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コラム

あの商品、このサービスがヒットするワケ

「顧客視点に脱皮した化粧品売り場:イセタン ミラー」

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三越伊勢丹が本来競合となる駅ビル内に化粧品専門店を出店している。それが「イセタン ミラー」だ。出店しているのは、東京・新宿のルミネ新宿2である。約160平方メートルと小型の店舗内にはランコム、エスティローダーなど約20のブランドがそろっている。何より注目なのは、スタッフが「イセタン ミラー」専属となっており、来店客はアドバイスを聞きながらいろいろなブランドを試すことができるのである。通常、百貨店の化粧品売り場はメーカー毎に区切られたブース構成なので、そのメーカー専属の美容部員によるオススメと試用となり、ほかのブランドを試すことはできない。敷居も高く、買い回りがでないことに不便を感じる人も多い。「イセタン ミラー」は、そんな顧客のニーズギャップを一気に解消するのである。

一般的に、マーケティングで最も認知度のある概念は「4P」だろう。Product(製品)、 Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)。エドモンド・ジェローム・マッカーシーが1960年に提唱した。しかし、それは「売り手視点の発想ではないか」という考えの元に、1993年にロバート・ローターボ-ンによって「4C」が提唱された。4Pの各Pを、顧客ソリューション(Customer Solution)、Customer Cost(顧客コスト)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)と、4つのCに置き換えたのである。

「イセタン ミラー」はProduct(製品)中心に考えるのではなく、ブランドごとに分かれていてそれぞれを試すのが面倒という百貨店特有のハードルの高さを解決する手法として、ブランドの垣根を壊した。それによって、Customer Solution(顧客ソリューション=問題解決)を実現したのだ。また、機会費用という観点に立てば、顧客の時間効率を最大化することによって、Customer Costを低減することを提供している。そのために、ブランドのブースという概念をなくしてConvenienceを高めたのである。そうして、イセタン ミラーでは、「ブランドが発信するイメージなどの広告・プロモーション」ではなく、「百貨店社員による、各ブランドを横断して顧客に合った商品を提供するためのコンサルティングやアドバイス」が購入のカギとなっているのである。

日本の人口動態はもはや一層の少子高齢化を避けることはできない段階に来ている。その中で各社・各業態の模索が続いているが、「顧客視点への変革」が最重要キーワードであることは間違いない。

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