船長リー・クロウは、でかかった。
「おれたちの仕事はこれからも変わらない。すごいことを考えることだ。でかいことを考えることなんだ。」adidasとだけ書かれた白いTシャツに、短パンに、ビーチサンダル。背は180cm以上ある。CHIAT DAYの海賊たちを前にして、白いあご髭をたくわえた口もとから飛ばされる檄は力強く、そしてなぜか温かさを感じるものだった。今日は、この海賊船の船長であるリー・クロウが、今年のカンヌでLion of St.Mark (殿堂入りとか、功労者賞的な賞)をもらったお祝いの会である。昼休み、CHIATオフィスの中央にあるバスケットコートにオフィスのほぼ全員が集合。リーがライオンのトロフィーを持ちながら話す姿を、みんなニコニコしながら見つめている。熱気というか、温かいオーラのようなものが、リーから波紋のように伝わって行く感じがする。スピーチが終わり、拍手でリーをつつんだ後は、ハンバーガーやビールの屋台も出て、ランチタイム・パーティになった。いろんな人がリーに話しかける中、僕は勇気を出し、スキをついて「写真とってもいいですか」と言ってみた。「もちろん!撮ろうぜ。」運よく、そばに僕と仲良しのラファエルがいたので、シャッターを押してもらった。やった。と思ったら…ブレてるじゃん、ラファエル!(笑) まあいいや。僕の肩を抱いてくれたリーの腕は、でかくて、やっぱり温かかった。リーのスピーチも、時おりTBWAネットワークのクリエイターに配信される言葉にも、必ずガラの悪い言葉が混じっている。F◯◯Kとか、DAMNとか。でもその会社っぽくない言葉遣いが、人としての温かみを感じさせる。そして、たとえCHIATであっても、この時代、仕事をとりまく環境が複雑なのは世界中の広告会社と同じだ。苦戦しながら日々アイデアを生みだしている海賊たちにとって「俺たちの戻る場所はいつでも、でっかいアイデアを考えることだ」は、当り前のようで、心にじーんと響く言葉だったと思う。
リー・クロウ船長の言葉に、CHIATの海賊たちは静かに耳を傾けた。
「原田朋のCHIAT\DAY滞在記 ~リー・クロウの下で365日~」バックナンバー
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