アルゼンチンから来たCDは、ジブリの大ファンだった。
「ジブリアニメの中で何が好き?」ティトがビールを片手に聞いてきた。「キャッスル・イン・ザ・スカイ、ラピュタ」と僕は答えた。超大変だったプレゼン作業のお疲れさま会ということで、チームのみんな(コピーライター+アートディレクターの2人組が、僕らを含めて6組も投入された大変な仕事だった)にCDのティトがおごってくれた日。
僕らは夕方まだ明るいうちから、メキシコ料理屋のオープンテラスの席に陣取って、タコスをつまみながら飲んでいた。ティトはアルゼンチン出身のCDで、英語ネイティブではないが、クライアントの南北アメリカのクリエイティブを統括している。とても情熱的で、大きなアカウントを背負っていて超いそがしいのに、どんな小さな案件でもちゃんとディレクションをくれる。夜遅くてもメールの返信がくるし、平均的なアメリカのクリエイターに比べるとめちゃくちゃ働いていると思う。CDは、こちらでも激務なのだ。そして英語が不得意で飲みの席の会話に参加できてない僕に、日本の話題をふってくれる、優しい人でもある。彼自身がアルゼンチン出身の体験があるからかもしれない。
「へえ。キャッスル・イン・ザ・スカイはまだ見てないよ。僕はキキズ・デリバリー・サービス(魔女の宅急便)だ」「えっ!絶対見るべきだよ。ひょっとしてバリー・オブ・ザ・ウインド、ナウシカも見てないんじゃない?」「見てない。よし、きょうの帰りにソーテル通りのDVDショップで買って帰るよ!」こっちの人にとって初期の作品はあまりメジャーじゃないのかも。
で、後日またオフィスで話しかけてきてくれて「バリー・オブ・ザ・ウインドでいちばん美しいのは、グライダーのシーンだ。そう思わないか?」と聞いてきた。「あれは美しいよね。僕は、キャッスル・イン・ザ・スカイのフライング・ストーンのブルーが好きだよ」と僕は答えた。僕たちは、ロサンゼルスで、アルゼンチンと日本から来て、英語で日本のアニメを語り合っている。この素敵な文化と文化の出会いとミックスを、グローバルという一言なんかでまとめてほしくない。
「原田朋のCHIAT\DAY滞在記 ~リー・クロウの下で365日~」バックナンバー
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