこをどんなにプッシュしたところでユーザーの心には響かないわけです。ここに伝えたい側と受け取る側のミスマッチがあります。

最終的に商品を売ることが目的の広告は、作る側のメッセージが「言いたいこと」に偏りがちです。しかし、その「言いたいこと」は、必ずしもユーザーが「知りたいこと」とは限らない。知りたくない情報はまずもって見られませんので、人にシェアする機会は到底得られません。

では、この場合どうするか。女子高生の生活を考えたとき、友達といわゆる「自撮り」をする機会は多い。
スマホは高機能化への一途をたどっていますが、かわいく写りたい乙女ゴコロを考えると○○万画素なんて関係なくて、キレイに写ればそれでいいはず。

周りにリサーチしてみると、その意見に賛同してくれる声もちらほら。試しにいろんな人を自撮りしてもらったところ、画質がよすぎないことが功を奏して(?)、いい感じに撮れることもわかった。しかも、画質にこだわれなかった代わりに、レンズだけは通常より広く写る広角レンズにしていたこともあり、友だち数人と「自撮り」しても全員入るというオマケ付き。
そこで「カワイク自撮りができるスマホ」としてタイアップ広告を作成したところ、スマホのカメラに対して潜在的に不満を持っていた女子高生たちの間で拡散。その勢いは女子大生などの他の世代にも波及し、想定以上の大ヒットに……とまあ、現実にここまで都合よくコトが運ぶかはわかりません。ただ、この例でお伝えしたかったのは、「言いたいこと」から発想すると、受け手に響くものになりにくいということ。受け手目線で「知りたいこと」を見つめる姿勢でないと、ウケる広告なんて作れないと思います。

その広告は受け手にメリットを提供できているか

人はなぜシェアするのか。人は無関心なものに言及する気にはなれません。誰かに教えたかったり、自慢したかったり、あるいは否定したかったり、理由はどうあれ、心を揺さぶられないと始まらない。そして、心を揺さぶるためには受け手の心を徹底的に想像することが重要です。

よく言われることですが、広告なんて誰も求めていません。別に知らなくても済むことを「わざわざ見てもらう」わけですから、商材やサービスのどこにメリットを感じてもらえるのかを、受け手の立場で真摯に想像すること。それができなければ、受け手にはもちろん、その広告にお金を払っているクライアントにも失礼です。ターゲットにとっての商品メリットを見つけてあげることも、作り手の役割。NAVERまとめは、そんなことを考えながら、日々タイアップ広告を制作しています。

桜川和樹「100万人のメディアを潰した男、キュレーションを語る。」バックナンバー