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コラム

100万人のメディアを潰した男、キュレーションを語る。

「情報の受け手」はテクノロジーに夢を見るか?

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もはや消費しきれない情報

NAVERまとめに「キュレーション」という言葉を冠したのは、サービスが始まって1年ほどたった2010年のこと。当時はまだ耳慣れない言葉でしたが、それから2年で続々とキュレーション系のサービスが生まれ、ここ最近のネットトピックのひとつとして注目されるまでになりました。

何故、いま、ここまでキュレーションが注目されるのか。それはテクノロジーが情報発信に傾倒しすぎ、情報の受け手のことを考えずに突き進んだことへの揺り戻しだと考えています。

ネットが誕生し、誰もが簡単に情報を発信できるようになったため、世の中に流通する情報量は年々増加し続けています。総務省平成23年「情報流通インデックス」によると、平成21年度に流通した情報量は1日あたりDVDにして2.9億枚相当。それに対して、人が消費した情報量はDVD1.1万枚ですから、流通と消費の間には2万6000倍もの乖離が起きていることになります。日々、僕らが目にしているのは、全体からするとほんの一握りに過ぎず、ほとんどの情報が届かないまま埋もれているということです。

情報の受け手に冷たい時代

「情弱」という言葉があります。情報弱者の略で、本来は情報へアクセスするためのデバイスやインフラなど、環境面で不利な状況に置かれている人を指す言葉です。ただ最近では、環境はあるのにうまく活用できず、情報に疎くなっている人を揶揄する言葉として、ネットでよく使われるようになりました。

最近はそれほど、見かけなくなりましたが、同じような言葉として「ググレカス」というのもあります。ネットの掲示板やQ&Aサイトなどで、少し調べればわかるような質問をすると、Googleで調べてから来い、というニュアンスで罵倒するときに使う言葉です。ローマ字の母音を略して「ggrks」という、元を知らないとわからない独自の進化まで見られました。

なんて情報の受け手に冷たい時代なんだろう、と思います。まだまだネットは発展途上でリテラシーも、まちまち。検索もうまくワードが見つからなければ目当ての情報にたどり着けませんし、ワードが見つかったとしても、SEO的に上位に上がった情報しか触れることはできません。また、このコラムの第2回で触れましたが、「接待にぴったり」「能率が上がる」などの、ニュアンスに頼る情報は、リテラシーの高い人でも探すのは難しい。これだけ情報が増えても、その情報へのアクセス手段はかなり限定されているというのが実情です。

情報と関心の多様化

ネット誕生以前、人はある程度「共通の文脈」というものを持っていました。特にテレビは人と人を文脈でつなぐ役割を果たしていたと思います。学校では昨日見たテレビの話で持ちきりになり、見てないと話題に置いていかれるから見る、という本末転倒なこともあったりしたものです。

しかし、今や「共通の文脈」は崩壊しています。TwitterやFacebookなどのSNSでは、それぞれが別のタイムラインから情報を得ていますし、情報選択の幅が増えた分、人々の関心も多様化しました。

そうして共通文脈が失われたからこそ、情報の格差が生まれることになる。人は詳しいこと以外では、みんな素人です。だからこそ誰か詳しい人に教えて欲しいのに、「調べればわかること」を聞くと「ググレカス」と言われてしまう。その「調べ方がわからない」人はどうすることもできないのに。つくづく悲しい時代です。

テクノロジーは情報発信から情報受信へ?

ネット初期の「ホームページ」に始まり、ブログ、SNSと、情報発信のテクノロジーはずいぶんと進化を遂げてきました。ただ、情報受信においては、ほとんどと言っていいほど進化していない。キュレーションがその役割を果たすのかどうかは正直わかりませんが、検索以降で初めて情報受信に光を当てた概念であることは事実。近年の盛り上がりからも、次の情報アクセス手法として期待が集まっていることがわかります。

では、テクノロジーが情報受信へとシフトする(かもしれない)時代において、情報の媒介者である「メディア」はどう変化していくのか。次回からは、そのことについて触れていきます。

桜川和樹「100万人のメディアを潰した男、キュレーションを語る。」バックナンバー