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参院選2013 ネット選挙の戦い方 ~「選挙不参加は、300万円の権利をドブに捨てること」小倉淳編(1)

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ネット選挙で若者の投票率は上がるのか

小川:ネット選挙解禁によって若い人たちの投票率が上がることに期待を寄せられていますが、実際にはどうでしょう。

小倉:これまでのように、選挙カーや選挙ポスター、一部テレビCMによる告知活動だけをやっていた時に比べれば、SNSをはじめとしたネットを使うことで、若い人たちが選挙情報に触れる機会は明らかに広がるでしょう。でも、そのことと投票行動につながるかは別問題。もっと必要なのは、「君たちが何か行動しなければ、世の中は変わらないんだ」という教育なのではないでしょうか。

小川:ネットのユーザーリテラシー向上や技術進化などは目覚ましい一方で、若い人の政治への関心は低下したままです。そのため、ネット上で選挙運動がなされたとしても票には結びつき難いという見方は多い。若い人の投票率を上げるには、どうしたらよいと思いますか。

小倉:「なぜ、選挙があるのか」「なぜ衆議院と参議院があるのか」、そういう政治の基本的なことを知らない学生があまりにも多い。彼らに就職について聞くと、「とりあえずコンビニで働いて、好きなゲームをする。そのうちやる気が出たら何かやる」と平気で話す学生が3割くらいはいます。政治はおろか、世の中を諦めてしまっている。

そのように思うのは、成功体験がないからではないでしょうか。残念ながら、部活や勉強などで成功体験を得られるのはごく一部の学生だけです。そうではない学生たちは、なかなか夢を持つ、頑張るというマインドになれないのではと思います。

私が「選挙に出るから手伝えよ、面白いよ」と話しても、「何かいいことあるんですか」とかなりやる気がありません。米韓でネット選挙解禁によって若者の投票率が上がったと言われますが、そもそも彼らには政治に関する何らかのポリシーや考えがあるからなのでしょう。たとえば韓国は兵役があるから国の施策に関心を持つかもしれないし、米国ではもともと国内外の情勢に関心が高いのかもしれません。ところが日本の場合、親も政治に興味がありません。

ネット投票ができる、というくらい便利にならなければ、投票率は変わらないのではないかと思っています。

小川:そうですね。今回からネット投票ができるようになったといまだに勘違いしている人も少なくない。現状の投票ハガキも、DMだと勘違いして開封すらしないという学生の話を聞いたことがあります。本当は、自分たちの貴重な参政権なのに、その自覚も薄い。ネット投票は、その権利行使をしやすくし、投票率の改善に寄与する可能性がある。

小倉:衆院選の1票は約300万円の価値がある(4年間の国家予算÷有権者数)とも言われます。その権利をドブに捨てている。投票時間の延長などの工夫はされていますが、コンビニや郵便局でも投票できるというくらいの施策が必要かもしれません。お金を引き出すついでに、炭酸を買いに行くついでに投票できるってよくないですか。

小川:投票方法をネット化することは、若い世代にとって政治参加の大きなきっかけになりそうですね。でも、次のハードルは誰に投票していいいか分からないということではないでしょうか。

小倉:誰かを選ぶためには、その政策を聞かなければなりませんが、学生の街頭演説に対するイメージは3つしかありません。それは、「うるさい」、「うざい」、「誰?」。

政治家や候補者が話すところを目の当たりにする機会のある学生はほとんどいません。SNSなどネットの中で「誰かがどこかでしゃべっていた」という程度の情報には触れられるかもしれませんが。

小川:段階的ではあるしょうけれど、今後も政治や選挙に関する情報への接触機会を増やす施策は可能だと思います。それにしても、企業の商品やサービスの情報のほとんどはネットで得られる時代なのに、選挙はやっとというか、むしろ“今さら感”すらありますね。

小倉:この世界に飛び込んでみて、残念ながらその体制が整っていないことを実感しますね。ホワイトハウスの中はネット通信は速そうですが、日本ではPCで文字を打ちながら、ネットを見ながら国会に参加している議員がいない。企業のオフィスでは考えられません。とても特殊な環境です。

小川:資料もとにかく紙だらけという感じで、エコの観点でもデジタル化は必須だと思うのですが。

小倉:立候補に関する手続き書類などを「ファックスで送ってください」と言われて「家にない」と言ったら、「なぜですか?」と聞かれたんです。「普段はメールを使いますから」と言ったのですが……。ネット環境において、政治の世界がかなり後れをとっていることは明らかです。

小川:選挙運動に限らず、その辺りも“デジタル化”が必要ですよね。まだまだアンチデジタル派も少なくない印象です。


【「参院選2013 ネット選挙の戦い方」】