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コラム

CSR視点で広報を考える

アベノミクスの功罪、株主による経営監視は弱体化の様相

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今から5年前、「内部統制」という言葉が活況していた頃、株主総会の質問動向は、1位:クレーム・事件・事故関連質問、2位:リストラ・人事・労務関連質問、3位:内部統制状況・リスク管理体制関連質問だった。株主の多くが、全社的なリスクの抽出のプロセス過程や重大なリスクの対応状況について質問した。

2009年3月期の最初の内部統制報告書に「重要な欠陥がある」と記載された上場企業には、「決算・財務プロセス」に問題ありとされた企業が多く、会計処理の修正や内部統制評価における不備検出あるいは不正の摘出が指摘されたものも多かった。総会では、そのような状況に厳しい声が集中したときもあったが、今ではほとんど聞かない。

一方、実際に不正会計に端を発した事件が相次ぐ中、しばらくなりをひそめていた株主代表訴訟件数は、2006年を境に、ここ数年急激に増加の傾向を示してきている。(グラフ1参照)

しかしながら、これらの訴訟件数の増加は、結果として社内の内部告発や外部の指摘によって顕在化した不祥事に基づく事後的な株主による法的措置であって、事前的な株主による牽制機能が功を奏したものではない。

アベノミクスは確かに企業を元気にさせているが、株主も同時に目先の利益に向けさせられている傾向が高い。このようなときこそ株主は経営の監視を強め、経営者の手綱を引き締める役割をしっかりと持つことを忘れてはならない。

残念ながら、結果として不祥事が明らかとなり、会社訴訟や株主代表訴訟が提起されれば株価は半減し、そのつけは株主そのものに返ってくる。適切なコーポレートガバナンスが働くためには、本来の株主の役割が果たされることが重要であり、企業不祥事の防止にも有効となる。

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