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コラム

原田朋のCHIAT\DAY滞在記 ~リー・クロウの下で365日~

世界を変えるのは「二人組」であるという考え方。

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なぜ、二人組なのか。

仕事をしてれば、当然、ポジティブムードのときも、ネガティブムードのときもある。だいたい、課題はいつも難しく、ネガティブな状況の方が多い。もしも簡単な仕事なら、わざわざ広告会社やクリエイターに頼まないだろう。そんなデフォルト・ネガティブ状態に、ひとりで集中して立ち向うことは必要だけど、目上のクリエイティブディレクターに見せる前に、対等な立場のコピーライターとアートディレクターがいいね、よくないね、それこうしたら? とアイデアをつめていくプロセスからは、とてもポジティブなスパイラルが生まれると思うのだ。ひとりって、つらいじゃないですか? まして、人間と人間の1+1は、3にも4にも10にもなるケミストリー。下からはいあがり、注目される舞台におどりでて、世界の広告を変えるような仕事を生みだすには、一人よりも二人組でやったほうが確率高いんじゃない?と僕には思えてきた。

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僕たちも1カ月を経て4つの案件に参加中。大変になってきました。

さらに、クリエイティブディレクターの立場になれば、なおさら責任は重いし、大変なことも多いし、そして何よりチャンスがでかい。その時こそ二人組で、コピーの視点とアートの視点の両方、あるいは、まとめ上手とひろげ上手の二人の手練の力で、チームを率いて行くのは、予想外にうまく行くのではないだろうか。そして、これはコピー&アートに限らず、また広告クリエイティブに限らず、職種や専門のちがう二人がタッグで仕事に取り組むスタイルには可能性があるように思う。

思えば、僕が愛するロックの歴史も、レノン&マッカートニー、ミックとキースにはじまり、世界を変えた二人組であふれている。二人には、一人には起こせないミラクルを起こすことができる。ローリングストーンズは、あふれ出るミックのアイデアを、キースが制御してまとめあげていったバンドだと読んだことがある。タイプの違う二人から生まれるケミストリーを、ロサンゼルスで僕は信じ始めた。それはきっと、一人で戦うほど強くない僕たちに許された、最高の手段なのだ。

カナダの二人組から。

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ジョナサン(右)とロジャー(左)と僕。SWATにて。

前回コラムに登場した、カナダの発散型ジョナサンと集束型ロジャーから、ブログの文章が送られてきた。いっしょに戦った経験を、お互いブログに書こう!と、約束したらなんと2日後に送られてきた。仕事が速くて、本当にいいヤツらだなあ。そう思いながら読みはじめると、赤面するほど僕らのことを良く書いてある。うれしいな。でもちょっとサービスしてくれたんじゃないかな。

2013年4月、ロサンゼルスSWATにて。
僕たちTBWA Torontoのチームにとって、新しいキャンペーンのために世界中から集まったクリエイターと仕事をしたことは、とても特別で、信じられないくらい学びのつまった体験だった。フランク・ゲーリーがデザインした、ベニスビーチのグーグルオフィスで――以前のTBWA\CHIAT\DAYのオフィスで――それは始まった。フランク・ゲーリーはカナダ生まれの建築家で、トロントのオフィスのインテリアもデザインしている。

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グーグルLAオフィス(旧CHIAT)の玄関。アーティスティック。

まずグーグルのチームが、僕たちに、未来のトレンドとテクノロジーについてのインサイトを与えてくれた。それは半年後や1年後の世界を想像させてくれただけでなく、この時代にあった新しいキャンペーンのあり方を考えるのに役立つものだった。そこから3日間、僕たちがSWATと呼んでいるブレインストーミングに集中することになった。

チーム分けで、僕たちは光栄にも、TBWA\HAKUHODOチームの、トモとノゾミと組むことになった。彼らのアイデアは、フレッシュで感服せずにはいられないものだった。トモにいたっては見事な英語でアイデアを書き表したのだ。カナダと日本が合体した僕たちのチームは、止まることがなく、3日間のブレインストーミングが終わるまでに、たくさんのアイデアを発表し、その上たくさんのアイデアをボードの上に残した(採用になった)。証明されたのは、やはり、たくさんアイデアを考えるほどに、よいコンセプトを発見できるということだ。

今回いっしょにやりながら、僕たちは、日本とカナダに相当な違いがあることを発見した。カナダの広告会社は日本の広告会社に比べてはるかに小さくて、僕らのチームは多種多様なブランドを担当していること。またカナダ人の勤務時間は日本に比べると短くて、アメリカ人でさえ僕らより長いこと。オリエンをもらったら、まず他の仕事をやっている間や家にいる間に「濾過(ろか)」しておいて、クライアントのプレゼンが近づいてから、すごいアイデアをひねりだす…それが僕たちのやり方なのだが。

TBWA\HAKUHODOのチームが仕事をしているところを見ていると、カナダ人は質でも量でも学ぶことがあることは明らかだった。日本チームがすごかったのは、英語という彼らにとっての第二言語を使って僕らとちゃんとコミュニケーションがとれていたこと。それは、いいアイデアには国境なんかなく、言語でさえ関係ないことの証明だった。文化の違いは、SWATをとても刺激的なものにする。

そう、はじめに言った通り、SWATは、信じられないくらいの学びのつまった体験なのだ。

ジョナサン・スミス & ロジャー・アイル
Associate Creative Directors
TBWA\TORONTO